表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

第四話

アキバを発つ前のサモンッ!?



「ん~、どうしたもんかな」


ハカセはギルドホールにある自室でペンを片手に持ち悩んでいた。


「失礼します。お掃除に…、ハカセさま、どうなさいましたか?」


「………んー、やっぱ、契約の空スロットがなー」


どうやら真剣に悩んでいるらしく、シェリアが室内に入ってきたことにハカセは気が付かない。


(紙になにか書き込んでいるようですね)


紙を見ず、上を見ているハカセ。

きっと、メニューを開いて何かを書き写していることにシェリアは気づく。


(何をそんなに悩んでいるのでしょう?)


ここ数日のサモンッ!?を見ていたシェリアはハカセの性格からそんなに悩むことがあるのかと疑問に思い、少し好奇心が湧いてきた。

シェリアは気づかれぬように、ゆっくりと、暗殺者アサシンのごとく静かにハカセの側に立つ。


「召喚モンスターのリストですか?」

「どうわあッ!!」


紙の内容を見て、シェリアはつい口に出してしまう。

それで、やっと側にたつシェリアにハカセは気づく。


「…シェ、シェリアさん、…い、いつから、そこに?」

「今しがたです、ハカセさま、申し訳ありません。お掃除に来たのですが…」


明らかに動揺を見せるハカセ。

それが、紙を盗み見る無礼をしたことに対してのものだと考えたシェリアすぐさま謝罪をしようと口を開く。


「え、そ、掃除?あ、ああ~、な、なるほど、じゃあ掃除の邪魔だし俺、外に出るわッ!!」

「ハ、ハカセさまっ!」


ハカセはシェリアの謝罪の言葉を遮り、そう言い残し自室の外へ慌ただしく飛び出す。


「いけない、私、ハカセさまに失礼なことを…」


好奇心に負けて、紙を盗み見た無礼な行動にシェリアは後悔せずにはいられなかった。


「あれ、シェリアさん弟の部屋でどうしたの?」

「ナニを、ソンなに沈んでイルンダイ?」


デラルテとミズキだ。

ハカセの部屋を横切った二人は、中にいる立ち竦んでしまったシェリアに気づき心配そうに声をかけた。


「デラルテさま、ミズキさま、その」


先程までの事を話していいものか、言っていいことなのかという考えが過り、シェリアは口に出せない。

そもそもシェリアはハカセがなぜあんなにも動揺していたのか見当もついていないのだ。


「シェリアさん、言いづらいことなのかもしれないけど、他の人と話してわかることもあると思うんだ。私、シェリアさんにはお世話になってすごく助けられてる、だからね、力になってあげたい」

「ワタシも同じ気持ちダ。ダカラモシ、シェリアサンが良かっタラ話してミテクレナイカナ?」

「…ありがとうございます。実は…」


二人の言葉に、言う決心が着いたシェリアは先程までの事を説明した。


召喚リストを見て悩んでいたこと。


それを自分が見た途端に慌てて部屋を出ていったこと。


「…召喚リスト?」

「カレが手持ちをカエル理由がナイなあ。チナミにリストの内容は?」

「テンタクル、ローパー、スライム、スワンプフロッグ…」


シェリアが紙に書かれていた召喚獣を順にあげていくごとに、デラルテとミズキは眉を顰め、ハカセに対し訝しむ。

デラルテとミズキは互いに顔を合わせる。


「ねえ、デラルテちゃん?」

「これはミズキさん?」


お互いの考えが一致した。

二人がハカセの悩んでいた内容に二人は推測したその結論で自身の頭に血が上るのを感じる。

二人の機嫌がひどく悪いものになっていく。

デラルテは普段の低めの男性的な演技を忘れ、普通の女性のものへと戻っている。


「シェリアさん、大丈夫。あなたはなーんにも悪くない。ちょっと、わたし愚弟に用があるからまたあとでね…」

「うん、同感だね。私も、ハカセに用が出来たからまたねシェリアちゃん…フフフ」

「あのお二方…」


二人はシェリアを置いてハカセの部屋を後にした。

シェリアは二人が今の話でなにを納得した分からず再度、ハカセの部屋で呆然と立ち尽くす。


「………シェリア?」

「あれ、シェリアさん、ハカセの部屋でどうしたの?」

「何かあったんですか、博樹が部屋に変なもの置いてましたか?」


今度は、朧、カレア、ヒビキがハカセの部屋の前を通り、立ったまま動かないシェリアに話しかけた。


「え、えっと、実はですね…」


今前での会話の意味がよくわからなかったシェリアは恥を忍んで三人にハカセの行動の件も含めて説明した。

シェリアが三人に説明をし終えたとき、三人はそれぞれの反応を返した。


「ハカセぇ、こんな事態になって数日もたってないのに…」


朧は頭を痛そうにし額に手を当てる。


「………死ねばいいのに、ワタシもデラルテたちに付き合う」


カレアは何故か冷めた目をして声を低く物騒な言葉を吐き、部屋を出る。


「…え、二人は博樹がなにを悩んでいたかわかったんですか?」


ヒビキは、シェリアと一緒でよくわからなかったのか首を傾げた。


「朧さま、一体なぜハカセさまは部屋を飛び出したのでしょう、それにデラルテさま、皆様は何故あんなにも気分を悪くしていらっしゃるのですか?」


シェリアはこの場で唯一答えを知っている朧に疑問をぶつけた。

朧は返答に困った。

何故なら、ハカセが考えていたことがこの異世界に本当にあったらと思うとシェリアのハカセに対する評価が暴落し、破産しかねないものだ。


「シェリアさん、世の中には知らなくていいことがたくさんあるんだ」


朧は理由を話すことはなかった。

女性であるシェリアには絶対に聞かせたくない類のものだからだ。

ああ、ギルドホールのリビングの方でハカセたちの声が聞こえてくる。

朧は素早く、ハカセの部屋のドアを閉めた。



「アハハハハ、ねえ博樹、お姉ちゃんにこのリストの意味教えてほしいなあ」


「ああ、別に答えなくてもいいよ。…直接その体に聞いてあげるから」


「………変態」



「ま、待ってくれ、ちょっとした出来心で…ちょ、出口塞がれ…」


「反☆省し・な・さ・い<従者召喚:ワイルドボア>、<フィアースモールド>オオオオオオッ」


「私たちが君の初めて(神殿送り)もらってあげるね、<従者召喚:火竜公主レッド・ドラゴン>」


「――――――有罪ギルティ、<従者召喚:氷結精霊グラキエス><戦技召喚:爆炎精霊イグニス>」


「ちょま、本気かよ!<従者召喚:案山子スケアクロウ>、<スケープドール>ウウウウウッ!?」



この時のことをギルド会館にいた冒険者と大地人が口をそろえていった。

あの日、ギルド会館が崩壊するかと思った

それほどの轟音と衝撃がリビングルームで起きていた。


(あー、これはリビングしばらく使えないなあ)

(すごい、すごいっ、一体どんな従者呼んだだろう?)

(この事態、私のせいなのでしょうか…)


無論、シェリアのせいではなく<大災害>から数日も経たず、もしかして薄い本展開やれんじゃね、とハカセ(バカ)が大馬鹿な思いつきからやらかしたのが原因である。




第4話

「あのバカ、気にしてもいないのに、泣きながら謝りやがって…」



「思ったヨリススメてるネ」

「そうですね。ハーフガイアプロジェクトの影響で距離が半分とはいえ、ここまで順調に進めるのは僥倖でした。グリフォンとペガサス様様ですね」

「はいっ、生身で空を飛ぶなんて、現実では体験することないですよ!」

「うんうん、ヒビキくん分かるよその気持ち」


ハカセたちのススキノ遠征は順調だった。

ハカセと朧のグリフォンとデラルテが呼び出した<ペガサス>(天馬)に跨って空の旅をしているのだ。障害物一つない旅はそれは順風満帆な旅だろう。


「でも、召喚出来る時間に制限があるんですね」

「グリフォンはアイテム効果だからね。従者召喚は別だけど」

「半日近く出せてりゃ十分だろ。急ぐ旅でもねえんだから」


移動手段として使ったグリフォンは従者召喚とは違い、アイテム効果による召喚である為、使用には時間制限があった。

その点、従者召喚は召喚時間に制限(一部を除く)がない。

その他に、異世界となったおかげでゲームでは出来なかった召喚獣に乗ることができるのも大きかった。

ゲームでは召喚獣に乗るには、特技の〈ファンタズマルライド〉が必要であり、条件にはユニコーンなどの「幻獣」のカテゴリでなければ使用できなかった。(しかも、その特技を使用できる召喚獣の数は少ない)

特技を使用していないで召喚獣に乗るのは振り落とされる危険はあるが、そこは冒険者の肉体。

おかげで地上でも大変楽に移動が出来た。


「話は後にして、テント張るの手伝えよ。<方術召喚:ブラウニー>」

「………<方術召喚:ブラウニー>」


すでに日が沈みかけ、夕暮れの時間である。

ハカセはテントを張る為に、手伝いとしてブラウニーを呼び出した。

カレアも続くようにブラウニーを呼び出す。


<方術召喚:ブラウニー>

<方術召喚>は戦闘以外のその他に使える召喚魔法。

ブラウニーはその中でも生産職向けの召喚獣だ。

成功率上昇、作成スピードアップ、作成数増加などさまざまな恩恵を授けてくれるブラウニーは生産職<錬金術師>を持つハカセが愛用する召喚獣。

世話好きな妖精のとおり、〈大災害〉後は家事などもしてくれるようになったため、一家に一台、もとい一匹ブラウニー。

ギルドホールにいたときはシェリアさんが嬉しい悲鳴を挙げていた。

<薄い本事件>のときもリビングを片づけるのに大いに活躍した。



「今日も野宿するから手伝い頼む」

「ほっほ、よかろう。終わった後のミルクとハチミツを頼むぞ」

「ああ、楽しみにしとけよ」


「………あのブラウニーのお手伝い」

「は、はいッ!」


ハカセが呼び出したブラウニーは目や口が見えないほどに髪や髭を生やし、人の好さそうなお爺さん顔の妖精が三匹ほど一緒にでテキパキとテント張りの作業をする。

一方、カレア呼びだしたのはハカセのブラウニーとは一回り小さく幼い子供の姿で拙い動きでテント張りの手伝いをしていた。


「………初伝、中伝にしたほうがいい?」

「中伝はインクと紙を作る材料はギルドホールの倉庫だから無理。初伝も習熟ポイントがもったいないからやめとけ。」


<特技成長>

エルダーテイルの特技は「会得、初伝、中伝、奥伝、秘伝」と左から順に段階を経て成長する。

特技を成長させるには段階によって条件が違う。

「初伝」はレベルアップやクエストで手に入る習熟ポイントで成長できる。

「中伝」からは「中伝の巻物」というサブ職<筆写師>が作るインクと紙を使って、高レベル冒険者が自分の技術を記すことで手に入るアイテムがいる。

インクと紙は、筆写師ほど上等ではないがハカセのサブ職<錬金術師>でも作れるが、現在材料がないので作成できない。

「奥伝」は一部の強力なモンスターのレアドッロプアイテム「奥伝の巻物」が必要で、プレイヤー間の取引でも非常に高価な代物になる。

一番上の「秘伝」はレイドクエスト級の高難易度クエストでしか手に入らない「秘伝の巻物」がいる。大規模系戦闘ギルドでは珍しくはないが、中小ギルドで習得しているのはごく稀だ。


ハカセのブラウニーは奥伝、会得したばかりのカレアのブラウニーでは差があるのは当然だろう。

ブラウニーを召喚したカレアを見たデラルテは不思議な顔してを口を開く。



「アレ、カレアちゃん、ブラウニー習得シテタノ?」

「………拡張パックのために契約スロット一つ空にしてた」

「カレアも同じこと考えてたのかよ。俺も二つ空スロット残してる。」

「考えることはみんな同じですね。僕は一つです」

「ワタシハ二つダヨ」

「なんの話かな?」

「僕も分かりません」


ハカセたちの会話にミズキとヒビキは追いつけない。

その二人の様子に話し込んでいたハカセたちは気づく。


「ああ、姉ちゃんたち契約限界数知らせてなかったな。朧先生、説明オナシャス」

「あ~はいはい、じゃあ朧先生が君たちに教えてあげよう」

「………朧…先生…」

「アハハハハッ」

「骸骨兵士と幽霊どっちが好きかな…、せっかくだし、もっとすごいのを…」

「「ごめんなさい」」


召喚術師サモナー

召喚術師の召喚魔法の多彩さは前も言ったとおり膨大な数だ。

攻撃、防御、魔法攻撃、支援、回復までこなすことが出来る汎用性と応用力が高い。

ある時期までは契約数に上限がなかったために、エルダーテイル内の召喚術師だけゲームバランスが崩れていた。

そこでアダルヴァ社はバランス調整のために召喚術師の契約数を16まで制限した。

つまり、〈???召喚:????〉と言う特技は、合計で16種類までしか、登録できない。

注意するところは召喚魔法以外の特技は問題なく取得はできる。<サモナーズウィップ>や<ソウルポゼッション>が当てはまる。

<ガーディアンフィスト>や<グレイブヤードウォーク>なども、従者召喚を前提とした特技なのでこれも普通に取得可能だ。

召喚術師の調整はそれだけではないけどこれは別の機会にしよう。

そして、空スロットの話に戻すが、要は残りの契約数だ。

召喚術師のほとんどは、自由に召喚獣を取り換えが出来る契約枠を一つは作っている。

召喚獣の数が膨大な分と今回のような拡張パックが導入されて追加する召喚獣が理由である。


「そういうわけで、ミズキさんは森呪遣いの召喚獣の数は少ないからいいけど、ヒビキ君はしっかり考えておくといいよ。召喚術忘却の特技もあるから、数合わせに適当に習得しても大丈夫だけど」

「わかりました。うーん、まだ、枠に困ってないし今は考えなくてもいいかな…」

「ところで、16個の枠全部埋める人ってそんなにいないの?」

「それは…」

「いるとこにはいるぞ」


朧の説明を聞き、契約制限数について聞いたミズキとヒビキ

ヒビキはそこまで埋まるほどの契約数ではないので記憶にとどめるだけにした。

もう一人のミズキは話を聞いて、朧に疑問をぶつけた。

ミズキの疑問に朧が答える前にハカセが話に入ってきた。


「戦闘系ギルド<黒剣騎士団>には、二次元って呼ばれてるプレイヤーが全部埋めてるそうだ」

「二次元?」

「二つ名みたいなもんだよ。召喚獣全部を美女・美少女系で埋めていてギルド内で、こいつらは俺の嫁ッ、と言ったことから付いたあだ名らしい」

「はははは、なあにそれ」

「呼ばれていることを本人は何とも思っていないのが実情ですけど…」


「え、もしかして知り合い?」


「まあ、うちのギルドは全員が召喚士だからその伝手でな」

「一時期、うちのギルドとで同盟組んでたこともありましたし」


「えええええッ!?ど、どうやってッ?」


ミズキが驚くのは無理もない。

人数が10人ほどの小規模ギルドが一体どうして戦闘系大規模ギルドの、しかもエリート主義の<黒剣騎士団>と同盟を結んだと聞いたのだ。

どういう経緯でそんなことになったのか聞かないわけがなかった。


「俺らのギルド、今でこそ小規模ギルドだけど、5年前までは300、いや200人強まで人がいたんだ」

「200ッ!」

「それってすごいことですよッ!」


召喚術師の数は、冒険者の総数およそ3万人のうち10パーセントほど。

だいたい3000人のうち300人。

つまり一割もの召喚術師がいたことになる。

中規模どころか大規模ギルドの人数だ。


「僕らのギルド、全召喚獣のコンプリートが目的でしたから」

「それが日本サーバーだけならよかったんだけどなあ…」

「当時のギルマスが海外サーバーまで手を出したのは無茶通り越して無謀でしたね」

「え、どうして無謀なんですか?」

「コストが洒落にならないぐらいやばいからだよ」


召喚術師はとにかくコストがかかる。

お金だけでなく、契約クエストにかかる時間が問題だった。

日本サーバーでおよそ百種。

その中には大規模クエストでしか取れないものもあり、それをすべて埋めるだけでも恐ろしいまでの時間とお金がかかる。

なのに、当時のギルドマスターは無謀にも海外サーバーに手を伸ばした。

そんなことに付き合ってられるかとギルドメンバーは日本サーバーのほとんど召喚獣を確認次第やめていった。


「海外サーバーは運営の仕方が違うからな」

「日本のガチャスロ課金もやばかったですけど、韓国サーバーもアイテム課金と一部にリアルマネーが必要でしたから」

「………」

「………」


ハカセの言葉に、ミズキとヒビキはどう返したものかと複雑な顔して黙り込む。

大規模から一転、10人足らずの小規模ギルドに落ちぶれたのだ。

言葉を探す二人に、ハカセと朧は困ったような仕草で二人に話しかける。


「別に、俺たちは当時の事をなんとも思ってねえよ。当時のギルマスは召喚獣マニアでその気持ちは少しわかるからな」

「さすがは、二つ名に『ロボオタ』、『ドールマニア』と呼ばれるだけはあるね」

「お、『妖怪絵巻』、『百鬼夜行』なんて痛々しい二つ名を持つお前が言うか…」

「あはははは、ほめ言葉だね」

「俺だって、ほめ言葉だわ」


「…そっか、じゃあ私、妖精さんたちのお手伝いしてくるね」

「…ミズキさん、僕も行きます」


二人の様子に当時いなかったミズキとヒビキはこの話を切り上げるために立ち上がり、野宿の手伝いをしに駆け出した。

ハカセと朧は離れる二人を気にも留めず会話を続ける。

その二人にデラルテとカレアは近づく。


「タノシソウダネ。二人とも」

「………混ぜろ」

「ん、お前らも来たのかよ」

「構いませんよ。昔の話で盛り上がるのも悪くありません」


4人は5年前も一緒だった。

そもそも、<サモンッ!?>が結成される初期メンバーに4人はいたのだ。


「結成は8年前だったけな」

「ソウだね。随分、ナガイことエルダーテイルをヤッテタンダネ」

「最初はハカセがギルマスやってましたね」

「………人数増えて、めんどくさがって押し付けた」

「うるせえよ。あんなにも人数が増えるなんて当時考えもしなかったんだよ」


<サモンッ!?>はハカセが召喚獣コンプリートを方針したのも事実だが、最初はただの召喚獣好きの集まりだった。

友達と召喚獣で一緒にダンジョンに潜り、フィールドを駆けた。

契約クエストを見つけてはギルド全員で攻略を楽しむ。

契約した召喚獣を見ては、可愛いやら、カッコイイとか、怖いとかみんなで駄弁る

最初はただそれだけのギルド。


「少しづつ人数が増えていって、60人ぐらいに膨れ上がってましたね」

「………そのぐらいでサモンが入った」

「行動力ト召喚獣の情熱ガスゴカッタ」

「まったくだ。2年で召喚術師300人近く集めるとかどんだけ好きなんだよ」


<サモンッ!?>二代目ギルドマスター 召喚士

二代目と言っても、人数が多すぎて、ハカセがめんどくさくなってギルドマスターを譲ったのだ。

召喚士というネームからみんなからはサモンと呼ばれていた。

とにかくどうしようもないほど召喚獣が好きで仕方がない性格のプレイヤーだった。

四人もサモンのことは友達と思っていた。

野良PTで知り合い、同好の士であったことから、ギルドに誘った仲だ。

よく一緒にパーティーを組んだものだ。


「まあ、好きすぎて海外サーバーに乗り出したときは呆れたわ」

「流石に当時の僕も開いた口が塞がらなかった」

「………溜息」

「ワタシはワラッタよ」


300人もいたらやれると思ったのだろうか。

ギルドメンバー全員に言ったその宣言は。

ほとんど全員が反発した。

その上、最初にアジア圏のサーバーを目指したのは大失敗。

課金制の韓国サーバーにはいったときは阿鼻叫喚な有様だった。

そのころから人数は減りつつ、別の海外サーバーへ遠征。

日本サーバーの召喚獣のほとんどを確認を終えた頃には、初期メンバーぐらいしか残っていなかった。


「あのバカ気にしてもいないのに、泣きながら謝りやがって…」

「サモンさんには続けて欲しかったよ」

「………変なとこ真面目」

「そうだね…」

「デラルテ、演技」

「はっ、そ、ソウダネ」


初期メンバーまで減ったとき、サモンはギルドマスターを譲ってくれたハカセに泣きながら謝り続けた。

ハカセ自身、ただの友達の集まりのつもりでそこまで本気ではなかった。

だから、ハカセはサモンに別に気にしていないとその時告げた。

他のメンバーもまた一緒にプレイしょうと慰めて励ました。


数日が立つと、サモンはアカウントごといなくなっていた。


「あのとき、もっと話しておくべきだったかねえ…」

「僕たちも気が付けなかった。今それを言ってもどうしようもないよ」

「………ハカセもヒトがイイ」

「ホントホント」


当時の事はハカセたちには良い思い出もあり、仲のいいゲーム友達を失くす苦い思い出でもあった。


「あいつがこの世界来てたら、もっとすごいことしてたろうな」

「うん、まったく否定できない」

「………伊達に「リアルにサモンナイト」って言われてない」

「興奮ノ余りシニソウダ」



四人は昔の友達を思い、ミズキとヒビキが呼ぶまで語り合った。







今日の召喚獣


スケアクロウ(案山子)


条件 クラス・召喚術師 レベル・60以上 クエスト<畑の守護者>クリア



スキル一覧



<呪いの案山子>常時発動特技

スケアクロウを攻撃した者は、痛みを与えた分だけ自分に帰ってくるだろう。 物理・魔法問わず


<恐怖の案山子>挑発・状態異常特技

不気味に揺れ、奇声で叫ぶスケアクロウ。それを見て聞いたものは恐怖で動けず、スケアクロウしか見えなくなる。 状態異常<恐怖>付加


<身代わりの案山子>特殊特技

<スケープドール>の効果を召喚者のダメージを全て無効にし、無効にした分のダメージをスケアクロウは受ける。



スケアクロウは生まれ経緯が一切分からない召喚獣だ。

案山子に精霊が宿った、妖精の悪戯、農家の大地人が未練のあまりのり移った、ヘイアンで言われる付喪神だとも言われ真偽は定かではない。

案山子は害獣除けとして田畑に置かれていたが、動かないと害獣に学習されてからは、ただの置物となった。

役目を成し遂げない人形に価値などないのだろうと憐れんだ古来種が魔法をかけたなどという逸話もある。


ハカセのお気に入りの召喚獣。

法義族のハカセにとってスケアクロウの<身代わりの案山子>は生命線。

ボスが強力な技を繰り出すときにスケアクロウの真価は発揮される。

一部の召喚術師からは「案山子さま」や「案山子兄貴」などゴーレムに負けないほど尊敬されている。


 おうおう、俺が守る田畑に手を出すたァ、見上げたコソ泥だなァ、だがァ、この田吾作様が跳ねられるうちは大根一つ渡さねえぜエ!


                         ~スケアクロウの田吾作~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ