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Royal Room  作者: のーと
6/7

六人目

長かった前書きはどうだった?


あなた方の始まりは長かった?


それとも短った?


クス…。


でももう歯車は回ってしまった。


アイリス


ハイン


ジン


あなた方3人はもう手遅れの所まで来てしまった。


そうね…わかりやすく言うとアイリスがジンを狭間世界の住人にしてからパーツは一つに集まった。


日に日にパーツは一つになってく。


そしてパーツは完璧に一つとなり、この日を堺に歯車を動き出す。


最後の日常をせいぜい満喫したらいい。


次から招待される者は変わり種ばかりなのだから…。


クスクス。


もう私・僕・あたし・俺・妾・我はいなくなろう。


でも1つ問題残しておくね。


私・僕・あたし・俺・妾・我は誰でしょう?

アイリスはジンと共に現世で洋服選びをしていた。

なぜこうなったかというと、数時間前へ戻る。



「服買おうかな」



朝ご飯を食べながらアイリスはぽつりと呟く。

ジンがそれを拾い、言葉を紡ぐ。



「現世?」


「そう。

この世界には店がないから、買い物するときは現世へ行くの」



ジンは目を輝かせ、言葉は出さないが明らかに現世へ行きたいとわかりきった顔だった。

アイリスは悩む。

一度死んだ人間を連れていくことは可能だが、もし死んだ人間とその知り合いが出会って話しかけられてしまうと説明が出来ない。

現世の人間に狭間の世界を教えるのはタブーとされ、禁忌を破ってしまうと説明した狭間の世界の者は魔界の王に消されてしまうのだ。

アイリスが答えが出ないとき、ハインが助け舟を出す。



「ジンの容姿を一時的に変えてみてはどうですか?

お嬢様はその力ありませんが…」


「そうだ!

ハイン、あなたには人間の容姿変える力あるじゃない!」



アイリスはその案に大賛成と言わんばかりにそれよ、と連語する。



「ではご飯を食べ終わり、片付けしてからしましょう」



アイリスとジンは急いでパンやスープを胃の中に掻き込み、ハインはマイペースで食べる。

全員食べ終わると、ハインが片付けようとしたがアイリスが早く現世へ行きたいのか手伝うと主張。

ハインはそれを受け入れ、3人でてきぱき終わらせる。

2人は先に現世への扉へ行かし、アイリスは部屋に戻って着替える。

動きやすい服を選び、金髪だと目立つためウイッグを被る。

王子系の服で、黒のウイッグで2人の元へ戻る。

既に容姿を変えるのは終わってたようで、元のジンとはかけ離れた姿になっていた。

元々鼻筋が通ってて高かった鼻は低く、団子鼻になった。

二重でぱっちりした目は一重で細長くなった。

筋肉質で細かった手足は贅肉しかない所謂デブになっていた。

趣味、今の容姿を見るとキモオタと思われても仕方ない。

その姿でアイリスと現世へ行ってしまうと…



「まるでロリコン誘拐犯じゃない!」



その一言でハインは笑い、ジンは訳もわからず不思議そうな顔をしている。

その反応を見ると今の姿を見てないようだ。

アイリスは鞄からチョコの手鏡を取り出し、ジンに見せ付ける。



「え…?

ちょっとおお!

ハインさん!」



ジンはハインに詰め寄り、文句を言う。

元々希望してたのは周りに不審に思われないようにアイリスに似せるか、身長だけを縮ませて学生カップルに見せるようにする話だったらしい。

アイリスは今のジンが面白いらしく、こっそり写真を無音で撮る。

所謂盗撮なのだが、アイリスは楽しければいいという考えで後々のことを考えていない。

ハインは散々ジンで遊んだ後、希望通りに姿を変える。

輪郭と少し堀深くなり、ハーフのような顔になる。

茶髪で短かった髪は金髪で後ろで括れる程度の長さになる。

体型は変わらない。

まだ持っていたチョコの手鏡で今の姿を確認すると満足気な顔をしていた。

ジンとアイリスが並ぶ。


「まるで兄妹ですね」



ハインがそう言ったように、本当に2人は兄妹に見える。

これで不審な要素やジンの知り合いに遭遇してもなにもない。

アイリスは現世への扉のに手を取り、ゆっくり開く。

一歩を踏み出す前にハインを見て一言。



「留守番よろしくね」


「はい」



2人は歩き出し、そして今に至る。



「白っぽいの欲しいな」



アイリスが物色する。

女性ものの店なのでジンは居心地が悪く、アイリスの趣味についていけないので仕方なくアイリスの後ろをついていく。

アイリスはジンが居心地悪いことに気付き、嫌がらせで下着コーナーへ向かう。

目のやり場に困ったジンは焦り、その姿を見て笑うアイリス。

ジンは申し訳なさそうにアイリスに話を持ち出す。



「アイリスちゃん…早く決めてくれないかな?

俺めっちゃ困ってるし、店員だって不審な顔してるよ?」


「別にいいじゃない?

私が決めあぐねてるんだから」



クスクスと妖艶に笑うアイリスを見てジンは悟る。

これは絶対に決めるのに時間がかかると。

アイリスは30分かけて下着をじっくり選び、次は元々いた服のところへ向かう。

やはりゴスロリとあまロリのどちらにしようか迷ってる。

下着のところでわかったが、アイリスは優柔不断である。

一度迷うとアイリスが満足するまで悩み続けるのだ。



「どっちがいいかな?」



アイリスはゴスロリとあまロリをジンに見せ付け、選ばせる。

ジンの趣味だとゴスロリを選ぶが、相手はアイリスだ。

おそらくあまロリの方のいいところを言うはず。

だからジンはこう切り出す。



「両方買ったら?

俺が荷物持つし遠慮なく買えばいいと思うよ」


「…盲点だった。

いつも一人だし荷物量を考えて1着だけって考えてた…」



アイリスは悩んでた顔からスッキリした顔になり、気に入ったゴスロリとあまロリの服と下着を持って会計する。

アイリスは早足で行ったが、ジンはあえてゆっくり向かう。

レジにつくと丁度終わってたみたいで、アイリスはジンに荷物を渡す。

服を買うだけで疲れ果てたジンは喫茶店へ行くと提案し、アイリスも同意する。

アイリスは特に行きたいという喫茶店はなく、ジンに任せたが後々後悔する。

今いる地域はジンがよく行く場所らしく、おすすめの喫茶店がたくさんあるらしい。

店から出て徒歩3分以内でついた場所は外から見ると藍色の建物で全体的にシンプルで洒落ている。

中へ入るとアイリスは外と中のギャップに驚く。

中は白く、白に慣れたアイリスは落ち着けるがポスターや店員が予想を遥かに超えていた。

まずポスターは全てアニメで、店員は様々なコスプレをしていた。

アイリスは激しく帰りたくなる。

2人に気付いた店員が近付き、普通の店とは違う言葉と共に笑顔で話し掛ける。



「おかえりなさいませご主人様ぁ!

お二人様ですかぁ?」


やけに甘ったるい猫なで声でアイリスは引く。

ジンはテンション上がったのか、鼻の下を伸ばして明らかに常連ですアピールする。

前の容姿ならわかるだろうが、今はハインの手により変わっている。

果たして店員はわかるだろうか?



「あれ?

もしかしてジン様ですかぁ?」



「そうだよ!」



アイリスは焦る。

生きてる人間に教えてはならぬことをジンに説明してるが、今はそのこと忘れてる模様。

今また説明したって周りから変な目で見られるため、席に案内されるまで我慢することにした。

店員とジンは久々に会ったためか、話に花を咲かせる。



「それでさぁ…」


「足痛い…」



アイリスは足をさする。

勿論嘘で演技。

それを間に受けた店員は急ぎで席を案内する。

なぜか一番奥の席を案内され、やっと座れたアイリスはメニュー表を開く。

喫茶店なので軽食など色々あるが先にジンに言わなきゃならないことがあるため飲み物だけ頼む。



「ここはトースト系が美味しいんだよ!」


「そう。

ミルクティーで」


「え、無視?」


「かしこまりましたぁ」



自慢げに話す姿に苛立ち、無視をした。

二人きりになったため、アイリスは先ほどの会話について話す。

そしてまたしても禁忌に触れかけ、アイリスが消滅することも伝える。



「ごめんね…。

久々だったから興奮したんだ。

アイリスちゃんが消えるのは俺だっていやだ」



言葉はまともだが、顔が犯罪者である。

わざとらしくはあはあ言い、それに顔が絶頂寸前かのよう。

警察に突き出してもおかしくはないのだ。

アイリスはこんな変態を放置し、先ほどミルクティーしか頼んでおらず小腹がすいたのでメニューを見て悩む。

ジンがトースト系がおすすめと言ってたが、そもそもアイリスはあまり好きではない。

パンより米なのだ。

アイリスがメニューを畳むと同時にジンは店員を呼ぶベルを鳴らす。



「あら、気が利くじゃない」


「自分も頼みたいのあったし、ついでにアイリスちゃんがメニュー畳むの待ってたんだよ」



はにかむ姿は誰から見ても爽やかでかっこいい。

だがアイリスはジンの中身を知っているし、ハインが更に顔を整えたことを知っているためなにも思わない。

丁度よく先ほど頼んだミルクティーを持った、さっきジンと仲良く話してた店員が来た。



「お待ちどうさまぁ。

ミルクティー2つですね?」


「ありがとー!

それにフレンチトーストのトッピングクリームが1つ」


「私はオムライスで」



慣れた手つきでメモ用紙に書く店員。

特に何も言わず、マニュアル通りで去ってった。

アイリスとジンの間に会話がなくなったかと思いきや、2人の側を30代前半らしき男性が通った。

いつもなら気にしないことだが、アイリスは不思議に思う。

見た目は普通なのだが、普通の人間とは違う目付き。

それは見慣れた自殺者特有の光がなく、全てに絶望した目付きに似ていた。

極めつけなのは男性が纏ってるオーラ。

アイリスは魔力を感じ取れるジンに最大限に気を使い、目に最小限の魔力を込めて男性の纏ってる何かを見る。

全体的に灰色で形状が丸の色が紫のオーラを纏っていた。



「ジン!」



アイリスは焦って、焦りのあまり大きな声で呼んでしまった。

周りに変な目で見られ、一瞬しょぼくれたが男性のオーラを二度見し焦りを取り戻す。

ジンはアイリスの謎行動についてからかうが、冗談ではない顔だと認識するとふざけた顔から真面目な顔になる。

アイリスは目に魔力を込めてたことにジンは気付き、周りに聞こえないように小声で話し掛ける。



「どうした?」


「さっき通った男性いるでしょ?

不思議に思ってオーラを見てしまったの。

そしたら、招待される人と同じ。

仕事したくないからジンなんとかして!」


「え?

アイリスちゃんほとんど仕事してな」


「いいから早く!」



ジンの言葉を遮るほど焦ってるアイリス。

ただ自殺者を増やさないために止めるのならわかるが、アイリスは仕事をしたくないために止めしかもアイリス自身は止めたくないと主張する。

いつ自殺するかわからない人を見て焦ってるのは道徳としていいことだが、理由が不純過ぎてジンは呆れた。

答えを探そうとしたタイミングで店員がご飯を持ってきたのでアイリスはそれをそっちのけで食べるのに必死になる。

この姿を見るとわかるだろうが、アイリスは食べ物>自殺者なのだ。

そして面倒ごとを嫌い、仕事が増えそうなら誰かに押し付けてアイリスは回避しようとする。

だがアイリスは状況によって自殺を推奨することがある。

それは招待された者をおもちゃにする場合のみ。

基本的にアイリスは自己中心的。

それを把握しそれでもついてくるハインを尊敬するジンはとりあえず今の状況を受け入れた。

食べ終わった2人は男性をどうするか話し合う。



「ジン、あなたが話しかけて頂戴!」


「マジで言ってる?」


「当たり前よ!」



アイリスの無茶ぶりにはある程度慣れてきたが、知らない年上に話しかけるのには躊躇ってしまう。

それをわかっててアイリスはこういうんだから腹黒い所あるのだろう。

だがジンは今回だけは引くつもりない。



「一応俺の雇い主なんだから、こういう時くらい主として威厳を出さないとね?」


「なに言ってるの?

主だからこそ私を楽させなきゃ」


「だらしない主なんて誰もついてこないよ?

現に俺とハインさんしかいないじゃん」


「それは私が自己判断でハイン以外使用人はいらないと思ったの!

そもそもジンなんかいらなかったのに、あなたったらハインを味方にしたから…」


「だったら俺を消滅されたらいい話じゃないか?」


「情が湧いたから今更出来るわけないじゃない!」



ジンは一瞬照れた。

もしこのような状況じゃなければひたすらからかい、頭を撫でてが今は男性をどちらが止めるかで言い争ってる。



「ハインがいたらハインに任せてたのに…」


「いっそのこと放ったらかしにしたら?」


「ヴァリル家当主として、これから死のうとする人を止めなければいけない」



ジンとアイリスが言い争ってる中、話題の中心である男性が近付いてきた。



「あの…店の中で大声で喧嘩はよくないと思いますよ?」



2人は店内を見回す。

確かに迷惑になってたようだ。

男性は更に言葉を出す。



「喧嘩の理由や愚痴ならおっさんが聞いてあげるからとりあえず今は店から出よう?」



2人は素直に頷き、会計を済ませ店から出ていく。

近くの河川敷に腰を下ろし話せる範囲でアイリスが話す。



「そっか…。

それは大変だね」


「そうなの。

あなたが勝手に死なれたらこっちも困るのよ…」


「え?

なんでわかったの?」



アイリスは墓穴を掘った。

ジンはフォローに回る。

この時アイリスはおそらく初めて心の底からジンに感謝する。



「彼女、そういう人ってすぐわかるんですよ。

なんかオーラ?ってのが見えるらしく、どっちが止めるか話し合ってたんです」



男性は頭を掻き、困っていた。

男性とアイリスが見つめ合い、渋々色々話してくれた。



「おっさんね、家族がいたんだ。

妻、娘の三人で暮らしてた。

丁度嬢ちゃんくらいの年齢かなぁ…」


「いたとは?」


「詳しくいうとね、おっさんリストラされて妻に見放された挙句娘もつれて出ていっちゃったんだ。

しかもおっさんが頑張って個人的に貯めてたお金も持ってってね。

死ねって言ってるもんじゃない?」



ジンは話を聞いて後悔してる。

男性は笑いながら言ってるが、こういうのに慣れてないジンにとっては重いのだ。

アイリスは職業上慣れてるからなのか、平気な顔だった。



「それで辛くて死ぬの?」


「それだけじゃないんだな~。

確かにそれもあるけど、本質はまた別なんだよ。

妻が逃げた先が別の男だった。

それだけならよかったんだ。

おっさんが大事な娘だと思ってたのは実は別の男の子供だった。

それだけじゃない。

不倫相手は…おっさんの一番の親友だった。

えっとね…子供には難しいことかもしれないけど、おっさんはね親友と家族全て失ったんだよ?」



男性は俯く。

鼻水を啜る音。

泣いてると察したアイリスは男性に優しい言葉をぶつけた。



「そう。

ならあなたはこれからどうするか好きにして?

死ぬのも生きるのも自由。

それだけ辛いことがあったのなら私達が止める必要ないもの。

いや、資格がないってのが正しいかな?」


「ありがと…。

嬢ちゃん、兄ちゃん」



男性は後を去り。

背中が見えなくなるくらい、アイリスとジンは見ていた。

完璧に姿を見えなくなって2人は帰る。

屋敷につくと同時にハインがお出迎えしてくれて、RRに行くように言われた。

RRへ入ると先ほどの男性が意識を戻してない状態でいた。



「あなたは救ってあげるからね」



アイリスは本気で男性のために導いた。

男性が最後に言ったことはアイリスは永遠に忘れないように胸に刻む。



『嬢ちゃんは天使だからちゃんとするんだよ?

兄ちゃんは嬢ちゃんがおかしなことしないように見張ること。

爺さんは2人を見守ってて欲しい。


それじゃあ、またここで会おう』



3人は笑顔で天国へ行く男性を見送った。

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