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やっとリリスちゃんの影が!


後半、陛下壊れます。スミマセン。



 カールソン家を離れてもう7年。その間、忙しさにかまけてリリーを放置していた訳ではない。ずっと会いたかった。だが王となれば、自ずと妃問題が持ち上がる。私がリリス一筋なのは有名な話であったが、他国の男爵令嬢など認められぬとばかりに、成人した途端、側妃を娶れと山のように釣書が届いた。私が迂闊なことをすれば、リリーの身に危険が及んでしまう。幸いリリーはまだ幼い。王太后の協力を得て、私は慎重に事を進めることにした。



 国際情勢は安定していたので、他国の王女を娶る必要はない。その代わり側妃は4人選んだ。2人は本気で王妃の座を狙っている家から。残りの2人は協力者で、妃の立場など望まぬ者。後者はリリーが王妃となるまで側妃を務める代わりに、家への援助や家人を要職に取り立てること、夜伽をせぬまま本人が望む相手に下賜すること等を約束した。前者はバランスを取るためだ。定期的に抱かねばならぬのは面倒だが、仕方ない。避妊はさせてもらうがな。


 側妃の問題が片付いたところで、秘密裏に将来リリーと養子縁組させる家を選ぶ。この国の王妃になるには強固な後盾が必要だ。王太后が後見してくれる予定だが、それでも他国の男爵家の身分では厳しい。せめて我が国の伯爵以上の身分を用意してやりたい。厳選の結果、近衛軍大将のラシッド侯爵に決まった。彼の父は前王の側近であったが、流行病で亡くなった。また、彼の妹は兄の側妃で恋人でもあった。流行病の際、命は取り留めたが、生涯兄に仕えたいと修道院に入ったのだ。かの家ならばと王太后よりお墨付きを戴くほどの家だ。安心してリリーを任せられる。



 そんな風に、来る日の為、着実に準備を進めてはいた。しかし2ヶ月前、王妃の座を狙っていた側妃の一人が後宮を出るのと同時に、カールソン男爵家に賊が入った。サーガスの姉にリリーの警護をお願いしていたゆえ、被害と呼べるようなものはなかったそうだが、肝が冷えた。後宮に残った方の側妃の実家であるホイング侯爵家が、協力者の家にもちょっかいを出し始めたと報せを受けたところだったのだ。


 ダメだ、もう我慢出来ない。無理を通してでも手元で守りたい。年齢的に側妃が無理なら愛人にすれば良い。偽装とはいえリリーを他人の嫁にするのは気に食わないが、このまま危険にさらし続けるよりはマシだ。手筈を整えつつ、カールソン男爵に手紙を出した。


 ……男爵め、断りやがった。宜しい、ならば無理にでも連れて来るまでだ。

 政もようやく落ち着いてきたことだしと、思い切って私は彼女を迎えに行くことにした。




****



 王城でリリーの訪れを待つ。胸がはち切れそうだ。落ち着いて座ってなどいられない。何度も鏡を見て身だしなみをチェックし、部屋の中をウロつく。周りから『不審者……』『変質者……』などという言葉が聞こえたが、気にしない。だが国に帰ったら覚えておけよ。


 そして、やっと女官がリリーの訪れを告げた。



 どうしよう、天使がいる。天使が肩揉んでる。『ぅんっしょ、よいしょっ』って、もう堪らないんですケド。別れた時には簡単な単語しか話せなかったのに『お兄さん、首筋張ってますねぇ。お疲れですか〜?』とかサービストークしてるし。赤子の頃はミルクの甘い匂いがしていたのに、今は近付く度にお花の甘い香りが!


 くっ、涙を流せばいいのか、それとも鼻血?鼻血を出せばいいのか……!?

 もうウチの嫁、超可愛い。相変わらず髪はクルクルしてるし、翠の瞳は人懐っこそうだし、肌は透けるように白いし、あの口紅など必要なさそうな赤い唇は昔のままだし、ダメだ、こんな子置いていったら絶対拐かされる。此の期に及んでもまだ男爵は渋っているが、何があっても連れて帰ろう。そして、これからは毎日マッサージしてもらうのだ。



 というわけで翌日には正式な使者を出し、2週間後リリーを連れて帰国の途についた。


 馬車の中で向かい合うか、隣に座るか、それとも膝に乗せるかで悩んだが、女官から『先ずは向かい合うところから』と懇願され、20日間の旅の間に少しずつ距離を縮めることにした。道中、これからの事を聞かれたのだが、どうやら父親からは、56歳の子爵に後妻として嫁ぐとしか聞いていなかったらしい。男爵め。そんなに私に嫁がせるのがイヤか。せめて私がニストラス国の王であることくらい話しておいてくれ。道理でずっとお兄さん呼びだったはずだ。いや、それはそれで、まぁ、うん。


 改めて真実を説明したが、彼女はさして動揺する事もなく受け入れてくれた。私の愛人になることに抵抗はないようだ。ただ、やけに冷静な目で幼児性愛者なのかと聞かれたのは心に刺さったが……モチロン胸を張って否定しておいた。私は彼女が43歳の時だって心から愛していたのだから。ただあの頃と違って、今は子供の彼女も愛せることに少しだけ舞い上がっているだけなんだ。あの頃も彼女の全てが欲しかった。過去も未来も私だけのモノにしたかった、だから今度こそ……


 因みに、旅に出た初日に愛人となる承諾を得た為、翌日からは迷う事無く膝に乗せた。




ちょこっと補足:陛下は前世の夢を見てからも、身も心も現世の人です。前世の知識で内政チートとかありません。精神年齢が、即位や家族の死を受け入れられる程度に上がったくらいです。


よって、王族として育ち、家族仲は良いものの毎日顔をあわせる様な生活をした事が無い彼には、8歳児を親元から離す事について慮る能力はありません。もともと親離れの早い世界ですし、寂しがるだろうとは思っても、自分が慰めればいい、程度の認識です。というかリリスちゃんに関しては、いつだって暴走中です。


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