3、 朱海班長
電車の先頭車両と、偶然の再会。
まだ何も始まっていないけれど、
たぶんここが、はじまりの駅。
電車が来ちゃう、少し急ごうっと。
今日はダンスのレッスン。
ママにお願いして少し遠くのお教室に通うことになった。
バスと電車を乗り継いで50分。
そこそこ遠い、けど、楽しい。
先生も素敵でカッコイイ、あんなふうに踊りたい!
ちょうどよく電車が来たので乗り込む。
空いてて良かった、このまま一番前まで行って景色を眺めよう。
先頭車両って素敵だよね。
何も遮るものがない真っすぐに続く線路、カーブを曲がる時の景色。
今日はガラスを独り占めできるかな。
でき…ない、残念。
男の人が一人、私の定位置に陣取っている。
すぐ隣に並ぶのは嫌なので、ひと3人分くらい開けて景色を見る。
んだけど、何となく視線。見られてる?
さりげな~く横目で、電光掲示板を見ていると言い訳できる目線で隣をみた。
「あ…やっぱり、たかこちゃん?」
「あ…朱海班長!?」
知らない人に見られていると思っていたので、しばし思考停止。
「こんな時間からお出掛け?」
「はい!あ…いえ!あのぉ、え~と踊りを…」
「あぁ、ダンス?」
「そうなんです!これからレッスンで!」
「そうなんだ、遠くまで一人で?えらいね。」
「そうなんです、そうなんだけど!あの…ありがとうございました!」
「どういたしまして?で、あってる?」
あ~、そうよね!いきなりすぎたよね。
キチンとご説明申し上げますっ!
「あの、神社ではぐれた時に、送ってくださって!」
「あ~、それね!良かったよね、すぐ見つかって。」
「あの~。もうひとつ、ありがとうございますを言いたかった事がっ!」
「なに?」
次は~・・・お乗り換えのお客様は~・・・
あータイムリミットか!
微妙なタイミング。
「ぼく、次で乗り換えなんだ。良かったら、続きは今度。
…そうだな、あの神社でどう?明日お祭りでしょ?
お笑い芸人みたいんだけど、一人じゃどうもね。
4時に鳥居のあたりで、行けそう?」
お笑い芸人!見たいです!
「行きたいです!」
「良かった、じゃあ明日ね」
さわやかに朱海班長は降りていき、
展開についていけなかった私は降りるのを忘れてしまった。
不覚!
えーと?明日、お笑い芸人が4時に来るから、神社に行ってぇ。
情報量、多いなぁ。
それから…何を着ていこう?
明日かぁ、んーと…なんかフワフワする?
そんな事を考えていて、駅を3つも乗り過ごしてしまった。




