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エレメンタルキャリバー  作者: 山本
第三章 アケノモリ
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24話 準備


 防衛局への説明は、俺への罰だということもあって単独でさせられた。徹夜で頭が回っていない中、もう俺に会いたくないと言っていた局長殿に説明するのは凄く骨が折れたが……まあ、精霊化したオフェリア殿の件は何とか誤魔化した。


 困ったのは俺が問題を起こしてばかりいて、これ以上の迷惑をかけるなら防衛局から出て行けと言われた事だな。オフェリア殿がアケノモリの何処かに居るっていうのに、防衛局を離れるワケにはいかないだろう。リベンジに来た彼女が俺の不在を知ったら、腹いせに防衛局を襲撃するかもしれないし。


 ここでギブアップかい? って感じで、ディアナ殿が俺に視線を向けてきたが……なんのご安心召されよ、いつまでも政治が苦手とは言っていられない。魔女の従者になると決めたからには腹芸の一つも出来ないとな。


 これに出でたるは山吹(虹)色のお菓子ですぞ。


 いやー、賄賂って権力者に利く便利ツールだよね。もう、それに釘付けとなった局長殿は、赤子の手をひねるよりも容易い相手だった。まんまと居座る権利を得ましたとも。


 なお、賄賂の正体は虹色の枝、その粉末である。


 そんな大層なモノをどこに隠し持っていたかって、ディアナ殿……あるじゃないですか、ほら、俺が飲み込んでたヤツが。なんか小便をしているときにキラキラと光るものがあって、要らない布を貰って濾しながら排泄していると、それなりの量になった。尿管結石かな?


 いや、コレが尿管に詰まっていたら、ホントの尿管結石で死ぬほど痛い目に遭っていたんだろうが、しかし、そこはなんでも癒す虹色の枝の粉末である。都合よく出来ているらしい。


 そういえば飲み込んでから一か月近く経っていて、ちょうど効力を失う頃だ。体内で役割を終えたヤツが腎臓で濾過されて再結晶化したらしい。残りカスとは言えども、元は銀色の草花や黄金の果実を超えるブツである。何かに使えないかと取っといたのだ。勿論、洗浄はしたし、アルコール消毒もやりましたよ。



「実際に効力があるかは賭けでしたが……ちょっと席を外した局長殿が、ふさふさの黒髪になって戻って来たんですから問題なしということで。いや、どう使ったんでしょうねぇ」

「あのな……君はイチかバチかが多すぎるよ! その辺も指導してやるから覚悟したまえ。あと、安易に賄賂なんて使うんじゃない。欲求のハードルが上がるかもしれないんだから」



 ……賄賂を使うこと自体は否定しないのね。


 しかし、んー、そうだな。今後の事を考えると確かに浅はかだったか。頭が回っていなかったとは云え、素直にディアナ殿へ助けを求めるべきだったな。反省。



 そして今は魔女チームが揃って会議室に居る。


 打ち合わせ内容は、オフェリア殿が精霊になってしまった事による作戦の練り直しだ。


 流石に精霊化は予想外過ぎて、これには本部へも報告せざるを得ず、その魔法通信での報告内容も議題に入っていた。(どうやら魔法には固有周波数があるらしく、グレートリバース前の無線通信技術?とやらを応用しているらしい。探知魔法もそれを用いているようだ)


 虹色の欠片を飲み込ませるのは無理となったが、それに代わって精霊の『核』を斬って欠片を埋め込むって案に賛同してくれたのはよかった。


 難易度は上がったが、抹殺という方向にいかなかったのには胸を撫で下ろした。まあ、彼女たちも同胞を救えた方が良いという想いもあったのだろうが、責任ある立場として問答無用で抹殺を選ぶのも可能性としては十分にあったのだ。


 不幸中の幸いは精霊殿の方からこっちに来てくれるって事だな。


 あの時、投げつけられた正八面体の水晶の中には緑光を放つ何かが封じられている。ディアナ殿に言わせるとオフェリア殿の魔法の産物で、発信機の機能を持っているらしい。詳しい理屈は魔法通信以上に分からないよ? 俺かて多少の勉学は修めてはいるものの、魔法は物質変換の域で……高等な物理とか化学とか、量子力学とかになるとお手上げですもん。偏微分のオタマジャクシを見るだけで蕁麻疹が出るわ。


 なんにしてもコイツを目印に来てくれるってのは助かる。魔獣の森の中で彼女を求めて右往左往しなければならないというのが、本任務における最大の難点だったので。


 正直、深部まで行かなければならない事態であったなら、被害が出るのを覚悟で森から出て来るのを待つしかなかった。そしてヒトに被害が出てしまったなら彼女を抹殺するしかなかったのだ。


 今もその被害が出ないって保証はないが、現状は魔獣の森に留まっているし……ああ、精霊殿がやらかした森の破壊活動、それへ怒ったドラゴンの対処には今のチームで対応するってことで決まった。森に出向かなければディアナ殿への負担は少ないし、さぼりがちなサレナ殿にも働いて貰わなければ。



「正直、こっちに来てから資料を調べるだけで体が鈍ってたんじゃないですか? そろそろサレナ殿の実力を見たいと思っていましたし」

「ぬお、私の実力を疑っているんですか? 確かに此処へ来てからは活躍する機会がありませんでしたが、私はディアナ様のサポートが主な仕事ですので! ディアナ様が動くとなったらじゃんじゃんばりばり働きますますかよ!」

「吾輩のサポートに拘る必要はないぞ。最近たるんでいるから性根を叩き直そうと思っていたところだ。こき使ってやってくれたまえ」

「ディアナ様、ひどい!」



 うん、言質を取ったので使い倒して進ぜよう。やっぱり後ろをフォローしてくれる誰かが居ないと安心して魔獣に特攻(とっこ)んでいけないからなぁ。


 さて、そんなワケで基本方針は固まった。後は精霊殿がやってくるまで防衛局で耐える日々が続くだろう。持久戦は苦手だから彼女には早くリベンジに来て欲しい所だが……猫みたいな気性だから、いつになることやら。



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