表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/19

休日の過ごし方 3

なんとか間に合った、か?


とりあえず2000字じゃ、終わりまで行きませんでした。

どんだけ長い休日なの!?

「お庭に花が無い分、一層湖の色が美しく見えますねぇ」

「ええ、この離宮は純粋にあの湖を楽しめるように作られているのよ。水の色を見て驚いたでしょう?」

「はい。まさか本当に宝石のようなエメラルドグリーンだとは思いませんでした」


 義母様は到着なさいましたが、1階のサロンに移動して未だ三人でお喋りしておりますよ。既にバーベキューの準備は出来ているようだけれど、流石に馬車から降りて直ぐ食事とはならないのだ。


 上流階級の食事は面倒臭い。特にディナー、前世の日本だと餐の字が付く食事の場合、先ずサロンで食前酒を頂いてから食事の席に案内され、その後再びサロンへ。若しくは男性陣と女性陣で別れて、其々お茶やお酒と共にゲームや会話を楽しむ。兎にも角にも会話で始まり会話で終わる。この会話が出来ないと社交界では爪弾きにされてしまうのですよ。恐ろしいですね。


 バーベキュー如きに昼餐と言われてもと思うのだが、まあ仕方ない。というわけで、未だ肉に辿り着けず、義母様と会話を楽しんで(?)おります。うぅ、義母様はお茶会や会話などのマナーレッスンの先生なのですよ。まさに今、その成果を試されているのです。うぅ。


「もしかして、石灰が採れるのはこの近くなのですか?」


 ニスタルは石灰の産地なんですよ。地理の時間に学びました。


「ええ、そうよ。この離宮も、その石灰で作られた漆喰を使っているの」

「成る程、ですから湖があの様な色になるのですねぇ」


 そう言って義母様から外へと視線を移す。しかし、陛下が『バーベキューにもってこいの場所』と言ったのも頷けるロケーションですな。これまた白いタイル敷きの広〜いポーチに、2階から大きく張り出したバルコニーが丁度良い日陰を作っていて、長時間外にいても疲れないようになっている。これだけ庇があれば、雨の日でもポーチに出れて良いね。霧けぶる湖も美しかろう。


 ポーチの先には、湖に向かう緩やかな斜面が芝の広場となっていて、その中をポーチと同じタイルを使った小径が伸びている。先程は木立で見えなかったけれど、簡易な船着場もあってボートに乗れるみたい。あー、住みたい。よし、住もう。


「ダメだからね」

「喧嘩したらここに来ますから、探さないで下さい」

「そもそも王宮から出さないよ」


 義母様は生暖かいような、酸っぱいような微妙なお顔で私達の会話を聞いていらっしゃる。その憐憫に似た視線が痛いです。


「リリスはこの離宮が気に入ったのかしら?」

「はい。出来ましたら今この瞬間から終の住処にしてし「「ダメです」」」


 お、おぅ。ダブルダメ出し。でも、夢を見るくらい良いじゃありませんか。だって、こんな理想的な……あ、陛下が不機嫌になってきた。


「お食事の支度が整いましてございます」


 エミーさんナイスタイミング。



 さてバーベキューの始まりですよ。と言っても、こちらはいわゆる欧米式。焼肉タイプとは異なります。その場で焼いて食べると言うよりは、既に調理されたものを頂く感じですね。料理人さんも居ますし、尚更です。今度、焼肉タイプを伝えてみようかしらね。いや、王太后陛下のドレスが焼肉臭いとか無理か。


「陛下、イサカ牛が輝いてますよ」

「リリーは本当に牛肉が好きだねぇ」

「成長期なんだから良いのよ。沢山お食べなさい」

「有難うございます。イサカ牛は特別なんです」


 実を言えば、私は5歳まで肉も魚も嫌いだった。しかし、末端とは言え貴族の端くれ、正餐となればコース料理で、当然メインは肉か魚。子供のうちはいいが、大人になって他所にお呼ばれされる様になれば、食べれないなんて言っていられない。而して、大人達による好き嫌い撲滅キャンペーンが行われたのである。でもね、所詮男爵家ですよ。美味しいお肉なんて常に手に入るわけがない。よって、かなり長いこと私の舌と大人達の攻防は続いたのだが、それを終わらせたのが牛肉様なのである。


 ある日父が王城より、大変高級な牛肉を頂いてきた。ニストラス産のイサカ牛。調理人も、これ程の肉に無駄な事はすまいと考えたのだろう。その日のメインディッシュは、我々の目の前で軽く炙って塩胡椒しただけのステーキだった。コレがもう、ホントに素晴らしかった。とろける脂、でもくどくも臭くもなくて、塩胡椒だけの味付けが更に旨味を引き立たせていて……いやぁ、あの一口でお肉に対する嫌悪感が無くなったね。一度お肉というものを受け入れてしまえば、後は簡単。鳥や豚も食べれる様になり、それが好きに変わる頃には魚も平気になった。


 今思えば、アレはきっと陛下が手配したんだろう。成長日誌とか毎月提出させてたらしいし。その存在を知った時は、王宮ごと燃やして消し去ろうかと思ったよ。だって1歳から毎日、おはようからおやすみまで、いや、寝言から寝相まで記録されてるのよ!?その他アレやコレやの恥ずかしい事だってお察しよ!まあ、今この瞬間だってしっかり記録されているのは分かっているから、もう諦めたけど。


「あの時のイサカ牛は陛下が?」

「うん、肉だけはどうやっても駄目だって聞いたからね」

「お陰様で、お肉が好きになりました。」

「ヴィクトル、貴方あの忙しさの中、よく成長日誌なんて読んでいられたわね」

「日誌を読んでからでないと眠れなかったので」


 あ、周囲の目がドン引き派と憐憫派に分かれてる。私は遠い目派です。スミマセン。





 

ヴィクトル=陛下です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ