キャラクタの誕生を考える。
今回のテーマはキャラクタ制作の過程について。
例『スクランブルワールド』
『星降る森』
この項は前項のキャラクタ設定と似ているが、少々違う。キャラクタ設定はキャラクタの設定だが、この項は書き手の中でのキャラの誕生、物語への投入についてだ。
キャラクタ制作をする時、まずは物語の中心に来る「主人公」「ヒロイン」「仲間」「敵方」など、要するに主要メンバーを作る。その次に、主要メンバーを取り巻く人間関係を構成していく。これらのキャラクタが誕生する場面で、ある程度のパターンがある。今回はそのお話。
【このキャラクタは何型?】
何型? とは言っても、別に血液型ではない。ここで言う型というのは、
・設定先行型
・名前先行型
・物語先行型
・偶発的誕生型
という『パターン』のことだ。ぼくはこのパターンしか把握していないが、この後の記述を読んだのち、別のパターンがあるなら教えてほしい。
【設定先行型】
主に主要メンバーたち。
つまり、「こういうキャラクタでいこう」「こういう性格のキャラクタでいこう」「こういう能力者をだそう」という、目的があって制作されるキャラクタたちだ。この手のキャラクタに与えられる名前は、性格や能力など、設定を加味した物になることが多い。もしくは、実在する名前を用いた当たり障りのないもの。
とりあえず、このようなキャラクタ制作は失敗が少ない。設定がこりすぎて、詰め込みすぎない限り、物語において最も自然な立ち位置になるはずだ。安定したキャラクタとなる。
リーゼ・ブリュスタン:『スクランブルワールド』ヒロイン。吸血鬼でメインヒロイン、同年代の外見で実年齢は四ケタ(成長が遅いという設定にしている。つまり精神年齢は外見年齢と同程度)、血液を用いた物質創造能力を持つ。
という設定から誕生し、リーゼ・ブリュスタンと言う名前は「リゼ」という愛称になるようにつけた。ぼくが小説中で最も動かしやすいキャラクタの一人。性格付けもあまり奇天烈、ツンデレなどの主張の強い設定にはしていないため、落ち着きがあり、物語中でも浮くことはほとんどない。
以前『スクランブルワールド』の人気投票を行った際、このキャラクタに対して次のような感想をいただいた。
『まあとにかく、雰囲気が好きです。(中略)他とは違う、不思議な空気を纏ってるというか。不思議ちゃんというわけでもないですが。何なのかよく分からないけど、魅力を感じます。』
ライトノベルでよくある(とりわけメインヒロイン)性格付け、『ツンデレ』『高飛車』などを用いずとも、このような感想をいただけたのは、メインヒロインであることにおいては大成功である。
テト:『星降る森』主人公の同居人である、饒舌なお姉さん。『スクランブルワールド』に登場する「黒木芽衣子」の前身的キャラクタ。設定としては普段から思わせぶりに、多くしゃべることで逆にわからなくさせるように。思慮深く、心配りのできる女性という、言ってしまえば人鳥好みの女性に仕上げた。とはいえ、あれは少ししゃべり過ぎだが。
閑話休題。
テトという名前は、『星降る森』の世界における「三文字以上の名前は珍しい」という設定によって、二文字となったという経緯を除けば、あまり考えられていない名前。別に「メイ」でも「リン」でも良かったわけだ。
名前はキャラクタを作る上ではとても重要だが、『星降る森』のキャラクタは『設定先行型』と『物語先行型』しかおらず、名前にはあまり気を配られていない。当時、もっと人鳥に余裕があれば名前も考え込まれていたはずである。
『スクランブルワールド』に登場する「人間」ではない人型のキャラクタは、その設定から名前をつけられていることが多い。
【名前先行型】
設定先行型を読んでしまえば、これがどんな型か、もう予想できているだろうと思う。
つまり、設定よりも先に名前が浮かんだキャラクタたちのことだ。この手のキャラクタの特徴は、『名前に合わせたキャラクタ設定がなされる』『名前にテーマがあり、それによってつけられた』というものがあげられる。もしかしたら、物語に登場する必要がないキャラクタであるものもいるかもしれない。
名前先行型のキャラクタはその他の型のキャラクタよりも名前が良くできることが多いと思う。なぜなら、名前から「閃いて」キャラクタが設定されるからだ。考えてつけられた名前より、ひらめきでつけた名前の方がよいというのは往々にして良くあることである。
灰谷琴音:「スクランブルワールド」に登場するドラゴンの少女。ドラゴンとしての名前は「虚竜のハイネ」である。このキャラクタの名前を考える時、与えられていた設定はこれだけだ。ドラゴンであるが、名前しか与えられていない状態である。
このキャラクタの名前を付けるときには『テーマ』があった。そのテーマというのが『ハイネ』という名前を、語順を変えずに名前に組み込むこと。つまり、人としての名前で、いくつかの文字を抜けば、『ハイネ』と読めるようにしようということだ。
結局、名字の「灰=はい」と名前の「音=ね」で「はいね=ハイネ」となった。
設定先行型の方で『スクランブルワールド』に登場する云々と書いていたのに、早速、例外が登場してしまった。
【物語先行型】
この型は少々特別である。というのも、元々物語に登場する予定はなかったが、物語を展開する上で『必要にかられて』登場するキャラクタ群だからである。
より迫力ある展開を。
より深みを。
より謎を。
といった、物語に魅力を与える『必要』や、
物語の中だるみを防ぐ。
こういうキャラクタが登場するのが自然だ。
など、作者の意識や合理性での『必要』など、書き手によって考えることは色々あるだろう。
リンクス:『スクランブルワールド2』に登場する少女。このキャラクタは物語の必要に迫られて登場したキャラクタである。前作での負―物語の完成度ではなく、物語の要素としての―をなくすために、リンクスは登場した。元々は別の魔道具に登場してもらう予定だったのだが、道具にしてしまうと中だるみが起きそうで怖かった。そういう側面もあって、人物である彼女に登場してもらったわけだ。
ドズ:『星降る森』に名前のみで登場する人物。魔法が存在する世界であり、魔法が使えない主人公と親友が魔法を使えるようになるためには、やはり誰かの教えが必要だった。しかし、実際にその場面を書くと物語が遅延してしまうため、名前だけの登場。
教えが必要だということで物語に登場したため、そこに深い設定はない。極論、別に先にあげた「テト」でもその役目はこなせたのだ。しかしながら、あえてこのキャラクタを登場させた。
それは「テト」に謎めいた印象を与えたかったからである。
その意味でも、ドズは必要だった。
【偶発的誕生型】
物語的にも、必要性も特になく登場するキャラクタ群。
つまりはイレギュラー。
気付けばそこにいた、というやつである。この手のキャラクタは読者に違和感を与える結果に陥りやすく、書き手も違和感を覚えることがある。できるだけ避けたい。
ただ、名前先行型と同じく、設定や名前から入るよりも良いキャラになることもあって始末に悪い。そういうときは割り切って投入しよう。
アグゥ&ドギィ:『スクランブルワールド2』に登場する、リゼの使い魔。書いている最中は全くこのキャラクタのことなんて考えていなかったのだが、なぜか登場し、結局、その話のプロローグも書き変えるという事態に陥った。また、このキャラクタの登場によって、タイトルすらも微修正された。
『このキャラクタを出すためにこの話を書いたのですか?』という指摘をいただいたが、逆である。このキャラクタが登場したから、この流れになったのだ。
自分の作ったキャラクタに振り回された悪い例である。
否、勝手に現れたのか。
どちらにして、あまり良いとは言えない。
この輩が現れたら、よく見極め、登場させ続けるか退場願うかを早い段階で決めよう。
キャラクタ制作の型をいくつか知っておくことで、キャラクタ制作の幅も広がるはずである。設定先行型に偏りがあるなら名前先行型も作ってみるなど、色々挑戦してみよう。