*第11話*。:*~予想通り~
夏休み残り3日。
この日は夏祭りがあった。私は赤色の着物を着て、美奈子はピンクの着物を着て千夏とさつきのいる、待ち合わせ場所まで行った。
祭りの会場は人が混んでいて、どこに何があるのかわからない。
手当たり次第に並んで綿飴とりんごあめを手に入れた。
私達はそのまま、屋台から少し離れたところに腰掛けた。
「うち、たこ焼き食いたい!ちょっと買いに行こうよ。さつき」
「1人でいきなよ。千夏」
私もたこ焼きが食べたい。
「千夏!じゃあ私と行かない?たこ焼き食べたい!」
「まぢで!?んじゃ行こう真耶!」
人が混雑している中を千夏はスイスイ進んで行く。
私は千夏の黄色いシャツをつまんで、どうにかたこ焼き屋に並ぶことが出来た。
夏だから、たこ焼き屋は客が少ないなんて大間違い。
「こりゃ長いわ」
千夏がため息をついていると可愛らしい女の子が千夏に話かけた。
「千夏じゃん!ひっさしぶり~!」
「おお!樹理りんじゃ~ん!戻ってきてたの!?」
「明日帰るけどね!」
樹理と呼ばれたこの子は肌が本当に真っ白で目がまんまるしていて、綺麗にまとめられた髪は艶やかで、どこかの国のお姫様のようだった。
…この子がライバルだったら絶対に叶わないなぁ。
千夏と楽しそうに話をしているこの子を見て私は思った。
「あの子、野崎良弘の妹だよ。中2」
樹理ちゃんがいなくなってから千夏が教えてくれた。
「彼氏は?」
「いるよ!なんと私の弟!今は学校違うから遠距離?みたいな~?…でもそう遠くないから遠距離でもないか~!」
千夏の話を聞いてちょっぴり安心した。
その時だった
勇司らしい人が髪の長い女の人と歩いているのが見えた。
…でも一瞬だったし、後ろ姿だったから…
たこ焼きを無事に買って、美奈子達のところへ行くと紀香がいた。
さつきの隣で泣いていた。
「彼女と一緒にいるところを間近で見たんだって…」
美奈子がワケを話してくれた。
紀香は、彼女がいる良弘のことが好き。
…それなのに諦めきれない自分が嫌になって泣いたらしい。
私はそんな紀香の頭を撫でてこう言った。
「人を好きになることは良いことだよ。大切なのはその後どう行動するかってこと。紀香は優しいね。好きな人の幸せを大事に見守って上げたんだ。大丈夫。紀香はきっと幸せになれる」
人事のように思われたって良い。これが私の考えだから。
それなのに紀香は私に抱きついて
「ありがとう…!」
と言ってくれた。
大丈夫。絶対に幸せになれるよ。
私は本当にそう思った。
「んで。しんみりしたこの場で黙々と、たこ焼き食ってる千夏さん。ちょっと頂戴」
さつきは千夏のたこ焼きを食べた。
私もみんなにたこ焼きを分けて食べた。
熱くて、食べるのが大変だったけど美味しかった。
「あ!私そろそろ雅也のところに行くね!」
美奈子が言った。
「ここから正反対のところに行くんでしょ?送ってくよ。真耶とさつきが」
「勝手に決めないでよ千夏!!」
みんなで笑った。
「来年はみんなで花火みようね」
そう笑顔で美奈子が話した。
さつきと私は美奈子を祭りの入口まで送った。
雅也が美奈子を見て
「可愛い…!」
と、抱きしめる。
私とさつきは静かにその場を離れた。
屋台の中を通って千夏と紀香のいる場所へ向かっていると
「…あれ?さつき?」
見失ってしまった…。
本当にいきなり、消えたようにいなくなった!
「さつき!?さつき~!」
「真耶?」
私を呼んだのはさつきではなく
…勇司だった。
周りに女の人はいなかった。
「なんだ?迷子かぁ?」
「え?あ。さつき見てない?いきなり居なくなっちゃって…」
その時
「ゆう君!焼き鳥買ってきたよ~!」
と女性の声がした。
いかにも年上の、色っぽい女の人だった。
しかもロングヘアー。
やっぱり付き合ってたんだ…!
なれた足取りで10㎝ほどあるピンヒールを履いて近づいてくる女の人に勇司は言った。
「母ちゃん、今いいところ!」
…え?
……お母さん?!
……若っ!!
「あら?…あらら!…んまぁ~!ごめんなさいねぇ~!」
そう言って買ってきた焼き鳥を勇司に渡して、その場を離れていった。
「一緒に探そうか」
「え?」
「えって、さつきだよ」
「あ!うん…でもいいの?」「親なら気にすんなって!あいつ人で食べ歩くだろうから」
それから一緒に歩くことになったからもう私の頭の中はショート寸前。
心臓はいまにも大爆発しそう。
ずっとこうしていたいけど、さつきを探さないと…!みんな心配してないかな?
「どこかでみんな集まってないの?」
「あ…集まってる場所も分かんないの…。私、こんなに大きな祭り始めてだから、道もよく分かんないの」
「メールしてみたら?」
あ…。そっか。
って思った。
私はさつきにすぐにメールした。
そんな私の様子を見て勇司は私に火をつけた。
あ。火って言葉ね。本物じゃないよ?
なんて言ってくれたと思う?
「可愛いな」
私はメールの送信ボタンと間違えて、クリアボタンを押してしまった。
「え?ええ??」
「あれ?消したの?んじゃ俺が変わりにうつからケータイ貸して」
勇司は私のケータイを取り上げて何かをうって送信した。
するとさつきからの返信がきた。
「何?なんてきたの?」
勇司は笑顔で私にケータイ画面をみせた。
『達者でな~』
と書いてある。
「…え!なにこれ!」
「真耶との2人っきりを許可してくれた。さ、おいで真耶」
私の右手を握って屋台の道を進む彼。
彼に連れられながら私は、いきなりの展開で何がなんだか解らなかった。
…でも…正直に言うと
予想はついていた。
そして予想通りに事は進んだ。