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エレメンタルキャリバー  作者: 山本
第一章 クロモリ
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28話 エレメンタルキャリバー


 翌日。


 定刻になっても応接室に現れない上官殿とマルローネ殿について、呼びに行こうかどうか迷っていた。おそらくは昨日の影響なんだろうけれど……。


 すでに魔女二人は揃っており、ぎすぎすした空間を形成している。俺と昨日会ったばかりのエミリア殿ではこの雰囲気をどうにか出来そうもない。


 是非ともお二人に来て頂きたいのだが、呼びに行くと止める役が一人だけになってしまい、下手をするとこの応接室が消えてなくなる。せっかく銀色の草花を防衛局長に渡して機嫌を取ったのに、台無しにされては堪らない。


 それにこの後は、いつの間にか決まってしまったオクタヴィア殿と俺との親善試合があるのだ。せめて負担を分担しないと、戦う前に俺の胃に穴が開いてしまう。


 俺の件で小隊長や部隊長に小言をもらっていた上官殿の苦労が、段々とわかって来た気がする。ほんと、なんて悪いことをしていたんだろうと反省する。だから早く来て、上官殿!


 と、そんな都合のよい事を考えていたら応接室の扉が開いた。


 ようやく助け船が来たと思って視線を向けると……ぎょっとした。それは俺だけではないようで、部屋にいた全員が少なからず驚いている。



 全身を包帯で巻いているのは……上官殿だよな? 隣にはその腕をがっちり抱えたマルローネ殿がいる。え、なんだ、何が……昨日まではそんなケガをしている様子はなかったはずだけど。もしかして、捕食って言葉通りのことだったのか? いや、まさか……。


 戸惑っている俺達に頭を下げると、包帯男、もとい上官殿が辛そうに口を開いた。



「遅れて申し訳ありませン。その……なんだったかな……そう、あれだトンビ! アイツの体液を引っ被ったせいか少々皮膚に、あー、炎症が出ましてハイ、こン通りです……あぁ、こンな姿ですが任務に支障はありませンぜ! なにせ大変な任務だァ、一秒だって無駄にゃアできませン! は、はは……ハァ」



 その歯切れの無い、しゃがれて生気のない声はまるで別人のようだ。


 逆にそんな上官殿を支えるマルローネ殿は元気いっぱいというか、その覇気と生気はまるで後光を発しているような錯覚を覚える。今の彼女に勝負を挑んでも勝ち筋が全く見えないだろう。なにをどうしたら、そんな菩薩顔になれるのか?(現実逃避)



「いやその、確かに時間がない任務とはなったが、疲れを残したまま任務に取り掛かるほど余裕がないわけでもないぞ。特に今日はこのオクタヴィアとルートとの親善試合しかしないつもりだ。虹色の枝を確保する計画は私達で考えておくから、体調が悪いならゆっくりと休め。体調を整えるのも仕事のうちだ」

「いやっ、駄目ですぜ! ここで休ンだら今日一日、オレは」

「さっすが我らの主、クラウディア様です! 福利厚生をしっかりしてこそ、そのやる気は保てるということを、よっくご理解されている。安心してください、コウの事はこのマルローネがしっかりと看病して明日には万全の状態にしてみせますので。さぁいきましょう、愛の巣へ!」

「ちょ、え、ウソだろう!? た、助けてくれ、乙14142号、殺され」


 

 助けを求める上官殿に手を伸ばす暇もなく、瞬間移動のような速さでマルローネ殿は上官殿を拘束したまま去っていった。早すぎて声さえも掛けられなかったぞ。どちらかというと重騎士っぽいのに……たまげたなぁ。



「新参者の(わたくし)がいうのもなんですが……あの方たち、大丈夫ですの?」

「マルローネもコウも普段はしっかりしているのだが、極度に緊張を強いられた遠征で反動が来たのだろう。ああ言ったからには明日には万全の体調に仕上げて来る……と思いたいな。最悪、この枝葉を分けてやれば何とかなる」

「何を仰っているのです! それは本任務の要ではありませんかっ。体調管理も碌にできない愚か者に施してやる必要はありません。まったくあのよくわからない男はともかく、マルローネさんまでとは、見損ないましたわ!」



 完全な正論にぐぅの音もでない。俺だってあの二人には裏切られた気分だし、クラウディア殿も頭を抱えている。しかし、あんなボロクソのような姿になるなんて昨日はどれだけ激しい攻防があったのだろう。戦闘バカの俺には全てがモザイク仕様でなにがあったのか全くわからない。(現実逃避2回目)


 そんな俺達を見かねてか、コメカミに怒りマークを出しながらもエミリア殿が壇上に立った。


 どうやら今日の仕切りをやってくれるようだ。この地に着いて間もないというに彼女には感謝しかない。



「さて、それでは親善試合とまいりましょう。ルールはお互いに殺さないよう意識することくらいで、後はなんでもよしということで、よろしいでしょうか? お互いベストを尽くして今後の任務に支障がないよう、交流を深めてください」

「体調管理もできない男の同僚なんて試す価値も疑わしいですが、わかりましたわ。ですが私だけがペナルティを負うのは不公平というもの。私が勝ったなら、貴女はこの男に●●●されなさい。よいですわね?」

「ん? あーはいはい、そんな事にはならんから自分の心配だけしておれ。ルート・トワイス、後は任せたからな。コテンパンのけちょんけちょんにしてやれ」



 昨日の事で事情はよく分かったから手を抜くつもりはない、全力で勝ちに行くつもりだ。しかし、了承も取らずに俺の事を賞品にするのはやめて欲しいなぁ……。




---




 その後、もしかしたら先日のような大爆発があるかもという事を防衛隊に伝え、砦の外に出た。


 万が一、オクタヴィア殿が暴走して前みたいな超絶爆裂魔法を放っても許してね、という保険だ。それが放たれた際にはこの世に俺は居ないかもしれないが、残された恋人たちには手向けとなるだろう。俺の代わりに是非苦労して頂きたいものだ。


 と、いきなり弱気になってしまったが、目の前で水の塊を自分の身体の周りに浮かべてぎゅんぎゅんと旋回させているオクタヴィア殿がいるので仕方がないと思う。あの身体の奥底では大の男でも音を上げるような激痛が走っているとは思えない、犬歯を剥き出して獰猛な笑みを浮かべる様は、まさに水の魔女と言っていいだろう。



「さて、土下座するなら今のうちでしてよ? (わたくし)の水のドレスは手加減がききませんので。一発でも当たれば複雑骨折は免れませんわ。それでもやると言いますの、ルート・トワイス……でよろしかったかしら?」

「はは、名前を憶えてくださって光栄です。いや……手加減してくれて助かりますよ。もし、貴女が本気なら、この場に立った時点で消し炭になっていたでしょうから」

「へらず口を……ですが、その殊勝な態度はよろしくてよ。生き残ったなら私の靴磨きとして雇ってあげてもよろしいですわ」

「すみませんがそれはご勘弁を、この身は……すでにクラウディア殿に捧げておりますので」



 もはや何処にも居場所がない俺ではあるが、そう、せめてこの任務が終わるまでは……上官殿とマルローネ殿の未来をつなぐためにクラウディア殿の下で戦うと決めているのだ。だから……頼んだぜ、相棒。


 もはや黒というか空間の落とし穴のような闇に染まった黒木刀を軽く握り、自然体になる。


 俺に構えはない。あれは真正面から攻めて来る敵だけを想定したものだ。縦横無尽、後ろからさえも複数で攻めて来る魔獣には制限になる。魔女の魔法も同じだ。その気になれば、その周囲に浮かべている水塊を俺の周りに配置して全方位から攻撃するなんてこともできるはずだ。それが可能だと俺の想像力が告げている。


 手っ取り早いのは気持ちが整う前に一撃というのがセオリーだが、これは親善試合で不意打ちのような決着では後に残る。納得できるような負け方を呈してさし上げねば。


 さぁて、真剣勝負といこうじゃないか。まずは、その余裕を剥ぎ取って進ぜよう。



「では、始め!」


 

 進行役のエミリア殿が合図すると同時に、オクタヴィア殿の身体を旋回していた水塊が勢いよく飛んでくる。


 時速160kmは出ているんじゃないかと思うそれは、確かに当たれば複雑骨折は免れないだろう。なにせ速度を持った水は液体というよりは固体、表面張力は偉大だ。しかし、事前に用意という名の合図があって直線的に飛んでくるのであれば避けるのは容易い。すっと半身を傾けるだけで避けられる。



「え、うそっ?」



 何を驚いているのか……この程度、防衛局の『丁(訓練兵)』だって出来るぞ。本部詰めとか言っていたから、実戦慣れしていないのか?


 それから同じく水塊を飛ばしてきたが、撃つ動作が見えている魔法なんて避けてくださいと言っているようなもので、当たる方が難しい。水塊が小さく分かれても、連射してきてもそれは同じ事。


 ひょいひょいと避けて近寄り、オクタヴィア殿の頭にコツンと黒木刀を当てる。



「まずは一勝といったところでしょうか? 次はもっと本気を出して頂いて構いませんよ、親善試合にふさわしい戦いをしましょう」

「~~~ッ、上等ですわ! 『四精霊使い(エレメント)』の本気を見せてさしあげます!!」



 彼女がそう言うと、地面から爆発的に棘が生えた。事前に飛びのく準備をしていなければ、それに刺し貫かれていただろう。


 慌てて飛び退くも、連鎖的に生えてくる地の牙に一息吐く暇もない。強引に15mは離された。


 しかもそれで攻撃は終わらない。身体の周りに浮かべた水塊からは大魔獣を上下に切り離したジェット水流が奔る。水塊を飛ばす点の攻撃ではなく、水流は線の攻撃であり、それが縦横無尽に迫って来るので格段に避け難い。でもって、それが生やした地面の棘に隠れてやって来るのだ。


 本気で俺を輪切りにするつもりで……なんだか嬉しくなる。


 頭がおかしいと思うだろうか? 確かにそうだ。死が迫り来る中でそれを楽しむなんてどうかしている。けれど、それだけが俺に生きていることを実感させるのだ。全能力を惜しみなく注ぎ込んで暴れまわることが何よりも楽しい……馬鹿なガキ。


 どうした、俺は此処にいるぜ? そんなんじゃ、俺の命はやれないな。


 荒れた地面の全てを把握し、全力で駆け抜ける。時には跳んで水流を避け、時には地面の棘を黒木刀で砕く。慣れてしまえば後は単純作業だ。おぉっと、ここで火球も混ぜて来たか、けど今更そんなのには当たらないぜ?


 再び魔女殿の間近に到達した俺は、唖然としている彼女にまたしてもコツンと黒木刀を当てた。



「さて、もうそろそろいいでしょう。貴女の最大の一撃を見せてください。次に手加減をしたら叩き斬ります」

「…………承知しました、私を追い詰めた貴方に敬意を。全力で叩き潰して差し上げますわ!!」


 

 オクタヴィア殿が本気を出せるよう、背を向けてゆっくりとクロモリの方へ歩く。不意打ちは考えない。そんなことはしないって、これまで戦ってわかってる。何よりも、俺に向けられる殺気がびんびんと高まっているのを感じる。


 全力を出せる相手を不意打ちで殺しちゃ、勿体ねぇもんなぁ!

 

 振り返った俺の目に飛び込んできたのは八つの巨大な水塊だ。一つが4~5mはある巨大なそれ全てが俺を殺そうと殺気を向けている。


 これは避けられない。


 魔女オクタヴィアが地獄の痛みを超えて作り上げた芸術品だ。こちらも俺の持つ全てを使って応じなければ男が廃る。もう一度言う、頼むぜ相棒!


 

「さぁ、地獄へお行きなさいな……エレメントが一角、水のオクタヴィアが最終技。八岐大蛇よ、すべてを飲み込みなさい!!」



 たかが個人技に大層な名前を付けるものだ。しかし、そんな名前を付けたくなるのも分かる気がする。


 一つ一つが津波の如く大質量だ。アレを喰らったら全身の骨という骨を砕かれて、内臓もすべてが破裂。ショック死するのが先か、肺に大量の水を流し込まれて溺れ死ぬのが先かの選択肢しかない。


 だが、俺は今まで生きて身に着けた全ての術理を使い、コイツを切り伏せる!


 大上段からの一撃で一つ、下から左上に切り上げでもう一つ、横真一文字で更に一つ、真下からの斬り上げでとにかく一つ…………って、あー、もう無理、こんなん逃げるしかねーって、半分しか受け止められなくてゴメンッ!


 次々に襲ってくる大水塊を捌ききれず、避ける避ける、走って跳んで転がって、死ぬ気で避け続ける。


 台風最中の大川でもなければこんな大水は経験出来ないだろう。小便をちびったのは墓にまで持っていきたい秘密であるが……何とか生き残った。

 

 さて、お互い精も魂も尽き果てたようだし、此処で終わってもいいが、俺もオクタヴィア殿も五体満足だ。決着をつけるべきかな?


 生き残った俺を見て呆然としているオクタヴィア殿に歩み寄り、黒木刀を突き付けた。



「二勝一敗で俺の勝ち、でよろしいですか? 最後は受け止めきれずにすみませんでした」

「……何を仰っているのです、私の完敗ですわ。今までの無礼をお許しくださいませ」



 よしッ、ミッションコンプリート!!


 勝負に勝つことも、オクタヴィア殿へ実力を認めさせることも出来た。その上、誰もケガはしなかったし、これ以上はない成果と言えるだろう。


 クラウディア殿も満足そうに頷いている。


 さて、今日はこれだけだと聞いているし、あとは魔女殿に任せて休むとしよう。明日からは虹色の枝を求めて大変な日々が待っているだろうから休めるときに休まないとな。


 じゃあ自分はこれでと、防衛局に向かおうとしたら……誰かに小指を掴まれた。振り切ろうとしても振り切れない凄い力だ。


 えーと、オクタヴィア殿……この手は一体?



「困りますわ、私に勝った対価を受け取って貰わなければ。流石にこの場では衆人の目が厳しいので……あぁ、寝所にご案内頂けるのですね、どこまでも付いていきますわ。私、初めてですので優しくエスコートして頂ければ、いえ、強引にというのもよろしくてよ……なんにせよ貴方様に従いますので、よろしくお願い致しますわ」



 そういって俺を見る目はどこか蠱惑的で、まるで熱でもあるように上気している。


 美人さんにこんなに見つめられる経験がない俺はどぎまぎしていまうが、え、ナニ、何かあったっけ…………あっ、忘れてたけどアレか? 冗談じゃなかったのか!?


 どうしたものかと硬直しているとクラウディア殿がつかつかと近寄ってきて、鋭いチョップを繰り出し、俺の小指を掴むオクタヴィア殿の手を切り離してくれた。



「あら、この手は何でしょう? 私は今からこの方との●●●、もといロマンティクスが控えているのですが?」

「なんだそのあざとい隠語は……その件だが、なしにする。昨夜のことだが、ルートから申し入れがあってな、たとえ勝ったとしてもそのような不埒な真似は出来んと。いや、貴様の泣き叫ぶ姿を見れずに残念ではあるが、当人が嫌がっているのならば仕方なかろう? だから早く離れろ」



 クラウディア殿は、オクタヴィア殿から俺を庇うように牽制してくれた。あのままだったら、蜘蛛に糸をまかれた獲物のように取り殺されていたような気がして、正直助かる。しかし、なんだってこうも乗り気なんだ。そして、ロマンティクスってなんぞい?(現実逃避2回目)


 首をひねる俺をよそに、魔女二人は徐々にヒートアップしていく。



「あらあらまあまあ、いけません、いけませんわ! これは命を賭けて勝ち取った正当な権利、命を掛けて頂いたからこその相応しい報酬なのです。私の▲▲以上の対価など今は持ち合わせておりません、是非とも受け取っていただかなければ。約束を違えてはエレメントの名折れというもの」

「だから、こ奴はそのようなものはいらんと言っておる! もっと、その、あれだ……手を繋ぐから始まって、腕を組み、触れ合い、せ、接吻まで数年をかける、そんなじっくり熟成するような進捗を望んでおるのだ! それに、初めては城の最上階でと決まっておる。月明りに照らされながら一重一重と衣を脱いでいくと、私の美しさに我慢ならなくなったルートは無理やり私を押さえつけて肌に唇を……ふふ」

「それは貴女の妄想でしょう!? なんですか、その処女を拗らせたような願望は! 恥ずかしくありませんの!?」

「耳年増の貴様に言われたくないわ! こちらはすでにお姫様抱っこまで済ませてあるのだ。直接的な貴様ではとても辿り着けぬ境地よ、羨ましかろう? かっはっは!」

「ぐぬぬ……いいえ、この方の本性は野獣ですわ! きっとこれから薄汚い宿舎に私を連れ込んで、この厚く着込んだローブを無理やり引き裂き、嫌がる私を縛って天井から吊り下げた挙句に乗馬用の鞭で叩くのです。そして赤くなっていく私の肌に興奮したこの方は、立ったまま強引に私の▲▲を奪い、その後は寝る暇もなく●●●してくださる……そうに違いありませんわ!」

「ぶッ…………お、お主、ものすっごく、えっぐい願望を抱えておるな、流石にひくわ」

「あ、貴女のメルヘン趣味よりはマシですわ!」




 ……なんか俺の人格にすごい後付けがなされていく。

 

 それにさっきから飛び交っているその単語や妄想?は、俺の脳から400光年ほど離れた超弩級ピンク銀河にある言葉のようで理解ができない。スルーしていたが、昨日からちょこちょこ聞く●とか▲とか■とか全部そうなんだ。誰か翻訳して頂けないだろうか?


 ほうほうの体で魔女二人の間から抜けてきて一息吐いていると、審判役だったエミリア殿が俺の前に立った。



「では、僭越ながら私が。『お前の●を■んでやるから、▲▼を寄越せ』です。あ、失礼、魔女は■めませんでしたね。『お前の■■で、私の■■■■を、■■■■■の■■■■で、■■■■■』ではどうですか?」



 …………………………ごめんなさい、更に400光年ほど遠ざかった! もっと、俺のような戦闘バカにでも理解できるような分かりやすい単語はないものか?



「そうですねぇ、では『ちゅきちゅき大ちゅき』では如何ですか? ……これ以上の簡便化はできませんよ、理解できましたか? あとは自分でなんとかしなさい」



 ……理解はできた。理解は出来たが、なんでだ? 俺のやったことは彼女を真正面から叩きのめした、それだけだぞ? それが惚れた腫れたにどう繋がるというのか。



「さて、それなりに長く騎士を務めた私でもオクタヴィア様のこの反応は初めてなので、あの方の中でどのような心情変化があったのか想像もつきません。しかし、長い魔女の歴史の中で、一対一で男が真正面からエレメントを打ち破ったのは初めての快挙です。それがきっかけになった事は間違いないかと……あと、魔女の方々は若い男と出会いがありませんので……ぶっちゃけ飢えています」



 あー、それは……クラウディア殿の、俺の身体に対する反応でよくわかっているが……本当になんでだ? 好かれる要素が見当たらない。伝説に聞くアマゾネスだったら、自分より強い雄を求めてなんとやらは分かるんだけど、彼女たちは魔女だぞ? 地獄のような痛みに耐えて魔法を行使する理性の徒だ。少々、耳を疑うような発言はあるものの、その裡で凄まじい策略を巡らせているのは昨夜思い知らされた。そんな魔女が戦闘バカの俺をどうこう思う理由が本当に分からない。



「その答えは本人から追々聞き出していってください。あと私、たまに思うんですが、頭がいいのと馬鹿って矛盾しないんですよ。ま、これで私も肩の荷が下せて婚活ができます。あとは任せましたよ、『四精の魔女を制する器 (エレメンタルキャリバー)』」



 その意見には全く同意なんだけど……お願いですからその魔女の調教師か支配者みたいな二つ名は勘弁してください、定着したら泣きますからね……。


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