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エレメンタルキャリバー  作者: 山本
第三章 アケノモリ
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11話 防衛局(下)


 そこから先は、壊滅しかかっているアケノモリ防衛局の部隊を助けるための索敵滅殺行脚である。


 先ほどと似たような感じで魔獣に蹂躙されていた部隊が多く、定員が半分になっていた最初の遭遇部隊が、実は最も損害が少なかった。本当に多くの部隊が全滅しており、死体と化した防衛隊員を喰らう魔獣だけの場所ばかりになっていたのだ。


 これでは生き残りが少な過ぎて陣を作る余裕がない。俺が魔獣を殺して隙を作り、その都度、魔獣死骸の回収門へ走るように指示するという事を繰り返さなければならなかった。逃げた彼らが無事に砦の中へ入れたかは分からないが、足手まといが居れば、逃がす事すらも出来なかったであろう大激戦だ。


 結果的には最初に助けた彼らの判断が正しかったという事になる。


 こうなると防壁を破られそうになっている箇所も多くて、とにかく防壁を壊し得るゲキドを優先的に殺しまくるしかない。防壁の上から防衛隊員が落として来る石や矢を避けながら、黒木刀で殺戮三昧だ。


 こういった場面では質よりも手数が必要になるので『十二神将』が大活躍となる。二連発でもでも足りないときは、三連発目にイチかバチかの『十二神将・顎』だ。


 殺り残しがあったら自身がお陀仏になる技だが、物量に押されたらどちらにしても死ぬ。このあたり、技を出した後に心魂尽き果てた俺をフォローしてくれた防衛隊員に感謝だ。さっきは、阿保面とか言ってごめんなさい(汗)。しかし、よーしもうちょっとでコツがつかめそうだぜぃ。


 それにしても、いくら満月が近いと言っても、防衛局が潰走するこの魔獣の数は異常だ。


 これではまるで、クロモリで虹色の枝を探索する任務を本格的に始める前……クラウディアが森に魔法をぶっ放した後でカズラ三体が襲って来た時の再来だ。


 もしかしたら、魔人化したオフェリア殿が何かやっているのかもしれないが、今は知りようもない。目の前の魔獣を殺すしかないのだ。


 そういえば、俺は魔人化したオフェリア殿を元に戻しに来たというのに、何で防衛局時代と変わらず魔獣と死闘を演じているのか……そりゃあ、拠点となる防衛局が崩壊したら彼女の探索自体が出来なくなるんだが、よそ者である俺に何でこんなに割り当てが多いのか……楽しくて笑っちゃうじゃないか!


 とりあえず、防壁の端から端まで行脚して助けられる防衛局員は助けた。これもう、何も気にすることなく暴れられるワケだ。


 えーと、ここに至るまでに結構な数の魔獣を殺した。残りは視認できる範囲では300体ってところだろうか。


 1対300とか、普通だったら絶望を通り越して笑ってしまうような戦力差だ。しかも、相手は醜悪で凶暴な魔獣で……アイツらに食われるなんて、想像するだけでも気の弱い人なら気が狂ってしまうかもしれない。


 だが、俺の場合は違う。目の前に広がる全てが俺の標的――遊び相手だ。


 生きることを実感させてくれる得難き敵。それが雲霞の如く群れている様は、まるで地軸逆回転グレートリバースの前にあったと伝わる遊園地だ。こんな遊具の群れを相手に、遊び尽くさねば非礼というもの。


 そろそろ神魔刀が早く抜けと訴えてきているが、もうちょっとだけ辛抱して欲しい。お前を抜いちゃうと、ただの蹂躙になっちゃうからな。


 えっ、ダメ? もう我慢できないって!? あ、おい、こらっ!


 勝手に動き出した黒木刀を止めようとして手で掴もうとしたら、勝手に鞘の部分がばらけた。でもって、虹色の刀身がぐにゃりと動いて服を撫で切って俺を裸にし、そこへばらけた鞘が無理やり巻き付いてきた。


 俺が文句を言ったためか、インナースーツ型から袴とハチマキの様相に変化したのは、まぁ悪くない変化だからいいんだけど……いくらなんでも強引過ぎないか?


 あん? 俺を絶対に死なせるなって姐さんから厳命されている? って、まさかお前、クラウディアと話ができるのか!? えー、そんなん、いつの間に……ああ、あのサバトの席で……もし、死なせたら戦略級魔法で絶対蒸発させると脅されたわけか。


 ああ、あと、今回は不思議パワーは使わないと……持ち前の切れ味で勝負するから我慢しろって? でも、あの形態になった時点で……もう、しょうがないか。


 さて……そんな神魔刀とのやりとりをしている間にも魔獣の皆さんが目前に迫っていた。仲間を大量に殺された上に、オレ達を無視して何を余裕こいているんだと、おかんむりだ。


 だってなぁ……この状態であれば例え不思議パワーがなくても――普通に振るうだけで『十二神将・顎』を超える威力が出てしまうんだぜ、コレが!


 まるで山津波のように襲ってきた魔獣の群れが、たった一振りだけで川を裂いたかのように十数体まとめて斬り裂かれる。別の方向に二つ目を振るえば川は三本支流に、更に三つ振るえば四本支流にといった感じで、神魔刀を振るうごとに魔獣の死骸が山と築かれ、それが堰となって魔獣の川を分断する。


 仲間の死骸に邪魔されて俺を襲えず、迂回して逆方向から襲ってきた魔獣も次の一振りで死骸の山と化す。


 なにせ、黒木刀時のように急所を見定めるという事を必要とせず、雑に振るうだけでスパスパ斬れるので、頭脳と体への負担は無き等しい。そうなると、いくらでも連撃が利いて……こっちこそが死の壁にでもなった気分だ。


 かつてはこの状態で十二神将を用い、神魔獣ドラゴンの触手ブレスを防いだのだ。相手がアギトやゲキド程度の小型魔獣であれば、散歩気分で蹂躙できる。


 まさしく馬鹿みたいな攻撃力を持つ神魔刀であるが、しかし、どうしようもならない点が一つ。


 魔獣の血肉が大量にばら撒かれるので凄く臭い!


 かつてニエモリでは記憶を失ってなんの心構えもなく匂いを嗅いだら悶絶しそうになった強烈な匂いが、辺り一帯に漂うのだ。すぐに揮発するといっても我慢できる限度を遥かに超えている。


 アケノモリ防衛局の砦を壊す寸前まで追い詰めた魔獣群はほぼ片付けたし、ゲスト参戦者としての役割は十分に果たした。


 後始末は防衛局員へ任せて、砦内へ逃げるとしよう。


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