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 さて、お茶とお菓子でお腹一杯なので少々身体を動かしましょうか。

 ソファーじゃなんですので、寝室に移動しましょうかね。


「…くっ。ああ…イイよ…リリー。ソコ、そのまま…そう続けて……ぅん、キモチイイ…」

「あの、エロい声で指示出すの止めてもらえません?居た堪れないんですけど」


 いや別に、コレは話の流れに乗ってオトナの階段を登っているわけではない。何時間も座りっぱなしの事務作業が辛いという陛下のために、腰を揉んであげているだけなのだ。


 陛下が毎日離れを訪れ、私と夕食を共にするのは、言わば会社帰りのお父さんが整体院に通うようなもの。健全この上ない。が、黙って揉まれていれば良いものを、毎回ワザとエロい声をだすのだ。日々周りからのロリコン扱いが酷くなる一方だと云うのに辞める気はないらしい。あの揉まれてる感が堪らないんだとか。知らんがな。


「リラックスして思う存分よがった方が、我慢するより効き目が出るだろう?大事なコトだよ」

「何故かしら、ちっとも良いコト言ってるように聞こえないの」


 半眼で睨んであげれば、陛下も流石にこれ以上はまずいと思ったのか話を逸らすように視線を窓辺に向ける。


「おや、誰か来たようだね」

「 誤魔化したってダメですよ…ってホントに外騒がしいですね」


寝台から降りて声が聞こえるように少しだけ窓を開ければ、先程より冷たくなった風と共に甲高い声が部屋の中に届く。


「サ…ラ様が命じているのです!いい加減そこを退きなさい!」

「…ッ……!中に入れなさい!女官の分際で!」


 ああ、またか。エミーと護衛達がいつもの如く侵入者を玄関先で止めてくれているのだろう。


「侯爵の私が挨拶に来てやってるんだ。子爵夫人如きが私との面会を断れる筈がなかろう!」


 ブー、不正確。愛人は陛下のモノなので愛人として王宮にいる以上、陛下の許可なく面会は不可。そんなコトも知らないの、侯爵様?


「ああ、ホイング侯爵の声だな。というコトは女の方は第二側妃とその侍女か」


 実家がお金持ちの側妃は侍女を連れて来るのが普通らしい。凄いねぇ、侍女だって。勿論、私にそんなものは居ない。男爵家に侍女なんて居るはずもないし、かといって一週間しか滞在していない子爵家に用意させるのも気がひける。身一つでと言われたことだし、と、ホントに身一つで来たわけですよ。


「お会いになります?」

「必要無いな」


 ですよね〜。毎度申し訳ないがエミーにお任せしよう。彼女は断りとはぐらかしのプロだ。側妃様は兎も角、侯爵相手では面倒だろうが、彼女ならなんとかしてしまうだろう。


 尤も、なんとか出来なくてもしなくてはならないのだが。

 守れと言われた場所を守りきらねば、通してしまったエミー達にもお咎めがある。更に今は陛下もいらっしゃるのだ。命を懸けてでも彼等を追い払うしかない。


「今は陛下がいらっしゃるのだろう?陛下がおられるならば我が娘を通さぬはずはない。早く取り次いでこぬか!」


 馬鹿だなぁ、カマかけたつもりだろうがエミーが引っ掛かるわけがない。陛下の側に仕える者相手なら兎も角、それ以外の人間に陛下の居場所をバラすような阿呆、王宮の奥に勤める資格など無い。よって、侯爵一行は早々に諦めたほうが良いと思うのだが、中々しぶといねぇ。まだ騒いでるよ。お約束な人達だなぁ。


「愚かなこと。王宮であの振る舞いは己の首を締めるだけでしょうに。人様のお宅では大人しくしなくてはならないことくらい、スラムの子達だって知ってるのよ」

「スラムの子供達より知恵が無いのだから仕方あるまい」


 あらまあ辛辣。


「見目だけは親娘揃って良いのだけれどね」

「陛下の好み?」

「美しいからといって心惹かれるとは限らないだろう?リリーだって花は嫌いじゃないか」

「花が嫌いなのではありません。ただ切り花を飾るのが嫌いなだけです。年頃の娘の生首を飾ってるみたいで気持ち悪いの」


 感性とは人それぞれだねぇと笑う陛下に、もう一押ししてみる。


「では、どんな女性がお好き?」

「知ってるくせに。さぁ、もう窓を閉めてこちらにおいで。身体が冷えてしまっただろう。暖めてあげる」


 然程寒くなっているわけではないが、素直に広げられた腕の中に向かえば、サッと身体をすくい上げられ寝台の上に倒されてしまう。まぁ10歳女児の身体ですからね。鍛えられた成人男性には敵いません。


「もう添い寝される年ではありませんよ?」

「じゃあ同衾「それは許されてない年です」」

「純潔は汚さな「陛下?」」

「むぅ、厳しいねぇ。ところでリリー?二人きりの時はどう呼ぶんだったっけ?」

「……ヴィー」


 私だけに許された名を呼べば、キツく尖った顔つきが途端に蕩けんばかりの柔らかさになる。

 ああ、堪らない。泥々に溶かして今よりもっと執着させて、そしてその首元に齧り付きたい。


 考える間もなく隣国に嫁ぎ、愛人なんて立場を与えられ、流されるままにここにいるけれど。こんな日常も幸せだと感じている。だって寂しくないもの。前世の記憶が戻って一番辛かったのは寂寥感。訳もなく寂しくて、いつも家族の誰かにくっついていた。それでも埋まらなかった穴はキレーなお兄さんが塞いでくれたから。


 目を合わせたまま軽く唇を重ねれば、ヴィーも目を閉じずにキスを返してくれる。

 楽しそうな揶揄うようなあの瞳。どこかで見た気がするのだけれど……






リリスちゃんはここまで。

次からは陛下目線かな

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