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エレメンタルキャリバー  作者: 山本
第三章 アケノモリ
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17話 部隊説明


 夢から覚めた後、俺はすぐに悪夢の中で思いついたことを紙にメモした。そして、居心地の悪い中で朝食を済ませ、身体共に万全の状態になった上で資料室に赴く。


 防衛局からは会議室を一室貸し出されているが、アケノモリに関する資料は多く、資料をそこへ運ぶよりは資料室で情報収集する方が効率的だ。防衛局で資料室に足を運ぶものは少なく、昨日その一角は魔女一行の執務場所と化していた。


 昨日と同じ場所で調べ物をすると言っていたので、少し早い時間ではあるが、そこに行くとディアナ殿とサレナ殿が既に居て資料に目を落としている。


 昨日の事が気になって少しでも役に立つような資料を調べている……のかな? 上司より到着が遅くなったことに僅かな罪悪感を覚えながらも、朝の挨拶をする。



「おはようございます!」

「どうも……今日も元気ですね、っていうか、なんでそんなに普通なんですか?」

「やあ、おはよう。はは、サレナの事は気にしないでくれ。どんな状況でも後ろ向きにならない……精神修養も文句なしとは、あの御二方の目に曇りはないな」



 ちゃんとやっているのは貴女達も同じでしょうに。まあ、お世辞は有難く受け取っておこう。


 それよりも俺の思いついたことを話しておかないと。状況好転となるかは分からないが、防衛局に俺達の影響力を少しでも浸透させるって意味では悪い方向へは行かないだろう。受動的より能動的な方が状況をコントロールしやすいし。


 そんなワケで、防衛局から援護要請を受けた時に俺がどうしたいかを二人に伝えた。


 魔獣を討伐することは間違いなくやるが、そこに俺のやり方を学ばせる隊をつけること。そして、その教育による成果を確認できたら、考え方を広げていって欲しいと要望することを。


 俺の労力は嵩むが、上手く行けばより内部崩壊を食い止められるかもしれないし、単なる援護だけでなく俺達が去った後も防衛局の為になるモノを残せる。なにより、単純に魔獣をぶっ殺して回るより、俺のやる気が出る!


 そんな感じで、特に最後の理由を力説したらディアナ殿は目を丸くした後、笑い出した。



「いや、面白いね君は! 脳筋の狂戦士とばかり聞いていたから、そんなふうに頭を使うなんて想像もしていなかった」

「空気を読むとか政治的なヤツはからっきしなんですが、戦闘に関する事だったら多少は頭をつかいますよ。ほら、地軸逆回転グレートリバース前の誰だったかの有名人の言葉で『努力は裏切らないというが、頭を使わない努力は簡単に裏切る』ってのがありまして……逆説的に、必要なところには頭を使うよう心掛けています」

「そうかい? フフ、特に最後のがいいね。部下のやる気っていうのは中々引き出しにくいものだから、自発的な気持ちになってくれたのが何より嬉しいよ。うん、要請があった時に話してみるか……いや、せっかくだから君から話してみる?」

「お任せいただけるなら、喜んで」



 おお、なんかディアナ殿とは凄く相性がいいな。仕事のやり易さのケタが違う。やはり歴代1位の上司かもしれない。


 美人で、気さくで、話し易くて……信頼もしてくれる。


 筋肉フェチ以外は俺の理想を全て備えているって感じで、このヒトより気遣いができるオフェリア殿がどんな人なのか、想像もつかないぜ。



「あのー、ディアナ様の騎士は私なんですから取らないでくださいよ!? ……それはともかく、話に出てきた隊とやらは、どこの部隊を指名するつもりなんですか? 正直、伐採隊とか防衛隊とか、なにがどれを担当しているのか、昨日から聞いててもさっぱり分からないんですけど?」

「あー……それは確かに。昨日、話をした部隊長、あの三人だけでよかったのか気にはなっていた」

「そうか、自分の中では常識で説明するのを忘れてました。ちょうどいいから説明しておきます。俺が知っているのはクロモリ防衛局の組織ですが、大きく変わらないみたいなので、そのまま話しますね」



 改めて説明すると防衛局には次のような部隊が存在している。満月付近では役割が少し変わる部隊もあるので、そこも併せて説明しよう。細かいところまで述べると膨大な量になるので概要だけで勘弁願いたい。



---


~直接的に関係がある部隊~

【伐採部隊】

・主な任務:魔獣の森に植生する木々や草の伐採と回収を行う。魔獣の死骸も回収する。

・補足事項:魔獣の森に分け入って伐採を行うため、殉死者が多い。満月付近では森から出て来る魔獣が多すぎて伐採作業にならないので、その間はまとめて休暇になっている。アサシンアタックをしてくる魔獣アギトが天敵。


【護衛部隊】

・主な任務:伐採部隊の護衛。味方の盾となり槍となって魔獣と戦う。

・補足事項:満月付近では伐採隊と共に砦内に引っ込むが、全て休暇とはならずに隔日で防衛隊と共に魔獣撃退の任務に就く。その年間生存率は10%未満であり、伐採隊の肉壁になってとにかく死んでいく。また、他の部隊が砦の外に出る時も護衛を務めており、便利に使われている。


【防衛部隊】

・主な任務:砦の防衛を行う。緊急時以外は砦の外へ出ることはなく、ほとんどが弓兵で占められる。

・補足事項:通常時と満月付近で役割はそう変わらない。接近戦が比較的苦手で、砦内に魔獣が雪崩れ込んでくると喰われるだけの的になるため、満月時は必死になって魔獣に矢を射かけている。


【討伐部隊】

・主な任務:砦の周辺に逃げてしまった魔獣を追って討伐する。

・補足事項:調査、追跡、索敵、討伐までツーマンセル単位で全てをこなす。別名、猟犬部隊。あまり砦内にはおらず、多くは魔獣を追って外で活動する。満月の時には魔獣が外へ逃げやすいため、その時ばかりは防衛隊と一緒に矢を射かける任務に就く。


【工兵部隊】

・主な任務:砦の補修と増築、及び設備の保守管理。

・補足事項:設備に関する何でも屋さん。夜の篝火管理もこの人達で行っている。戦闘能力は皆無で砦の外に出て補修を行う時はいつも涙目。砦を壊す魔獣ゲキドをとにかく憎んでいる。満月の時は砦が壊されないよう祈っている姿を見かける。


【補給部隊】

・主な任務:設備や装備、事務用品や日用品などの発注や補給を担い、食堂を運営するなど任務は多岐に渡るので、この部隊のみ『係』が存在している。娯楽関係も担当しており、夜に通う者が多い。

・補足事項:全部隊、色々な意味で頭が上がらない。なお、物資などの運搬は外部委託しており、魔獣の活性が最低になる新月には物資の搬入搬出でてんやわんやしている。



~間接的に関係がある部隊~

【処理・研究部隊】

・主な任務:回収した魔獣を解体・処理し、外部へ持ち運べるようにする。解体した魔獣を研究して資料に纏めることもする。ごく稀に対魔獣の装備を開発して押し付けて来る。

・補足事項:とにかく臭いので全部署が近寄りたがらない。重要な部隊であることは分かっているんだが、近づくときは鼻栓必須。あと、いつも魔獣の体液で汚れているので長靴も必須。因みに黒木刀を色々調べたのもこの部隊。


【監察・憲兵部隊】

・主な任務:防衛局内の監査、警察を行う。

・補足事項:防衛局長も頭が上がらないらしい。ほとんど姿を見せないが防衛局内でヤバいことをすると何処からともなく現れて対象者を何処かへ連れ去る。無事に帰って来ても三日は使い物にならない。査問会には必ず立ち会う怖い人たち。


---



 想像以上に長くなってしまったが、防衛局の部隊説明は以上である。


 本当はこれに絡めて階級の話もした方がいいんだが……説明を求めた当のサレナ殿が居眠りに入ってしまったので止めておこう。ディアナ殿はちゃんと聞いていてくれたから無駄にはならなかったが、後で教えてと言って来ても断るからそのつもりで。



「いや、勉強になったよ。防衛局に滞在する上で非常に有用な情報だった。昨日の話を持って行った三人の部隊長は必要最低限だった事も分かったし、今後も色々と参考にさせてもらおうじゃないか」

「はい、そう言って頂けると有難く思います……そして、ちょうどいいタイミングで御客さんが来たようです」



 現れた人影に目を向けると、そこには昨日の部隊長3人の他、防衛局長の姿もある。予想通り過ぎて何か変な力が働いていないか疑ってしまいそうだ。


 何はともあれ、こんな場所でする話ではないだろう。局長殿に促されて俺達は局長室へ向かった。


 あっ、サレナ殿をすっかり忘れていたが……まあ、後で説明すればいいか。


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