File1.導入
探偵とありますが恐らく探偵物!と言いづらいかもしれません。
そして投下速度は非常に遅いです。
俺はとある団地の端っこに居を構えるしがない警察あがりの探偵だ。
警官の仕事に嫌気がさして職を辞し早二年……。
昔憧れたシャーロック・ホームズは遠く、俺の脳は灰色でも無かった。
お約束のペット捜索、不倫調査、素行調査。
動物や人の背中を追う仕事。警察時代と何ら変わりはしない。
―――所詮、子供の頃の夢を叶えてもそんなものだった。
まぁ解っていた。
どこぞの身体は少年、頭は天才高校生の少年探偵みたく歩けば事件に当たる様な不幸体質でも無いわけで。
「はぁ。」
溜息をつき事務所の窓から団地を眺める。
また工事かとトラックや重機を見送る。
いつも思うのだ。
この団地には果てが無いのではないかと。工事はいつまで経っても終わらないのではないかと。
―――錯覚なのか妄想なのか。
駅前から長い長いエスカレーターが山の斜面を駆け上がり団地へ導く。
停電なんてことになったらゾッとする。
あの長い長いエスカレーターと同じ長さの階段を延々と登る羽目になる。
そんな微妙な立地にあるのが此処である。
とある鉄道会社が開発した団地群。
その団地群の端の小さなマンションの一室。そこが俺の住まい兼事務所である。
退職金と貯金を全額使い果たし手に入れた一国一城。
当然助手を雇う金など無く、個人経営であることは言うまでも無い。
「今日も客がこねぇ…。」
この時、俺は探偵業なんて辞めて田舎に戻るべきだったんだ。
あんな事件が起こる前に。
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