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心理描写を考える。

例:『世界最弱の希望』

  『薄桃色の空』

  『ロボと少女』(二次創作の規約により削除)


 今回は「描写の上達法」が知りたいという要望にこたえての記事です。

 が、あらすじという名の前書きにもある通り、書き方指南ではありませんから、直截的な指南は行いません。ぼくもまだまだ未熟です。

 今まで通り、考察のようなものを書き綴っていきます。

 指南は他にありますから、ここでは描写の考え方について考えてみてください。


 キャラクタの心の描写というものは、そのキャラクタに感情移入をするためには大切な描写である。

 どう感じたのか、どう思ったのか、どうしたいのか、そういうことを書くことで文章に潤いが生じる。


 人鳥の小説は心理描写に重きを置いている。それは情景描写の不足という、人鳥にとって不測の事態を招いているわけだが。ということで、今回はその心理描写について考えていこう。

 描写、というよりは、人の心、か。


 あくまで、書き方指南ではないのだから。

 また、二人称形式小説でのそれは、人鳥の知識がないために記述できない。



【描写の種類】

 一人称、二人称、三人称。

 三つの分類があるが、今回は一人称と三人称においての、心理描写について考えていこうと思う。


 一人称形式における心理描写は、当たり前だが、語り手の心理描写に限られる。語り手が人の心を読む技術の使い手でないというのならば、語り手は人の心を語ることができるほど、人の心を理解できないだろう。

 一人称形式において、他の人物の感情を表現したい場合、


 ・その人物の行動

 ・行動から語り手が気持ちをくみ取る


 という方法がある。

 しかし考えて見ると、誰かが行動を起こした場合、語り手はその行動の意味を考えることが多々ある。そうなると動作主の気持ちを汲み取ろうとするから、上記二つは同じものなのかもしれない。

 ではなぜ、あえて二つに分けたのか。

 理由は、行動()()で示すか否か、という分類が必要だったからだ。


 行動のみで気持ちを表現する。わかりやすい例で言うと、恋愛コメディのツンデレ描写だ。滅茶苦茶わかりやすい描写がなされていて、読者は一発で、それがデレであると気付く。好意を持っていることを気付くわけだ。とはいえ、主人公は大抵、鈍感だったり敢えてそうとは考えなかったりで、結局気付かないのだが。



 行動から語り手が気持ちをくみ取る、というのは特に例を上げなくてもわかることだろう。

 

 Aが机をたたいた。

 もしかしたら、さっきの発言に腹を立てたのかもしれない。


 というように、動作→語り手の推測 で、動作主の気持ちを表す。


 

 三人称形式での描写の種類も、一人称形式と同様である。


 ・動作で表す

 ・動作後、語り手が気持ちを語る


 語り手が神視点であるので、断定的に言うこともできる。一人称の場合には、よほどのことがない限り推測の域を出ないため、「だろう」とか「かもしれない」という語尾になりがちだ。


 心理描写の方法の種類としては、この二種だろう。

 ほかにも描写方法がある場合は、報告してもらえると記事がより充実する。



【心理描写】

 では実際、心理描写とはどんなものなのだろうか。

 その一例を、例のごとく、人鳥の小説群から抜粋してみる。


 一人称小説


『「それ以上のことは、話してもらえないんですよね?」

 弱さが強さにつながると言うのなら。

 これ以上語ることは、きっと無駄なことだ。

 ぼくが意味を理解していないとしても、だ。ぼくが強くなるのは、この意味を理解した時か。いや、強くなった時に意味を理解するのか。

「もちろん。あとは自分で考えるんだ」

 考えろ。

 その言葉、ぼくにとっては望むところだ。現実逃避の手段として――ではなくて、自分を現実に向けるために。』

                       『世界最弱の希望』より


『「抜け出してくるぐらいだから、院内にいるのが辛いんでしょ。でも入院してるんだから、いなくちゃいけない」

 母さんはそこで言葉を切った。

 次に言うことが、一番大切だと言うように。

 心して聞け、と。

 そう訴えるように。

「だから茜が一緒にいてあげて、院内にいやすくしてあげなさい。それはきっと治療の助けにもなるし、なにより――――その子の心の支えになるから」』


                       『薄桃色の空』より


 『世界最弱の希望』から抜粋したのは、会話中の語り手の心境。

 『薄桃色の空』から抜粋したのは、会話中の母親の心境についての語り手の推測。



 三人称小説


『食事は来客がある時以外は無言で食べる、というのがヒューイック家の規則だった。アインはおいしそうに料理をほおばりながらも、どこか寂しそうにロボットが出て行ったドアを見つめていた。一人で食べる食事が寂しくないはずがないのだ。

「……むぐっ」

 独り言をこぼしそうになって、慌てて口をふさぐ。誰が見ているわけでなくても、習慣というものは中々抜けないものだ。口を塞いだ両手を下ろしたアインは、今にも泣きそうな顔でロボットが作った料理を……否、うつむき、虚空を見つめていた。料理はまだ半分ほど残っている。

 (中略)

 身じろぎ一つせず、アインは何かを待っていた。』

                       『ロボと少女』より


 動作と語り手による心理描写。

 さて、三つの描写を紹介したが、心理描写において基本的な描写法になっていると思う。

 心理描写はなにも、その人物の感情を書くだけのものではない。『世界最弱の希望』の例では、語り手は感情をあらわにはしていない。

 『世界最弱の希望』では疑問提起と意思。

 『薄桃色の空』では意思。

 『ロボと少女』では感情。

 描写できることは多い。


 描写の基本的な形は上のようなものだろうと思うが、それはぼく――人鳥の基本である。描写方法というものは個人、書き手によって異なる。

 人鳥なら、前述したような表現法で、人物の心を描写する。



【考え方】

 心理描写をする時、まずはその人物がどのように考えているかを考えなければならない。なんの脈絡もないことを描写してもなんの意味もない。

 しかしながら、間の抜けた人物なら話を聞いておらず、全く関係のないことを考えているかもしれない。そこは書き手自身が施した設定に従う。

 心理描写を多くしようと思った時、キャラクタ設定には「思考傾向」を盛り込む必要があるだろう。どういう時にどういう風に感じる傾向があるのか、どういう信条・持論があるのか。その人物にとって譲れないものは何なのか。その場の雰囲気だけで心理描写をしていると、変な矛盾が生じてしまうことになる。意識的に起こす矛盾なら問題はないが、書き手すら気付いていないとなると、それは問題だ。


 まず簡単な設定の仕方として、自分自身と同じような考え方のキャラクタを設定するという方法がある。自分ならその状況でどのように感じ、考え、行動するかを想像して書くのだ。そうすることで、矛盾が生じることは少なくなるだろう。これはあくまでも練習用である。それに慣れたら、あとは様々なキャラクタを設定していく。間抜けでも良いし、傍若無人でも良い。エキセントリックな人物の心理描写ができるようなれば、心理描写も面白くなってくる。

 描写をするうえで難しいのは、無表情なキャラクタである。感情に起伏がないようなキャラクタは、描写に苦労をする。

 

 動作で示すにしても、無関心なように思えてしまう。

 考えていることを書くにしても、なんだか書きづらい。

 

 しかしまあ、設定がそういう設定であるのなら仕方ない。こういうキャラクタの場合は、描写を前面に出すのではなく、些細な言動で、控えめに表していくのも手か。些細で控えめでも、他のキャラクタや読者は、その変化に気付くはずだ。元が変化の少ないキャラクタなのだから、多少の変化も目立つ。




 感情を考えていると、どうも常人離れした思考の持ち主になったりする。異常なほど切り替えが速かったり、残虐だったり、単純だったり。どういう世界観、ストーリであるかは別にして、できうる限り、現実に即した描写が良いだろう。特に、思考の切り替えの速さは読者に違和感を覚えさせやすい。


 たとえば、自身がどうしようもない不運に見舞われた人物がいたとしよう。そこでほんのちょっと落ち込んだかな、くらいですぐに立ち直ったり、開き直ったりするのは、現実的とは言えない。

 中にはそういう人もいるだろうが、そういう人に対して、ぼくたちはどう思うだろうか。違和感を覚えないだろうか。不思議に思ったりしないだろうか。

 後悔したり、未練がましかったりするのは、とてもみじめに見えてしまうけれど、人の心理としては当然のことだろう。そういう暗いジメジメした感情も、表現することが大切だろう。たとえそれで物語が多少の遅延を余儀なくされたとしても、だ。

 小説は、物語を追うだけが小説ではないのだから。



 心理描写はキャラクタの性質を読者に伝える重要な要素である。そのキャラクタがどんな人物なのか、それをよくわかってあげることが大切だ。書き手は、キャラクタの一番の理解者でなければいけない。

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