11、 朱海さんの悩み
「ちゃん」に浮かれ、
「さん」に撃沈。
血の海よりも深いのは、自分の恋心。
今日も平静を装ってます。
頑張れ、班長。
一番はじの一番奥。
2人並んで座れる場所は、そこだけだった。
「結構混んでるんですねぇ」
「ほんと、早めに来て良かったね」
2人並んで座ると、少し緊張する。
お互い参考書や問題集を広げた。
「静かです…」
「うん」
図書館だから静か。
何を話して良いのか迷うから、ちょうど良かった。
本来の目的を果たす為に、まずは問題集を解く事にした。
「少し休憩しない?」
時計を見ると50分たっていた。
なかなか良い集中力だな。
きっと予約の本も受け取りたいだろうから、ちょうどいいかな。
何か飲もうか?って聞いたら、
急いで座席に戻って、水筒を持ってきた。
「温かいミルクティー作ってきました!班長もどうですか?」
作った?
手作りか、嬉しいな。
「ありがとう、甘いの欲しかったんだ。‥温かくて、美味しい。」
「でしょー?インスタント優秀ですよね!」
インスタント!
隠さないんだ、そーいうの。
あんまり笑っちゃ悪いかな。
今なら、昨日の事もいえるかな。
「あのね、あけみって名前ね、朱い海って書くんだよ」
「赤い海?血の海?」
「んー、そっちじゃなくて、朱色のあか」
たかこちゃん、血の海って…。
「あ、そーだったんですね!すみません、間違えてました!」
「ううん、いいよ、それよりも班長って呼び方なんだけどね…」
「はい!」
あんまり元気よく返事をされたので、
言いづらくなってしまった。
「…しんちゃん先輩がウケてたよ」
「あ!すみません、すみません。
何か、小学校の時以来で、班長しか思いつか無くて…」
「でも、名前は覚えてたんだ」
「はい!苗字は、忘れてましたけど!」
本当面白い。
普通言うか、それ。
でも、この子、すごくいい子だな。
「あの〜、何て呼んだら良いですかねぇ」
「下の名前でいいよ」
「じゃあ、朱海ちゃん」
「男なんだけどね」
「あ、すみません、すみません!では…朱海…」
呼びつけ、いいな、それ。
「…さんで!どーでしょー!?」
「ぶっ…」
「あれ?あたし、何か変なこと言いましたっけ?
はん…じゃ無くて、朱海…」
「さん」
「さんね」
声が重なった。
今度こそ2人で大笑い。
「今日はあと10ページ、ノルマなんだけど、たかこちゃんは?」
「特に決めていないので、時間の許す限りです」
時間の許す限り?
じゃあ…
「じゃあさ、頑張って勉強したら、お昼食べに行かない?
嬉しかったから、ご馳走する。」
「ハッピーセット!」
即答、嬉しいな。
「じゃあ、戻りますか!」
「はい!」
また、2人並んで静かな時間を過ごす。
しばらくして、たかこちゃんから口を開く。
「ところで班長、何が嬉しかったんですか?」
…やっぱりこの子は…
頑張れ、俺。




