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碧い航海日誌   作者: 松本朱海|徒然なるままに
最初の話

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10/11

10、 漢字ひとつ分の距離

呼び方ひとつで、距離は少しだけ変わる。

漢字ひとつ分の、まだ縮まりきらない距離。

初詣に誘うだけなのに、

どうしてこんなに、言葉を選んでしまうんだろう。


なんて言おうかな…。

無理なく誘える内容だと思うんだけど、先約があったらなぁ。

だから、早く連絡すれば良かったのにって、後悔したくないしなぁ。 


たかこちゃんのインスタ。

ダンスの動画が時々アップされてる。

印象が全然違う、大人っぽいな。


見ていると遅くなってしまう。

意を決してメッセージを送る。


「こんばんは、初詣のお誘いなんだけど、どう?」


さり気なく、さりげなく、軽ーく…。

すぐに返事が来た。


「こんばんは、初詣、行きたいです!」


…よかった。

とりあえず、ひとつオッケー。


「でも、」


でも?なんだ?


「受験直前なので、勉強もしないとなんです」


痛い、痛すぎる。

俺も受験生。

しかも推薦を取れなかったので、一般受験。

でも、それなら、


「図書館で一緒に勉強しない?」


今度はすぐに返事が来ない。

そりゃそうだよな、講習もあるだろうし。

諦めた頃に、返信。


「夜は塾とダンスなので、昼間なら。明海班長の都合はどうですか?」


ちょっと…名前がちがう、やっぱり班長だし。


俺はこの名前に不満がある。

音は完璧に女だし、字の意味もよくわからない。

それもそのはずで、母親が大好きなキャラの名前をつけたからだ。

学校で自分の名前の由来、みたいな授業は当たらない事を心から念じた。


「名前違ってるよ。朱海だよ。別にいいんだけどね、まだ班長なの?」


送信ボタンを押す寸前、もう一度読み直して、消去した。


携帯の文字は、何だか冷たいような気がして。


「こっちも昼間の方が都合がいいな。予備校とバイトがあるんだ。」


「ちょうど予約している本を受け取りに行こうと思っていたので。

明日か明後日どうでしょう?」


そりゃもちろん両方。

でも、ガッついてると思われたく無い。

頭をフル回転させて、入力していると、


「朱海ー、ご飯よー」


母さん、声デカいだろ!


「明日どう?初詣の相談もしたいから。」

「オッケーです。何時にします?」


「朱海くーん、みーくーん♡起きてるー?」


うるさい、うるさい。

何度も呼ぶなよ!


「じゃあ、10時に図書館でね」

「はい!了解しました!」


班長って呼ぶのをどうにかするのは、次回持越しにした。

漢字も今度伝えよう。

でも、何て呼んだら?

苗字か…朱海か…


ここは慎重に決めないと、

ずっとそれで呼ばれる事になるかもしれない。

母さんなんて、子供の頃からみーくーん♡だ。


「みーくーん♡入るわよー♡」


「聞こえてるってば!あー、入らなくていいから!」


嬉しそうにドアを開ける母さんを入らせないように、

俺は電気を消して部屋を出た。

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