物語を考える。
今回はストーリーのあれこれについて。
例
『視野2メートルの想い』
『薄桃色の空』
ぼくたちが書いているのは、小説である。当たり前のことである。
小説、それもここで挙げているライトノベルとなれば、「物語」がそこには存在する。当たり前である。
しかしながら、この当たり前のことがとても重要であり、小説――とりわけ、ライトノベルには重要である。なぜなら、ライトノベルは明確な『訴え』や『願望』があることが少ないからだ。社会に対する批判・揶揄をするようなものではない。
ならば、ライトノベルで最も読み説かなければいけないのは、その『物語性』であるだろう。
そして魅力を発さなければいけないのは、キャラクタである。
今回は物語の構築について。
【ストーリーの原型が浮かんだ時】
ストーリーが頭に浮かぶ時。それは人それぞれだろう。
・静かな時間を過ごしている時。
・授業や会議中、本題に対して上の空な頭の中で。
・寝る前、風呂に入っている時。
・そもそもストーリーを考えている時。
どれが良いというものはない。大切なのは、思い浮かんだストーリーを即座に文章化しないほうがよいということだ。
プロットを構築するかどうかは、人によって異なるだろう。だから、人鳥が言いたいのは「プロットを練ってから書き出せ」ということではない。
そのストーリーを文章化、そして完結させることができるかを考える必要がある、ということだ。鉄は熱いうちに打たなければならないし、物語もそうであるのだが、冷静さを欠いた、勢いと思い付きだけのものでは作者すらその物語についていくことができなくなってしまう。
はやく書き出したくて仕方ない時、書きたくてうずうずしている時は、少なくともエンディングの風景だけでも思い浮かべるようにしよう。そうすれば、物語の収束点が見えているので、無意味な迷走はなくなる。もちろん、結末が変化してしまうこともあるだろうが、そこは問題ではない。
大切なのは書き手が物語に流されるのではなく、物語を構築することである。
もしそれらをきちんと行った上で執筆を開始した場合でも、執筆を頓挫してしまう場合がある。ぼくもある。これはモチベーションが維持できないという甘ったれた理由に起因している。
こういう記事を書いている人間としてはあるまじき状態ではある。だが反面教師とし、諸兄らにはモチベーションを維持しつつ、物語を構築していってもらいたいと思う。
【物語に完全なオリジナルはあり得ない】
あらゆる誤解を恐れずにこのタイトルにした。誤解を恐れていては、こんなもの(『ライトノベルを書く。』)など書けない。言いたいことはたくさんあるだろうし、ブラウザバックを今にも押そうとしている人がいるかもしれないが、ひとまず我慢して読んでほしい。それからでも判断は遅くないはずだ。
これは明白なことだ。むしろ、『何を今さら』と言われるようなタイトルなのである。
なぜか。それはこの言葉に集約される。
『王道』
つまり、物語にはそれぞれ『王道』があるということだ。ぼくらが書いている小説群はその派生の中にあって、完全に自分が構築したものであっても、必ず類似点はあるし、影響を受けた作品が必ず存在する。
これを逆手に取る、否、誰もが無意識に行っていることを能動的に行ってみないか、というのが本項の主張である。
【物語を構築する】
王道はそのジャンルの基本中の基本。それをどうアレンジし、どのように発展させ、どのように展開するか、またはどのように基本を裏切るか(邪道)で物語に変化が起きて、一つの小説として世に出る。
ここで少し、人鳥の小説群から一部を紹介する。
『薄桃色の空』(アレンジ失敗例)
これは人鳥が連載した恋愛小説で、高校二年の主人公と中学二年のヒロインとの、友達以上恋人未満な恋愛を描いたもの。一人称小説で、「主人公」→「ヒロイン」→「主人公」という視点で展開する。
その内容は恋愛シミュレーションゲーム(いわゆるギャルゲー)などで見られる構成で、オリジナリティという面からみれば全くない。
オリジナリティというか、「恋愛もの」にぼくが付加した設定が、
・恋人同士にはなるが、すぐに関係は終わる。
・初めてあった時からすでに「友達以上の関係」である
というものだ。
しかし、この設定もあまりオリジナリティはない。前者はいわずもがな、後者も『他人のようには思えない』などの表現で表わされている場合も多々あるからだ。
そして後者は読者に対し『不自然さ』を感じさせる恐れもある。
事実、次のような感想をいただいている。
『「わたし……もうすぐ、この町を出なくちゃいけないんだ」
それは見知らぬ女の子がぼくに言った最初の言葉だった。
そして、始まりの言葉になった。』(『薄桃色の空』ぼくのお話―序幕より)
という冒頭に対し、
『見知らぬ少女がどうしてそんなことを?」という疑問と一緒に「普通は言わない。おかしいだろ」と思いました。正直、駆け出しとしては微妙でした。』
とのこと。この感想は、この冒頭と次の一話を読んだ時点での感想なので、最後まで読んでいただいたてどうしてそんなことを言ったのか、を今はご存じかと思います。(それを理解、納得しているしているかは別の問題)
重要なのは、ここで違和感を覚えた方がいるという事実。
ぼくが行った「出会った時から友人以上」というものは、この感想を送ってくださった方に対しては失敗だったのだ。ある程度のリアリティが必要である。王道をアレンジするときに注意を。
読者を納得させるだけの説得力を持った構築が必要である。
『視野2メートルの想い』(思い付きと勢いの例)
なんちゃって恋愛小説である。なんでなんちゃってなのかというと、恋愛ものとして書いていたこれがいつの間にか、とてもバイオレンスなドロドロ小説になったからである。
ぼくは当初、純愛ものを書こうとした。といってもプロットもなにも作らず、思いつきと勢いだけで書いたのだ。
物語の中心にはトラウマが存在するほどである。
感想をまた引用するが、この感想で恋愛ものと思う人はだれもいないだろう。
『結局この結末は、××××から“逃げる”ことすらできなかった(と私は解釈しました)××××の心の弱さが招いたものなのか、××××の偽装と策略がよっぽど凄かったからなのか……』
(××××はキャラクタ名。ネタバレ防止)
こんな恋愛小説をぼくは知らない。ぼくもこれを恋愛ものとは既に読んではいないくらである。
『もちろん、結末が変化してしまうこともあるだろうが、そこは問題ではない。』と最初に述べているが、さすがにジャンルが変わってしまうほどのものであっていいわけがない。
この感想をいただいた方には『面白い』と言っていただけたが、書き手の技量という意味ではダメダメである。
まずは結末を練ることが大切だ。
物語を構築する時、そのジャンルに用いられるギミックを分解してしまうのも手だ。
ミステリなら(恋愛ものはあまり読んでいないので、ギミック分解が……※)
『密室』『時間』『場所』『アリバイ』『探偵』『犯人』『共犯』『トリック』
これらのギミックの中に存在するを取捨選択し、たとえば『トリック』も既出のさまざまなトリックを応用・合成することで、作品を書き上げる。
同じことをライトノベルのストーリーにも行うのだ。前述の『無意識に行っていることを能動的に』とは、このことである。
数あるライトノベルの設定、ストーリー展開、キャラクター性などを、自身の中で分解、再構築することで、新たな自分の物語を築く。これは決してパクリなどではないことは、あらかじめ言っておく。そして、この方法が正しいのではなく、この方法は構築の一つのパターンであることも。
また、再構築の際に、思い切ってその枠組みを破壊してしまうのも面白い。
前提のところでも述べたが、ライトノベルはほかの作品を知っていることで、予備知識を持っていることで、より楽しめるという特徴がある。そこを利用してみる(パロディも手段の一つ)のも悪くないか。
※論外である。あるジャンルを書こうとする場合、そのジャンルのギミック(テクニック)をあげられる程度には読んでおく必要がある。
【本を読むこと】
物語を作る上で最も重要なこと。それは本を読むことである。それもできるだけ幅広く。人鳥のように恋愛ものをほとんど読んだこともないのに恋愛ものを書くと、まず『視野2メートルの想い』のように(ジャンルとして)破たんし、『薄桃色の空』のように違和感のあるものになってしまう(アレンジの仕方を間違える)。ギャルゲーと呼ばれるゲーム群はいくつかプレイしているが、やはり小説とは趣が異なる。
文章を書くと、その文章に自分の読書姿勢が出てくる。
人鳥が尊敬する小説家は
『小説は読んだようにしか書けない』
と述べている。
読まずとも書けるという自信があるなら、そうしてみると良いと思う。人鳥もそれをした。失敗したが。しかしながら、読むために予備知識を必要とするライトノベルが、予備知識のない書き手に書けるはずもないのだ。
多くの資料(小説などの本)を読み、知識を蓄え、それらのギミック・テクニックを自分の中で取り込むことで、『自分の物語』を構築していこう。