一人目
暇潰しの自慰小説
自殺者が集う死んだ世界でも、生きてた世界でもない狭間の空間。
奥の扉から全てが整った美しき少女が出ていき、自殺者を見るとはにかみ綺麗な角度でお辞儀をした。
少女はゆっくりと口を開きこう問う。
「貴方たちで言う天国に行って輪廻転生をまつ?
地獄へ行き無に帰する?
現世に戻ってまた生き返す?」
言い切った後の笑顔はまるで悪魔とも呼べるようなものだった。
そんな僕を哀れな目で見る少女は、先程の問いに答えられないと思ったのか語りだした。
「貴方みたいに答えられない人多いの
だから、そういう人のためにちゃんと対策とってるんだよ?
例えば、仮死状態の貴方の周りの反応とか死後の貴方の周りとか見てせる
面白そうじゃない?
自分が死んだ世界を見れるのよ?」
自分が死んだ後の世界…。
唾を飲む音が響く。
それを聞いた少女は先程の悪魔のような笑みではなく、幼さが目立つ笑みだった。
なぜ過去形なのかと言うと、その後少女はすぐ笑顔をなくしたからだ。
どうして?と問う前に、僕の横を通り過ぎる燕尾服の初老が少女へと近付く。
少女は初老の男性を見ると苦虫を噛み潰したかのような顔をし、慌てて逃げ出した。
「お嬢様!」
男性は叫ぶとお嬢様と呼ばれた少女を立ち止まらせた。
そして怯えた顔。
少女は殺されるのか?その後僕も殺されるのか?と考え、体が無意識に震える。
この時、僕が死んだことを完璧に忘れてて滑稽なことを考えたな、と後で気付いた。
逃げ回る少女を男性が捕まえ、男性は慣れた手付きで懐から可愛い袋でラッピングされた物を出す。
僕にはそれはなにかわからなかったが、少女は目を輝かせ袋を奪おうとするが男性は素早く阻止する。
それを何度か繰り返し、少女はしょぼくれた顔で諦めた。
「これが欲しいですか?」
「当たり前よ!」
ない胸をはり、腰に手を当てる。
自慢げに言ってるが、全く誇れる要素はない。
執事は堅苦しい顔のまま、更に問う。
「珍しくお仕事をなさると思ったら…また悪い趣味ですね?
お客様のことを全く考えてないことをはっきりとわかります」
お客様って僕のこと?、と考える前に少女は僕を見つめて初めて会った時の笑みで問う。
「本当は、口巧みに貴方を現世に返そうと思ったの。
大事なお客様、私の大好きな真っ黒で希望がない人生を過ごしたお客様が大事。
現世に返った貴方はまた周りに見放されて、絶望して病死するわ」
「どうなさりますか?」
僕はじっくり考える前にもう既に答えが決まっていた。
自殺する前、僕は周りに嫌われていた。
いじめられた、虐待された、大事なものが出来てもすぐに壊された。
そして追撃するかのように、不知の病にかかった。
この時、僕は全てを呪った。
僕は幸せになる権利がないの?周りを見てそうだろう。
僕はただ普通に生きたかっただけなんだよ?世界はそれを許さなかった。
と自問自答を繰り返した結果、自殺して今に至る。
どこに行ったって嫌われ者の僕なんだ。
それだったら…
「天国へ行きたいです…」
男性は小じわを寄せて深く微笑み、少女は面倒くさそうに指先で空中に何かを書いている。
書き終わったかと思ったら、目の前に大きな隙間がいきなり現れた。
隙間は中の色が白く、横を見ると1ミリもない、ただの糸のようにも見える。
これについて聞く前に少女は勝手に喋り出す。
「天国への道よ。
ここを通っていきなさい」
僕は深くお辞儀し、隙間を通る前に二人を見た。
少女が袋をもらい、子供がプレゼントもらったかのように喜びながら開封していた。
なにも言わず、僕は隙間を通った。
次の生は幸せになろう。
僕には権利がある。
「折角の自殺者なくなったじゃない」
「駄目です。
大丈夫なお客様ですよ?
おもちゃにしてはいけません。
その前に普段からちゃんと仕事してください」
「やだ!」
「お嬢様!」