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テーマを考える。

例:『ロボと少女』(二次創作の規約に配慮し、禁止作ではないが削除。現状再掲載の予定なし)

  『薄桃色の空』

  『本当に勇者なら……』

  この『ライトノベルを考える。』の冒頭、「ライトノベルそのものについて考えてみる。」で、ぼくはライトノベルにはメッセージ性が薄いと言った。

 考えるべき内容がない――もしくは限りなく薄いと。

 だからといって、ライトノベルにそのようなものが全くないのかと言えば、決してそうではないだろう。ただ、エンターテイメントという色が強いライトノベルにおいて、その事実に気付きづらいだけなのだろうと思う。

 今回は、書き手がライトノベルに込める、メッセージやテーマについて考えてみようと思う。



【ジャンル】

 小説に限らず、漫画、アニメ、ドラマ、映画、様々なものにジャンルというものが存在する。恋愛、ファンタジー、冒険、推理、SF……さらにはそれらを組み合わせたもの――一口にジャンルと言っても、簡単に分類することはできない。

 小説を書く時、あなたならどちらを先に考えるだろうか。小説の内容か、それともジャンルか。

 つまり、

 書き終えてから、その小説のジャンルを考える(何に当たるかを考える)のか

 それとも、

 書く前にジャンルを考え、それに即して書くのか

 ということである。

  

 人鳥は基本的に前者だから、書いた後に悩んだりする。ではどうして先にジャンルを考えてから書きださないかといえば、ぼくがあまりジャンルにこだわりを持っていないからだ。『薄桃色の空』や『視野2メートルの想い』なんていうのは、ぼくの中では例外的位置にある。

 構想が浮かんだ時、「あ、これファンタジーだ」とか「あ、これは……何?」と、ぼくは悩んでいるわけだ。

 考えなし、とも言える。

 内容がとにかくぶれやすい。(この場合の内容とは、物語の中枢にある軸)

 典型的な例が『視野2メートルの想い』である。あれは元々、恋愛ものを書くつもりで書き始めたものだったが、それを意識し続けていなかったため、結果として(良く言えば)愛憎ものになった。意識し続けられなかったのは、あらかじめジャンルを決めることを普段からしていない人鳥の悪い癖のようなものだ。

 内容がぶれてしまったものでも、そのまま物語が展開できてしまうなら良いが、破綻してしまうことだってある。ひどい場合、何がしたいのかよくわからないものになってしまうことだってあり得る。


 後者の場合、一本筋の通った内容となる。軸がぶれないのだ。恋愛ものなら恋愛をするし、スポーツものならスポーツをし、ギャグならギャグのままで進行する。

 ギャグだったものがバトルに変わったり、恋愛ものがファンタジーになったりはしない。

 一本筋の通った物語は安定性を生む。軸が安定した物語は読者に読みごたえを与え、書く側としても手ごたえを感じるものになるだろう。先に挙げたもののように、内容が変異してしまう場合もあるが、それは意識が足りないということだ。

 自分はこのジャンルを書く、という意識はしっかりと持っておく必要がある。


 また、ジャンルは読者が物語を読む為の指標として最もよく活用する部分だろう。どういう物語を読みたいのか。どういう物語が好きか。ということだ。

 そのジャンルに意識をしっかりと持つことは大切だ。


 でもあれ? そんなこと言ってるけど、人鳥さんって前者タイプなんですよね?

 そうですが、人鳥はジャンルとしてのテーマよりも内容のテーマを決める場合が多いです。



【テーマ】

 ジャンルと同じじゃない? そう思った方、少し違う。

 ジャンルとは元々ある――分類する決まった型である。商品紹介に記載される情報でしかない。では、テーマとは何か。それは商品紹介に記載されない情報テーマである。

 これは必ずしも読者に公表する必要はない。書き手の胸の内に秘めておいた方が良い場合もあるだろうし、公表しようがしまいがどちらでも良いものだってあるだろう。読者が気付いてくれたらうれしいな、というものであるかもしれない。

 人鳥の小説群の中から、例を挙げてみよう。


 『ロボと少女』:【初音ミク VOiCE 3DPVっぽい何か】(ニコニコ動画に投稿された作品)の二次創作。作品の自己解釈による映像の文章化および、物語の拡大――それがこれのテーマである。小説の前書きにも書いているから、見てくださった方には公開されている情報である。これはほとんど何のヒネリもない、ただの文章化である(ただし、キャラクタ名は人鳥のオリジナルであり、オリジナルキャラも登場させている)。


 『薄桃色の空』:「うす桃色の季節」というKOKIAの楽曲をイメージソングに書かれた小説。曲自体が好きで何度も聞いているうちに、物語が生まれていった。それに「ギャルゲーっぽくしたいな」という思いつきを付加して書かれた。小説タイトルも楽曲をもじったものにしている……というか、ほぼそのまま。


 『本当に勇者なら……』:公開当初、「勢いと思いつきだけで書いた」と、前書きや活動報告なんかには書いたが、実はそうではなかった。実際には『チート勇者』に対するアンチの意味合いが強い。チート的なステータスを誇る勇者がいるのならば、「最弱の主人公vsチートステータスの敵」という公式もアリだろうというスタンス(公開当時、ブログで公表している)。この流れはこの小説の連載版『世界最弱の希望』にもある。


 わかりやすいものを例に挙げた。

 上記二つは、いわゆる二次創作となるのだろうか。『薄桃色の空』に関しては、あくまでイメージであり文章化でないから、という理由で二次創作タグはつけていない。

 二次創作は内容のテーマの典型と言えるだろう。この作品をテーマにしたものを書く、というスタンスだからだ。

 『薄桃色の季節』のテーマは楽曲から感じた雰囲気。ぼくは「切なさ」と「寂しさ」と「前進」だった。作中にそれが感じとれるように書いた。

 『本当に勇者なら……』が、人鳥にとって「テーマ」の理想だ。このようなテーマ設定のしかたは純文学なんかでもよく用いられる。社会風刺・批判、自己批判などだ。ライトノベルなら、アンチや新ジャンルの開拓もここに含ませられるだろう。また、「お題小説」と呼ばれる小説群もこれに属する。


 テーマは書き手のメッセージ性が最もよくあらわれる部分である。そしてこの記事の本題でもある。


 ジャンルが外見としたら、テーマは性格・心である。

 物語の本質を示すものだ。

 一見、内容もないスッカスカでどうしようもない作品に見えてしまうものであったとしても、良く読んでみればそれの存在に気づくことができるかもしれない。それに気づくことができたり、そういうテーマがあるだろうと思える小説はとても良いものだ。

 テーマがないのがいけない、と言っているわけではない。否、ないものなどないだろう。意識しているかどうかの違いだ。

 たとえば、徹底的に軽く、ギャグ調で、内容という内容を排した小説があったとしよう。それにテーマがないかといったら、それは――ある。その徹底的な軽さ、ギャグ調、内容の無さこそがテーマなのだ。

 小難しい一切合財を排した小説――ということである。



 テーマの設定には明確な利点がある。内容にブレが生じないという、ジャンルと同じ役割を果たすという点。。それから物語に奥行きを持たせることができるという点だ。

 「奥行き」というフレーズ、過去にも使用している。前回使用した時には「謎」という形で紹介した。今回の奥行きは「テーマ」である。

 テーマで奥行きが出てくるものなのか。


 たとえば先に例に挙げた『本当に勇者なら……』は、普通に読めば――テーマを知らずに読めば、ただの三流の異世界召喚ギャグ小説である。しかし、今回紹介したテーマを知った後で読むと、そのテーマ(アンチ)の部分が読みとれてくる。

 テーマが読みとれるということは(気付いてくれるかどうか、知らせているかどうかはこの場合問題ではない)それだけの意味が内容にあるということだ。ただただ書きたいようにだけ書かれた内容ではない、ということだ。


 新しいジャンルの開拓。

 これもテーマの一つである。さっきまで紹介していたのは、ある種のメッセージ性を含んだテーマだ。楽曲から受けたイメージもそのひとつ。

 これは非常に難しい。何度も言っているが、ライトノベルは前例があってこそなのである。前例を知っていることで、十全に楽しむことができるジャンルである。しかし、それだけでは飽きがきてしまうのが本音だ。そこで新ジャンルの開拓がおこなわれる。

 映像の文章化、なんてありふれたものでも人鳥の中では新たなジャンルだった。「作中作」というのはよく知られている構成ではあるが、読者には新鮮さを与えられるだろう。

 ツンデレから派生し生まれた「ヤンデレ」も、新しいジャンルであるだろう。ぼくが敬愛してやまない某作家は自身の小説のヒロインに「ツンドラ」(ツンはツンデレのツン、ドラはドライのドラ)という性格付けをし(キャラ自身に言わた)、後に「ドロデレ」(ドロリとしたデレっぷり)という表現も生みだした(彼氏がそう評した)。これが成功かどうかは定かではないが、新ジャンルの開拓という点においてお手本となるものだろう。

 別にキャラ造型だけではない。物語の展開の仕方にだって、まだまだ開拓の余地は残されている……かもしれない。ない、と思っているだけで、見つかっていないだけかもしれない。

 新たなジャンルを開拓することをテーマに、物語を考えるのも面白いだろう。



 テーマを読みとろうとする行為は、小説の核を読みとろうとする行為である。

 テーマを書いている小説に与える行為は、小説に心を与える行為である。

 できることなら、意識的に内容にテーマを与えたい。その小説の内容に意味と意義を与えてあげたい。ライトノベルは作品と書き手を同一視するようなものでは決してないけれど、作品と書き手に関連性を求めるようなものではないけれど、それでも――表現する一つの手段なのだから。

 物語を物語として書き綴るだけでなく、そこに意味を与えたいものである。


 蛇足だが、この文章群『ライトノベルを書く。』のテーマ・目標をここで確認しておこう。

 人鳥はこの『ライトノベルを書く。』を、「なろう」内に公開されている他の考察系記事とは違う視点で書こうとしている。文章作法や各ジャンルの「王道」「邪道」の書き方、「ウケる」書き方、設定の良し悪し(テンプレ等)を例示するような、いわゆる「書き方指南」記事ではない。一体何を書いているのかというと、小説(特にライトノベル)の要素をピックアップし、それそのものの考え方を書いているのである。それはここまで読んできた諸兄たちは気付いていることであろう。

 書き方指南を内容とする記事は、「なろう」内だけでなく、ネット上に溢れるほど存在している。だから、ここではその指南記事の補助となる機能を果たしたいのだ。

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