第10話 エリスの部屋で
その日の夜--エリスの部屋--
夕食を終え、それぞれが就寝の支度を始める時。
私、エリスも就寝準備をしていた。
ふと、テーブルの上の婚姻届が視界に入る。
まだ印は押していないが、明日役場に提出する物だ。
明日、入籍しなきゃ……あいつと……
嫌な事を思い出し、気分が沈む。
そんな時。
コンコン、と部屋がノックされた。
時計を見ると午後10時、少々遅い時間だ。
こんな時間に誰だ?と思いながらドアを開ける。
「はーい」
ドアノブを捻ると、そこに居たのは--
「よう、エリス」
「ひ、ヒロト⁉︎どうしてこんな時間に⁉︎」
「詳しい説明は中でさせてくれ、時間が無い」
==============================
エイミーと共にエリスの部屋を訪れた。
エリスが目を白黒、いや白青させている。まぁ、こんな時間に突然の訪問だから無理も無い。
「いいか、いまからこのザックに必要な物を詰めるんだ。20分で用意してくれ」
「え?え?何があったんだ?」
「実はな……」
今起こっている事を全て話した。
ケインが夜這いをかけてエリスと既成事実を作ろうとしている事。
ケインやエリスの両親の目的。
エイミーが手助けしてくれる事。
全てだ。
ちなみに俺の部屋でエイミーがケインがエリスにしようとしている事の話を聞いた時、硬く拳を握りしめ、怒りで震えていた。
「そんな……ケインがそんな事を考えていたなんて……」
「と、いう訳だ。時間が無い、早めに頼む」
「わ、わかった……」
エリスが部屋にある必要な物を詰め始める。
エイミーは装填済みのMINIMIを抱え、ドアを睨みつけていた。
エイミーには既に俺の部屋で使い方を教えている。
リロードもジャムクリアも、完璧とは言えないがそれなりに出来る様にはなっている。
俺は自分の武器を出す。
ザックから取り出したのはサブマシンガン--ドイツ、H&K社製のMP5SD6だ。
銃口にはサウンド・サプレッサーが標準装備され、側面にフラッシュライトを、機関部上部にレールを取り付け、オープンタイプのダットサイトをマウントしている。
ザックからは更にALICEクリップを取り出し、身につけてマガジンポーチに9×19mmパラベラム弾が詰まったマガジンを放り込む。
「あっ、エリス、婚姻届貸してくれ」
「?あ、あぁ」
エリスは婚姻届を俺に手渡す。
俺は渡された婚姻届をビリビリに破いてゴミ箱へ突っ込んだ。
エリスも俺も、イタズラが成功した子供の様に笑っていた。