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Royal Room  作者: のーと
4/7

四人目

ジンは廊下の掃き掃除をしながら思う。

自分がここへ招待されたのはついこの間。

現世で二次元へ行ける方法か出回り、明らかに自殺するという行為なのだがジンは特に迷わず決行した。

山奥にドラム缶を用意し、中にガソリンを染み込ませた薪を入れ中に入る。

そこで二次元最高、と叫びながらマッチに火を付けゆっくりとドラム缶の中に落とした。

熱くて、苦しくて、悶えた。

だけど悲鳴を上げることはなかった。

皮膚が焼け爛れても、火傷から血が流れて業火で蒸発する程の火力でも、目玉が剥き出しになるほど爛れても悲鳴を上げることは一切ない。

燃える音と人体が焼ける異常な臭いだけだった。

死ぬ直前の事を思い出しても、ここへ来た時の記憶はない。

まあそれはそれでいいかな、とジンは思い苦笑する。


「手が止まっています」


後ろから気配を消し、低い声で注意される。

白髪が目立つが長い髪を後ろでまとめ、燕尾服を着たジンの上司であるハインがいる。

素直に死んだ直前のことを思い出したことを話した。

特に何も言わず、ただ聞いただけなようだ。


「お嬢の名前ってなんですか?

ハインさんが最初に名乗ったヴァリルってのも関係あるんですか?」


ハインは一瞬懐かしむように笑ったが、すぐにいつもの涼しげな顔に戻る。

隠さなくてもいい話らしく、ハインは語り出す。

ハインにとってジンは、話を聞いてくれる人なのだ。


「お嬢様のお名前はアイリスヴァリルでございます。

頭首のヴァリルという名をついでそうなさりました。

わたくしがお仕事をする時に名乗るのはヴァリルですが、頭首の名前を借りてるのでございます」


「アイリスちゃんか…」


「お嬢様は名前を呼ばれることを好みます。

わたくしは立場上お嬢様と呼びますが、ジンなら呼んでもいいのかと」


「じゃあそうします」


名前を知った後、黙々と掃き掃除をする。

ハインにコツを教えてもらい、サクサクと進められた。

お客様は今日いないらしく、特にやることがなく2人で隅々まで掃除をする。

RRを掃除しようと思い、入るとアイリスがいつものイスで紅茶を飲んでいた。

仕事の時と違うのはタブレットを触って遊んでることだけ。

折角名前を教えてもらったので呼んでみる。


「アイリスちゃん!」


アイリスは全身で反応し、ジンを見る。

警戒する姿。

どうして名前を知ってるのか、どうしてここに来たのか気になってるようだ。

とりあえず今日の服についてからかってみる。


「今日は甘ロリワンピースか!

やっぱ幼女はロリータが似合うね!

可愛いよ!」


「どうして名前を知ってるの!?」


アイリスはからかいより、名前を知ったことに驚いてるようだ。

ハインから聞いた話を正直に話すとアイリスは納得し、唸る。

どうやらジンに知られるのは嫌だった模様。

そんなことをジンは一切気付かず、名前を呼びまくる。

容姿を褒めつつ名前を呼ばれたら普通の女性なら惚れてもおかしくはない。

しかもジンは容姿がわりと整ってるから尚更だ。

だがアイリスは普通の女性とは違い、屋敷の主でジンの本性を知っている。

萌えオタで、好きなことにとことん尽くし、人形のような幼い女の子を好む。

だからアイリスはジンに対し、少し苦手意識がある。


「アイリスちゃん!

髪の毛綺麗だね」


「わかったから仕事しなさい」


「うん!

でもね、俺は仕事よりアイリスちゃんとお話したい」


「私はしたくない」


「アイリスちゃんはそうでも、俺は違う」


アイリスは頭を抱え、興奮状態のジンの扱いに困る。

こういう時にハインがいると注意するのだが、生憎今はいない。

アイリスがジンから離れるか、別のことで意識を逸らすしかないのだ。

正直な話をするとどちらもしたくないアイリスは、仕方なく付き合う。

趣味は確かに悪いが、根は優しく押しに弱い。

主としての弱点だが、いい点でもある。

ハインはそれをきちんと理解してるため、度が過ぎる時以外黙っているのだ。


「紅茶がなくなった…」


「俺がやってこようか?」


めんどくさがりのアイリスにとって嬉しい一言。

同時にジンに任せていいのかと不安もある。

具体的にいうと抽出の加減やお湯の量など。



「いや…お菓子だけでいい。

紅茶は自分でするわ」


「洋菓子?」


「お願いね」



ジンはRRから出ていき、ハインを探す。

アイリスが好きなお菓子どこに仕舞っているのか聞くためだ。

急に名前呼べば現れるか検証したくなり都合もいいのでやってみるとハインはどこからか現れた。

アイリスがお菓子を欲しいと言ったことを伝え、仕舞ってる場所へと案内された。

台所にあるようで、好きそうなものを適当に選ぶといいと教えられ何があるのか一通り確認する。

全て安物ではない、高級品であることは一目瞭然。

雑に扱えないと察し、丁寧に出し入れをする。


「休憩にしましょうか。

ちょっと多めにお菓子持ってきましょう」


ハインに言われた通りに多めにお菓子を用意する。

選んだとはチョコ。

紅茶と相性がいいと思ったからだ。

ジンは紅茶について詳しくないが、生前コンビニのミルクティーとチョコを同時に食べたときとても合ってたのではっきり言えば思いつきなのだがアイリスは文句言わないだろうと思う。

ハインは大きめのプレートにチョコの入ったファンシーな壺、ハイン用のティーセット、お湯がたくさん入ったケトル、茶葉などをのせRRへ行く。



「遅い!」


アイリスはいじけていた。

紅茶を用意して大好きなお菓子を待ってたのだ。

ジンは謝るとアイリスは許し、それよりもハインが持っているプレートが気になるようだ。

これから休憩だと伝える。

アイリスはお菓子さえ食べられれば関係ないようだ。

3人でテーブルを囲み、紅茶を飲みつつ談笑する。

そんなのどかな雰囲気が長く続けばいいな、とジンは思う。

そんな雰囲気を壊すかのように、軽快なノックの音が聞こえる。

アイリスとハインは誰が来たのか察し、仕事モードへ入る。

ハインは飄々とし、アイリスは幼さが残る上品な笑み。

アイリスがどうぞ、と言い女性が入ってきた。

ジンは一目で彼女がどういうものか把握した。

腰まで伸びた綺麗で黒い髪、色白で痩せ細った体、大きな二重の目は感情の色がなく、左腕には包帯が巻かれている。

欝かメンヘラかはわからないが、すくなくとも病んでいるとジンは察した。

2人が仕事するのに俺は邪魔か?と思ったが、2人は別にいてもいいと言う。

言葉に甘え、観察させてもらう。



「座って?」



立っていた女性はアイリスの一言で座る。

まだ意識は完璧に戻ってきてないようで、なにもない空間をずっと見てる。

女性は手に持ってた厚みのある封筒をテーブルに置き、アイリスがそれを受け取ると小さな唸り声を上げる。

ジンは、それが可愛いと言うがアイリスに無視された。



「なるほどね。

あなたのこと理解出来たわ。

目覚めなさい」



アイリスは言霊を使えるのか、強気な一言を発する度女性は言われた通りに動き、最後の一言で意識は戻る。

不思議に思ったのか周りをよく見て、アイリスたち3人を舐め回すかのように見る。

ジンは共感した。

自分もついこの間、似たようなことしてたからだ。



「ここは…?」



女性は微かな震え声でそういう。

アイリスは不安げな女性を優しく包むような言葉で安心させる。

言ってることはジンや他の人と変わらない。

各道の説明、招待された者が選択する、と。

一文字も変わらない。

変えてはいけないのか、と思ったのがそうでもないようだ。

ただ変えないだけだった。

区切りのついたところで、アイリスは道の選択を催促する。

まるで煽るかのように、焦らせるように。



「あなた、彼氏に心配されたくてリストカットし過ぎて来てしまった。

死ぬつもりなんて1ミリもない。

だったら道は決まってるでしょ?」


「ちが…」


「なにが違うの?

現世へ返れば愛しの彼氏や友達がいるんだよ?

それともそんな優しい人達を捨てて天国か地獄へ行くの?」


「そんなことは…」



まるでいじめだ。

女性が認めたくない部分を的確に言い、追い詰めてく。

流石に女性が可哀想だと思い、止めようとしたがハインに止められる。

ハインはなにも言わず、唇に人差し指を当てて黙ってなさいと言いたげな顔だった。

ジンは渋々黙る。



「あなたが今まで彼氏にしてきたのはなに?

束縛、監禁、断食、拘束、体罰…これって彼氏じゃなくて奴隷かなにかじゃない?

好きで大切なら彼氏をそのようなことせず、人間としてある程度の縛りならいいけど自由にさせるものじゃないかな?

あなたは悪魔よ」


「違う!

あの人が浮気したりするから!」


「浮気?

同僚と飲んでいただけでしょ」


「これからそういうふうな関係になる可能性だってある!」


「じゃあ違うことを聞きましょう。

あなた、彼氏には自由を与えずあなたは色々な男性と淫らな行為していたんだって?」


「違う!

私は襲われたんだ!」


「襲われた?

どう見てもあなたから誘って、相手がその気になっちゃってるように見えるけど?」


女性は論破されるたび強気になってく。

これだけ騒いでいれば、ジンたちの話し声が聞こえるわけが無い。

ジンはそれを有効活用しようと思い、ハインに聞く。


「お嬢様がやる気になっております。

生前の間違った行動を指摘し、ある程度叩き直して現世へと戻そうとしております」


ジンは素直に納得する。

ここである程度説教し、反省させれば現世で間違ったことは少なくなる。

だがそれは覚えていた場合の話。

アイリスを見ると最初の幼さが残る顔じゃなくなり、まるで悪魔だがアイリスが主っていうのなら記憶を持たしたまま現世へ返すのだろうか。

それは本人に聞かなければわからない。

女性は苛立ちでテーブルをひっくり返し、暴れだした。

アイリスはこうなると思っておらず、一瞬唖然としたが臨時体制を取る。

いつでも襲われてもいいように、いつでもいけるように構える。

女性がテーブルをアイリスに投げ、アイリスの目の前に大きな道が現れる。

道自体黒く、テーブルが吸い込まれる姿はまるでブラックホールにも見えた。

女性はテーブルだけじゃなく、床に落ちてる様々な物を投げるがアイリスには意味がない。

それで更に苛立つ少女は道へ突進する。

やはり吸い込まれ、女性の姿が見えなくなったときにアイリスは道を閉じた。

部屋の状態を確認し、ジンは片付けようとしたがアイリスに止められアイリスが元に戻すと言う。

瞬きをしただけで部屋は元通りになっていた。

魔法を使うのなら、確かに手作業より早い。

アイリスは堂々とイスに手がけ、しなやかに腰を落とす。

慣れた手つきでポットにお湯を入れ、蒸らしカップに注いでミルクと砂糖をたっぷりいれ上品に一口飲む。

アイリスはこちらに振り向き、偽りのない心からの笑顔を見せる。



「休憩しましょ」



先ほどの女性がどこ行ったのか気になるが、それは茶を飲みながら聞けばいい話でジンたちは素直に座る。

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