*第12話*。:*~幸せ~
私は祭りの会場から少し離れた、海を見渡せる場所へと連れて来られた。
「ここが花火を見るには最高の場所。今は俺らしかいないけど30分もすれば人が集まり出すよ」
「へ、へぇ…!そうなんだ~」
私はこの緊張をどうやって隠そうかと考えた。
それと同時に何か言わないと!と焦っていた。
話題は見つからないまま、話をしてみようと思って彼に目を向けた。
「あ…あの!」
次の瞬間、何かが私の口をさえぎった。
唇が熱い。
彼がゆっくりと顔をあげて私に言った。
「これで俺のモノな」
私は何をされたの?
死にそうなぐらい緊張していた私を蘇らせた。
死んだ白雪姫が王子様のあれのおかげで蘇るみたい。
…ん?ちょっと違うかな。
私は何がおきたのか、訳が分からなかった。
…ううん。わかってた。
でも信じられなかった。
本命に手を引かれ
本命にキスをされ
本命に告白された。
これって信じられる?
「世間なら、思いを伝えてからキスするんだろうけど。…許可いらねぇだろ?」
「…え?」
「お前、俺のこと好きなんだろ?真耶」
「嫌いだよ!」
「はあ!?」
「嘘だよ!」
私は嬉しくて、でもちょっぴり恥ずかしくなったけど、彼を思いっきり抱きしめて言ってあげた。
「だあいすきっ!!」
すると花火が打ち上げられた。
「これ、違う祭りの花火だ」勇司が言った。
「え?どうゆうこと?」
「そのままの意味だよ」
彼は、言うが早いか私をぎゅうっと抱きしめた。
暗闇の中、花火の光が私達を照らす。
しかし花火は10発程度で終わった。
「なんだしょぼい花火だな」
暗闇のなか勇司の言葉が響く。
「もうそろそろ、こっちの祭りの花火も打ち上がるはずだよ」
私は抱きしめられたまま言った。
すると暗闇の中から聞いたことのある声が3人分聞こえてきた。
「あれ?ちょっと…カップルがいるよ」
「だれだれ?」
「勇司様に似てない?」
人が続々と集まってきた。
すると花火が、さっきより3倍は大きな花火が打ち上がった。
と同時に
「仲田さん!?」
さっきの3人組がこちらに気付いた。
いつだったか、付き合うなら許可が必要だとか可笑しなことを言っていた女子生徒だった。
「こんばんは~」
私はちょっと嫌みたらしく言った。
ごめんね。これが私の性格なのかも。
今の私はきっと白雪姫。黒雪姫かな。
魔女を見下すの。
3人は『信じられない』とばかりに私を睨みつけた。
けど私は気にもならなかった。
だって私は宇宙一幸せなんだもの!
花火はどんどん、次から次ぎへと、美しく咲いては消えて言った。
…花火は
まるで未来の私を祝福するかのようだった。
花火は約30分程打ち上がって、迫力のあるフィナーレは感動したし、みんなが歓声をあげた。
当たりが真っ暗になり、人が少なくなり始めた。
ハートマークの花火をケータイに収められて喜んでいる私に勇司が
「花火よりも君は綺麗だ。なん~てロマンチックなことは言わない。」
って言って
え?って私が顔をあげた瞬間におでこに[ちゅ]ってしてくれた。
それから「ぎゅ」ってされちゃった。
私は勇司の彼女になった。好きになって1ヶ月ぐらいでこんなに上手くいくなんて。
まるで小説のヒロインみたい。
この時は
ずーっとずーっと幸せが続くって思ってた。
だって本当に幸せに感じたんだもの。
だからこの幸せは永遠なんだって思った。
幸せって一つ無くなると辛くなる。
幸せって一歩間違えただけで簡単に辛いものになる。
幸せって天国にいるようで実は地獄だったりするんだね。
私はそれを経験した人達の内の一人。
この時はまだ
そんなこと思いもしなかった。
祭りが終わった後
さっきの短い出来事が夢のようでドキドキして、将来のことを考えてウキウキして、家庭を持った夢を見てワクワクした。
次の日
美奈子、さつき、千夏、紀香にメールで報告した。
その日の昼、
みんなが私の家に来て祝福してくれた。
雪見だいふく美味しかった。
紀香と美奈子は本当に祝福してくれて、
千夏は一緒に喜んでくれた。
みんなが帰るころ、さつきは私に一言こう言った。
「幸せになりなよ!」
さつきは笑顔で言ってくれた。
ありがとうさつき。
私
幸せな彼女になるからね!