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ゆきだるま  作者: 梨奈
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*第4話*。:*~落としたもの~

「ところで千夏とさつきはどこいったの?」

箒をにぎりながら私が美奈子に話しかけた時

教室に2人が帰ってきた。

「体育委員会の集まりだよね千夏」

美奈子が言った。

「そうそう。夏休み明けはすぐに体育祭でしょ?だからそのうち合わせに呼ばれたの」

「さつきは分かるけど千夏も体育委員だったっけ」

「何よっうちが運動音痴だって言いたいの?真耶に言われたくないな~!」

「その言葉、そのまま千夏に返すから!」

…まぁ運動音痴なのは確かだけどね。



「お取り込み中、悪いんだけど。千夏!あんた仕事しなさいっ!応援団について真耶達に聞くのが先でしょ!」

さつきはちりとりを片手に千夏を注意した。



「応援団?真耶を入れるの?」

箒を置いて手鏡を持って前髪を整えている美奈子がさつきに聞いた。

「中学生のころ3年間連続で、応援団を経験したんでしょ?真耶。今さっきクラスの男子に応援団員にならないかって聞いたけどいまいち反応が薄くてさ」

美奈子が置いていた箒を使い、持っていたちりとりでゴミをはわき取るさつき。

千夏がさつきに続いて話す。

「んで!真耶ならやってくれるかな~ってさつきと話してたんだけど。」


「やだよ~。夏休みつぶれるでしょ?練習とかで!」

「そう言わずにさ~!あんパンおごるから~」

「物でつらないでよ千夏!」「さつきはつれたよ」

「つられてないよ!!でたらめを真顔で言うなっ!」


掃除終了の鐘が鳴った。







放課後、応援団への入団希望者お募集の連絡をしたさつきは、みんなの名簿を黒板横の連絡板に貼り付けた。



「名簿に丸つけようか?真耶」

「そんな勝手なことしたら美奈子の名前にも丸つけるからね」





帰りの廊下で隣の教室からあの人が出てきた。

一瞬ドキッとしてしまった。


本当に惚れやすい私。

まだあの人の事なんか何も分かってないのに。

ちょっと親切にされただけなのに。





美奈子は私をみてニヤリとしてきた。

さつきは窓の外を眺めながら歩いている。



クラスの入口で友人と話しているあの人は、こちらに気づいてニコッとしてきた。


私はまたドキッとした。





…あ…そういえば

お礼言ってないや…



隣のクラスを通り過ぎ、階段へと向かう時にふと思った。


「ごめん!さつき美奈子。先に玄関で待っててくれない?」


「え!告白!?」

「違うよ美奈子!」

「ここで待ってるから行っておいでよ」

「ありがとう。さつき」




入口で友人と立ち話をしているあの人を呼んだ。

「勇司君!」

「あ!仲田さんじゃん。どうしたの?」

「あの時のお礼言ってなかったから…」

「お礼?いいって!いいって!偶然俺が拾って届けただけだし!」


見た目チャラいのに内面は思いやりがあるんだなぁって思った。



まだ恋愛感情は強くないから話せたものの、勇司君の顔は見れなかった。


「ありがとう」


私はそう言い残してその場を去った。




勇司君とその友人の話が再び始まった。

「な!勇司応援団してくれよぉ!」

「嫌だって!」







この日も夕日がキレイだった。








この日の下校途中、野崎良弘君が彼女と帰っているところを見た。



「最低」







翌日、紀香(のりか)は元気がなかった。


数学の時間、クラスは半分ずつに別れて、消えた人数分、勇司君達のクラスが教室に入ってきた。


美奈子は、誰もいなくなった私の後ろの席についた。

数学の間、席は自由だった。


「…紀香(のりか)も昨日見たんだって。良弘の彼女」美奈子が静かに言った。




紀香(のりか)の隣の席に野崎良弘が座る。

紀香は黙ってうつむいていた。






勇司君も教室に入ってきた。

…目が合った。



私は思わず目をそらした。…まだそんなに好きじゃないのに…



すると、隣のクラスへと行った雅也君の席に、誰かが座った。…勇司君だ。




勇司君は近くにいる友人と話をしていた。



勇司君が笑った。



見た目から想像もできなかった、幼くてさわやかな笑顔だった。

私はちょっとみとれた。






数学の時間は嫌いだけど、隣が勇司の時は嬉しかった。

私が教科書を忘れた時、笑顔で「一緒にみる?」

とか言って机を引っ付けてくれた勇司君。


ファンクラブの女子生徒は気にくわない表情だったけど、私は遠慮なく見せてもらった。

本当に嬉しかった。

数学が始まる前とかは

「今日も隣に着ますように」とかお願いしてみたりしていた。



そのためなのか、美奈子は私の隣の席に座ろうとはしなかった。






ある日の放課後、美奈子と歩いていたら廊下で勇司君とぶつかってしまった。


お互いにわざとじゃなかったけど、ものすごい勢いで謝りあった。

それがおかしかくて、2人とも笑った。

美奈子は暖かく見守ってた。



その時、足元に青色のキレイなペンが落ちていることに気がついた。


「これ…」

拾い上げてみると

「あ!それ俺のだよ。さっきぶつかって落ちたのかもな」

と言って私の持っているペンを受け取った勇司君。


「それって万年筆だよね」

「うん。そう」

「キレイだね」

「死んだ婆ちゃんの片見」


あ…何か余計なこと言わせちゃった…


「ごめんね…」

「ははっなんで真耶が謝るの?」

「だって…」

すると、階段のある方から「勇司~!早く来いよ~!」と勇司君を呼ぶ声が。


「んじゃ!またなっ」

そう言って大きな手が私の頭の上にポンっと軽くのって離れていった…


一瞬のことだったから何が起きたか分からなかった。

でもすぐに嬉しさが心臓の辺りから全身に広がるように混みあがってきた!




少し離れていた美奈子がかけよってきて

「良かったねっ!」

と、言って一緒に喜んでくれた。




私のクラスの教室から廊下をのぞく友人がいて

「ヒュー!ヒューっ!!」

と冷やかしていた。



「何々!?いつから好きになってたのよ真耶!」

「えっ好きじゃないよ!」

「嘘つくな~っ!!」


みんな教室に戻った私を囲んで口々に問いかけてきた。




私は嬉しさのあまり

ほとんど耳に入ってなかった。






「いいなぁ~真耶。好きな人と話せて」

そう声に出したのは紀香だった。


ちょっと悪い気もしたけど「でしょっ!」

って笑って返した。


紀香の傷を広げるようなことは避けたかったから。








その日、放課後いたメンバーみんなで喫茶店に行った。美奈子の行き着けの場所らしい。クラス一緒の友人8人、初めて揃ってプリクラも撮った。



その帰り道だった。



美奈子がふと立ち止まる。

美奈子の後ろをよそ見しながら歩いていた千夏が美奈子にぶつかった。


その時美奈子の持っていた財布が足元に落ちた。



「どうしたの?美奈子」

美奈子は一点を見つめたまま動こうとしなかった。


みんな美奈子の視線の先をみた。

美奈子をはじめ、私たちは目の前にあるものが信じられなかった。












そこには

アイスを美味しそうに食べる女の子と一緒にいる雅也の姿があった。

雅也は美奈子の彼氏・・・






私達は言葉を失った。

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