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ゆきだるま  作者: 梨奈
12/17

*第11話*。:*~予想通り~


夏休み残り3日。


この日は夏祭りがあった。私は赤色の着物を着て、美奈子はピンクの着物を着て千夏とさつきのいる、待ち合わせ場所まで行った。



祭りの会場は人が混んでいて、どこに何があるのかわからない。


手当たり次第に並んで綿飴とりんごあめを手に入れた。



私達はそのまま、屋台から少し離れたところに腰掛けた。


「うち、たこ焼き食いたい!ちょっと買いに行こうよ。さつき」

「1人でいきなよ。千夏」



私もたこ焼きが食べたい。


「千夏!じゃあ私と行かない?たこ焼き食べたい!」

「まぢで!?んじゃ行こう真耶!」




人が混雑している中を千夏はスイスイ進んで行く。

私は千夏の黄色いシャツをつまんで、どうにかたこ焼き屋に並ぶことが出来た。



夏だから、たこ焼き屋は客が少ないなんて大間違い。

「こりゃ長いわ」

千夏がため息をついていると可愛らしい女の子が千夏に話かけた。

「千夏じゃん!ひっさしぶり~!」

「おお!樹理(じゅり)りんじゃ~ん!戻ってきてたの!?」

「明日帰るけどね!」



樹理(じゅり)と呼ばれたこの子は肌が本当に真っ白で目がまんまるしていて、綺麗にまとめられた髪は艶やかで、どこかの国のお姫様のようだった。



…この子がライバルだったら絶対に叶わないなぁ。



千夏と楽しそうに話をしているこの子を見て私は思った。





「あの子、野崎良弘の妹だよ。中2」

樹理(じゅり)ちゃんがいなくなってから千夏が教えてくれた。

「彼氏は?」

「いるよ!なんと私の弟!今は学校違うから遠距離?みたいな~?…でもそう遠くないから遠距離でもないか~!」



千夏の話を聞いてちょっぴり安心した。





その時だった

勇司らしい人が髪の長い女の人と歩いているのが見えた。

…でも一瞬だったし、後ろ姿だったから…




たこ焼きを無事に買って、美奈子達のところへ行くと紀香(のりか)がいた。

さつきの隣で泣いていた。


「彼女と一緒にいるところを間近で見たんだって…」

美奈子がワケを話してくれた。



紀香は、彼女がいる良弘のことが好き。

…それなのに諦めきれない自分が嫌になって泣いたらしい。




私はそんな紀香の頭を撫でてこう言った。


「人を好きになることは良いことだよ。大切なのはその後どう行動するかってこと。紀香は優しいね。好きな人の幸せを大事に見守って上げたんだ。大丈夫。紀香はきっと幸せになれる」


人事(ひとごと)のように思われたって良い。これが私の考えだから。


それなのに紀香(のりか)は私に抱きついて

「ありがとう…!」

と言ってくれた。



大丈夫。絶対に幸せになれるよ。

私は本当にそう思った。


「んで。しんみりしたこの場で黙々と、たこ焼き食ってる千夏さん。ちょっと頂戴(ちょうだい)

さつきは千夏のたこ焼きを食べた。

私もみんなにたこ焼きを分けて食べた。


熱くて、食べるのが大変だったけど美味しかった。





「あ!私そろそろ雅也のところに行くね!」

美奈子が言った。

「ここから正反対のところに行くんでしょ?送ってくよ。真耶とさつきが」

「勝手に決めないでよ千夏!!」

みんなで笑った。



「来年はみんなで花火みようね」

そう笑顔で美奈子が話した。




さつきと私は美奈子を祭りの入口まで送った。

雅也が美奈子を見て

「可愛い…!」

と、抱きしめる。



私とさつきは静かにその場を離れた。


屋台の中を通って千夏と紀香のいる場所へ向かっていると


「…あれ?さつき?」



見失ってしまった…。



本当にいきなり、消えたようにいなくなった!




「さつき!?さつき~!」

「真耶?」



私を呼んだのはさつきではなく


…勇司だった。

周りに女の人はいなかった。


「なんだ?迷子かぁ?」

「え?あ。さつき見てない?いきなり居なくなっちゃって…」


その時

「ゆう君!焼き鳥買ってきたよ~!」

と女性の声がした。



いかにも年上の、色っぽい女の人だった。

しかもロングヘアー。



やっぱり付き合ってたんだ…!



なれた足取りで10㎝ほどあるピンヒールを履いて近づいてくる女の人に勇司は言った。







「母ちゃん、今いいところ!」



…え?

……お母さん?!



……若っ!!


「あら?…あらら!…んまぁ~!ごめんなさいねぇ~!」

そう言って買ってきた焼き鳥を勇司に渡して、その場を離れていった。





「一緒に探そうか」

「え?」

「えって、さつきだよ」

「あ!うん…でもいいの?」「親なら気にすんなって!あいつ人で食べ歩くだろうから」





それから一緒に歩くことになったからもう私の頭の中はショート寸前。

心臓はいまにも大爆発しそう。



ずっとこうしていたいけど、さつきを探さないと…!みんな心配してないかな?


「どこかでみんな集まってないの?」

「あ…集まってる場所も分かんないの…。私、こんなに大きな祭り始めてだから、道もよく分かんないの」

「メールしてみたら?」



あ…。そっか。



って思った。

私はさつきにすぐにメールした。


そんな私の様子を見て勇司は私に火をつけた。


あ。火って言葉ね。本物じゃないよ?




なんて言ってくれたと思う?




「可愛いな」



私はメールの送信ボタンと間違えて、クリアボタンを押してしまった。


「え?ええ??」

「あれ?消したの?んじゃ俺が変わりにうつからケータイ貸して」


勇司は私のケータイを取り上げて何かをうって送信した。



するとさつきからの返信がきた。


「何?なんてきたの?」


勇司は笑顔で私にケータイ画面をみせた。


『達者でな~』

と書いてある。


「…え!なにこれ!」

「真耶との2人っきりを許可してくれた。さ、おいで真耶」


私の右手を握って屋台の道を進む彼。

彼に連れられながら私は、いきなりの展開で何がなんだか解らなかった。





…でも…正直に言うと

予想はついていた。

そして予想通りに事は進んだ。















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