第7章 逆転の処刑台
【処刑当日】
広場に集まる群衆のざわめき。
あの日と同じ断頭台。
冷たい空気が頬を切り裂く。
(何度目だろう……もう数えるのも嫌になる。でも、今回は違う)
私は鎖で両手を縛られ、処刑台へと歩かされていた。
だが、心の奥には小さな炎が燃えている。
これまでのループで掴んだ証拠と、レオンの存在。
それだけが、私の足を前に進ませていた。
「王妃暗殺未遂の大罪人、ミレイ・アルベール──」
役人の声が響く。
群衆の中で、金髪の王子が薄く笑った。
あの冷たい笑みを、もう恐れることはない。
(あなたの罠は、すべて見抜いた)
断頭台の上へ押し出される。
喉が渇き、膝が震える。
それでも視線は逸らさなかった。
「最後に言い残すことは?」
役人が問う。
私は深く息を吸い、広場全体に響く声で告げた。
「私は無実です。そして──証拠を持っています!」
ざわめきが広がる。
処刑人が一瞬手を止め、役人が眉をひそめた。
その瞬間、広場の端から鋭い声が響いた。
「待て!」
黒衣の男──レオン・ヴァルトが歩み出る。
彼の手には、密かに押収していた薬瓶と、王子の署名入りの書簡。
「この侍女は罪人ではない。真犯人は別にいる!」
群衆が一斉にどよめく。
王子の顔色が、初めて揺らいだ。
「ば、馬鹿な! そんな証拠……」
「すべて、この手で押さえた」
レオンの声は冷徹で、広場全体を支配した。
(……これで、運命は変えられる)
震える心を押さえながら、私はただ彼の背中を見つめていた。
第7章をお読みいただきありがとうございます。
再び訪れた処刑の日。ですが今回は、これまでのループで得た情報とレオンの行動によって、ついに“逆転の糸口”が示されました。
王子の顔色が揺らぐ場面は、読んでいて少し胸がすっとした方も多いのではないでしょうか。
もちろん、これで全てが終わったわけではありません。黒幕の存在、王妃の不可解な行動、そしてカレン侍女長の微笑み──まだ謎は残されたままです。
次回はいよいよ最終章。処刑台から始まった物語が、真相と結末にたどり着きます。
どうか最後まで見届けていただければ嬉しいです。
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