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第二話

自分の人生の転機はいつだったろうか。


山に、森に、自然に囲まれた故郷の田舎町で細々と父の下で牧場仕事をしていたあのころが懐かしく思う。



ワタシはこんなところで一生過ごす気なんてないッ!?



牧場仕事が嫌になって目標もなく、計画があったわけでもないで都会へと飛び出した馬鹿な自分。

他の才能なんてなく家畜の面倒を見る以外したことがない自分はすぐに途方に暮れた。

このままで終われないと意地でも田舎に帰ろうとせずに職を探した。

職を転々としていたそんなある日、冒険者ギルドで働く大地人にスカウトされた。

何でも、牧場で働いた経験を活かして冒険者ギルドの付き人として働いてほしいとのこと。


ワタシは承諾した。

結局のところ、自分は父に与えられたものに救われたのだ。

だが、自分が受けた冒険者の付き人の仕事は自分が考えていた以上の仕事だった。


今だかつて見たことない未知の生き物。


精霊、


幻獣、


死霊、


人造生物、


妖怪、


魔物



それらが住まう冒険者の館に自分は恐怖とそれ以上の興奮と感激があった。

決してあの田舎町で見ることが出来ない光景が目の前にあり、触れることが出来る。

冒険者ギルドの大地人から別のギルドホールの付き人の先輩から仕事を教わった。


言葉遣いを、礼儀を、振る舞いを、館の掃除も、何もかもを。


充実した毎日を過ごし、もうこれ以上の感動と驚きはないと思っていた。


あの日が、…冒険者様が言うあの《大災害》が来るまでは。




2話

「ああもうっ、我慢できるかあああああ、<従者召喚:ファントム>ッ」




「シェリアさん、そこの果物箱持ってきて」

「かしこまりました、ミズキ様」


アキバのギルド会館、その中にあるギルド《サモンッ!?》のギルドホールで、《森呪遣い》(ドルイド)のミズキは大地人であるシェリアとで荷物整理をしていた。


「ミズキでいいって、あと敬語もやめてよ」

「しかし…」

「む~、仕方ないか。ゆっくりと直して欲しいけど…仕事だもんね」

「…申し訳ありません」

「いいのいいの。つまりはプライベートではいいってことだから」

「…えっ、あの」


とことこ、とことこ、とことこ


「ムー、ムー」「ム~ム、ム~ム」「ッムー、ッム~ム」


「あ、マイちゃんありがとう」


横でせっせと荷物を運ぶ歩くキノコ《マイコニド》たちにミズキはお礼をいいながら楽しそうに見つめていた。

ミズキの様子に大地人であるシェリアは落ち着いた顔をし、内心は今だ慣れない驚きと戸惑い、動揺があった。


「かわいいなあ」

「…かわいいですか?」

「うん、見た目はキノコなんだけど、列を作ってあんな精一杯働いてくれてるとこが…ね?」

(ミズキさま、私にはその気持ちは理解できませんッ!!)


内心に追加で困惑も付けておきます。

シェリアの気持ちに気づかず、キノコであるマイコニドに癒されているミズキは一緒に果物を詰めた箱を運びギルドホールの廊下を歩く。

冒険者と大地人との感性がずれた会話をしながら歩く二人と三匹(?)の向かい合うように犬耳を生やした少年が駆け足でやってきた。


「ミズキさ~ん、博樹たちがフィールドゾーンから戻ってくるって」

「うん、わかったよ。それじゃあ、ヒビキくんも一緒に弟たちのために食事の用意しようか」

「素材アイテム用意するだけですけどね」


(もう、数日もするのに、ただ話して、笑っていることに私は…でも)


慣れない。

シェリアはここ数日での冒険者たちの変化に驚きしかなかった。


冒険者が自分たちと同じように話して笑う。


大地人であるシェリアにとって、いや、冒険者の世話を仕事としていたシェリアだからこそ衝撃的で恐怖的で…喜びがあった。



だれだよ、あんた?

…メイドさん。

あ、もしかして従者召喚のために雇ったギルドホールの特殊NPCだった人じゃ。

ハカセえええええ、メイドさんだよおおおおッ。

デラルテ、演技演技。



あの精霊を、妖怪を、幻獣を、人造生物たちを従えたあの遠くにいた方たちがより近くに感じていいたことに…。



きっと、私の人生の転機は今だろう。



見続けていたい。


聞き続けていたい。


彼らが作る冒険譚を。


もう顔を合わせて、話せるのだから…。



*************************************



「というわけで、俺たちサモンはススキノへ遠征することに決めました~パチパチ~」

「………」

「………」

「………」

「…おー」

「…カレア、やさしさが痛ひぜ」

「アハハハハ、ネエハカセ、うざい」

「ここぞというときに素に戻るなやデラルテッ!?」



リンゴを齧りながらハカセはギルドホールに戻ってくるまでに決めた方針と目標を二人に話した。

現状の生活改善。まず最初に食事から改善していこうと話し合った。


はあ、ハカセはいつもどうりとして、まあ突然言われてミズキさんもヒビキ君も戸惑うよね…。

話を聞いていた二人は黙り込んで、目を輝かせて………てえ?


「やった―ッ!!博樹大好き~」

「外だっ♪、外だっ♪」


うん、やっぱりこの二人はハカセの身内だ。

ゲームから現実になったこの世界で元の現実に帰る方法もわからず、死ぬこともないこの世界で、不安になるでもなく楽しもうとする。

彼らは現実世界に戻るのが嫌というわけではないだろう。

ただ、純粋に楽しみたいそういう性格で、僕はそれが羨ましい。


「落ち着け、落ち着け、つか本名で呼ぶな」

「………博樹」

「サア、ヒロキくん、フタリにシッカリ説明シヨウカ」

「お前ら、喧嘩売ってるよね?」

「ほら、ふざけてないで説明、二人には戦闘を覚えてもらうのと、ミズキさんに新しく契約クエストを受けてもらいたいんだ」


暗くならないだけいいことだけど、話が進まないほどのテンションとこのノリはゲームだった頃から変わっていない。


「契約クエストッ、な、なにの…」

「ミズキさんいいなあ」


うむ、森呪遣いの従者《フォレストベア》の派生召喚獣《ハニーベア》の契約クエスト。


《派生召喚獣》

召喚魔法の特徴として挙げるなら種類の膨大さが挙げられる。

確認されているだけでも軽く百種を超え、今だ新しい召喚生物が見つかるのだから恐ろしい。日本サーバーでこれなのだから海外も含めたら千種は軽いだろう。

その中で最もポピュラーな、ゲーム序盤から契約可能である僕たちの言い方なら《基本召喚獣》。

基本召喚獣は、攻撃、回復、支援とバリエーションが豊富な召喚士にとっての方針となるもの、ようはビルドの下地だ。


ハカセは《ゴーレム》《スライム》、従者と一緒に前に出ながら戦い、時にに離れて魔法攻撃、サブ職《錬金術師》と組み合わせて支援、物理耐久・万能型《人形遣いパペットマスター》。


カレアは《サラマンダー》、《ウンディーネ》、《ノーム》、《シルフ》、弱点属性を突き、妖術師に迫る魔法攻撃叩き込む魔法火力型《精霊術師エレメンタラー》。


デラルテは《カーバンクル》、《ユニコーン》、癒しと援護でパーティを支え、幻獣の背に乗りフィールドを駆ける回復・支援型《幻獣の主ビーストテイマー》。


そして僕は《スケルトン》、《ファントム》、物理攻撃特化の特技、敵に状態異常バッドステータスをまき散らす物理火力・攪乱型《死霊術師ネクロマンサー》。


派生召喚獣はこの基礎召喚獣の同系統からなる召喚モンスターだ。

森呪遣いのミズキさんの基本召喚獣は、《アルラウネ》、《グレイウルフ》、《フォレストベア》、《ワイルドボア》の四つ。

ハニーベアはフォレストベアの派生召喚獣で、フォレストベアになかった《はちみつの香り》の挑発技、自分や味方のHPと状態異常を回復する《ハニータッチ》。

今回契約する理由となった一定時間に素材アイテムが手に入ることが出来る《蜜蜂の巣だ~》の特技を持っている。

ちなみに、ハニーベアはフォレストベアを黄色くした見た目で、どう見てもあのハチミツ大好きのクマさんだ。制作には夢の国が好きな人でもいるのだろうか?

僕はミズキさんたち二人に今の説明とススキノと《実り豊かなトカチ農園》に行く際の注意することなどを説明していく。


「チクショウ、説明取られた」

プルプル、プルプル、プルプル

「ありがとな、ぷよ」


僕に説明を取られて、ハカセは体育座りしながらいじけていて、その頭の上でスライムが心配そうにハカセを慰めていた。うぜえ。

というか、僕が説明する間、みんな自由にしすぎじゃないかな。


「カレアさま、リンゴとブドウでございます」

「…ありがとう。…たんとお食べ」

「ウフフフ、コレがイイのかい?シッカリ味わうとイイネ」

キュイ? キュイッ、はぐはぐはぐ、キュイ~♪

モグモグ、ゴッキュン、モグモグモグモグ


カレアとデラルテはハツカネズミの《クリューラット》と額に紅玉を宿した《カーバンクル》をシェリアさんと一緒に餌付けしてるし、


ブドウを頬一杯溜めて二匹ともかわいいなあ。


「うぅぅ、ねむい~」

キョロキョロキョロ

「………(コク)?」



説明を聞いているミズキさんは小さな子熊フォレストベアを抱きしめながら眠たそうにウトウトしている。


…モコモコしていて暖かそう。


ミズキさんの横のヒビキくんはススキノへ遠征を楽しみにしているのはいいが犬耳をヒクヒクしながら尻尾を振らないですごい気になる。


「ああもうっ、我慢できるかあああああ、<従者召喚:ファントム>ッ」


「にぎゃああああああああああああああアアアアアッ!!」


「だああああ、カレア落ち着け、ほらミカンだぞ。朧、お前の従者はデフォルメスキン使ってないからコエ―んだよッ!?」


「それがいいんじゃないですか?」


「お化け、お化け無理無理無理無理」


「デラルテさま、お気を確かにッ、あんなのはただ影が薄い人間だと思えばいいのですッ!」


「ぐー、zzzz」


「早く、ススキノ行きたいなあ…」



ギルド《サモンッ!?》のギルドホールは外とは違い今日も騒がしかった。






今日の召喚獣


ハニーベア (蜂蜜森熊)


契約条件 クラス・森呪遣い レベル・30以上 クエスト《ハニーベアの冬眠》クリア 


スキル一覧


《はちみつの香り》挑発特技

ハチミツを食べ続けて体に染みついたその香りはありとあらゆる生き物を引き付ける。人造生物種・無効 一部アンデッド種・効果低 虫種・効果大


《ハニータッチ》HP・状態異常回復特技

ハニーベアのとっておきの滋養強壮はちみつ。これを舐めた者は体の底から活力溢れだすのを感じるだろう。


《蜜蜂の巣だ~》その他特技

ハニベアーは蜜蜂の巣を見つけると一目散に駆けつけ見つけてくる。主が気づかないほど素早く…。取得アイテム ハチミツ 蜂蜜壺 ロイヤルハニー(レア) 蜜蝋 ホーネットの針 他


《戦技召喚:ハニーベア》範囲HP・状態異常回復特技

とっておきの蜂蜜壺を投げてぶちまける特技 



ハニーベアはフォレストベアの亜種。

蜜蜂が豊富な森に生息しており、ハチミツを主食としていたフォレストベアが進化したものと思われている。

気性は温厚、陽気と穏やかなものであり、ハチミツを与えるものなら大抵のものに懐いてしまうほどで、フォレストベアより契約しやすい。

その性格から仲良くなった者を大事にして、もし危害を与えようとするものなら普段の温厚な気性は潜め、フォレストベアであったころの激しい野性を見せつけるだろう。



フォレストベアになかった挑発技とHP回復を覚え、前衛としてより活躍できるようになった。

また、生産系に嬉しい採取系特技もあり、手に付けたハチミツを舌で舐める愛らしい姿に人気がある契約モンスターの一つである。



 僕は君より先に死にたい。君が先にいなくなってもう一緒にハチミツを食べられない日々は死んでるのとどうちがうんだよ 

                  ~黒死姫の森の知恵ある蜂蜜森熊アウル~


参考元ネタ 小説家になろうから 大和の国の大地人 より



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