第8章 真実と結末
【処刑当日】
「この侍女は無実だ!」
レオンの声が広場に響き渡る。
証拠の薬瓶と書簡が群衆の目にさらされ、ざわめきが怒号へと変わる。
「そんなはずはない!」
金髪の王子、エリオットが声を荒げる。
だがレオンは冷徹に言葉を重ねた。
「証拠は揃っている。王妃暗殺を企てたのは──お前だ」
その場に凍りつく沈黙。
王子の顔から血の気が引く。
「わ、私は……ただ……!」
狼狽える王子の背後に、カレン侍女長の影が忍び寄った。
彼女の手にはもう一本の小瓶。
だが、群衆の視線に気づいた瞬間、その笑みが歪む。
「……仕方ありませんね」
カレンは瓶を放り捨てた。中身が地面に砕け、黒い煙が上がる。
その場に毒の匂いが広がったが、レオンが即座に剣で煙を散らし、兵士たちが彼女を取り押さえた。
「黒幕は……あなた……?」
私の声に、カレンは嗤った。
「そうですとも。王子はただの駒。私は王妃の影として仕えてきた。だがあの方が失脚すれば、私こそが──」
最後まで言い切る前に、兵士たちが彼女の口を塞いだ。
広場全体が騒然となる中、私は膝から崩れ落ちた。
足枷が外され、冷たい鎖が床に落ちる音がやけに大きく響く。
「……やっと、終わったんだ」
涙が溢れた。
ずっと繰り返してきた死と恐怖が、ようやく終わりを告げたのだ。
その肩に、大きな手が置かれる。
顔を上げると、レオンが立っていた。
「よく耐えたな。……お前の勇気が真実を暴いた」
その瞳は、冷徹さを残しながらも温かかった。
私の胸に、安心と熱が同時に広がる。
「……ありがとうございます。あなたがいてくれたから、私は……」
言葉が途切れる。
でも、伝わった気がした。
レオンは小さく頷き、私の耳元で囁いた。
「これからも、俺の傍にいろ。必ず守る」
群衆のざわめきの中、私はその言葉を胸に刻んだ。
断頭台から始まった悪夢の七日間は、ようやく幕を閉じた。
──そしてこれは、新しい未来への始まりでもあった。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
処刑台から始まったミレイの七日間は、幾度ものやり直しを経て、ついに真実と未来を掴む結末にたどり着きました。
黒幕の正体、王子の裏切り、そして冷徹な近衛隊長レオンとの絆──皆さまに少しでも「ドキドキした」「最後まで読めて良かった」と思っていただけたなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。
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