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エレメンタルキャリバー  作者: 山本
第一章 クロモリ
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18話 遠征準備


 魔女殿と共に応接室に戻ると、上官殿とマルローネ殿が立ちあがって迎えてくれた。



「よぅ、おつとめご苦労さン、どうだったァ? 返り血がついてねェってこたぁ、穏便に行ったンだな」

「本当に大丈夫ですか、誰かを亡き者にはしていないでしょうね?」



 二人の俺に対する先入観が酷い。任務に忠実で従順な俺を捕まえて何て言いぐさなのだろう。局長の横暴に付き合うほどお人よしではないが、節度はわきまえているつもりだ。



「お主らの懸念はもっともだが安心したまえ、想定の範囲で収まった。ようやく次の段階に移れるよ。さて、大型魔獣に一人で突っ込んでいった戦闘バカの件はひとまず置いて、これからの探索計画について話をしよう」



 あの時、出撃許可を出したのは魔女殿だったのに……理不尽な。


 胡乱な目となった俺を無視し、魔女殿は銀色の草花、若しくは、黄金の果実を得る計画を話していく。そのうちの一つについては魔法で探知できるらしく、在る方角がわかるとのことで、予想はしてたが何よりも有難い。また、深部に立ち入らずとも採取可能なため、記録がそれなりにある範囲での探索となり、虹色の枝に比べれば探索難易度は低い。


 問題は魔獣だ。


 今年はどうも魔獣の行動に特異なモノを感じる。単純に数は多いわ、大型魔獣が外縁部まで出っ張ってくるわで、より活動的だ。


 当然、クロモリの中においても生息域が記録とは異なっている可能性が高く、そういえばこの前の探索でも比較的安全とされる場所にカズラが居たり、アギトが群れで居たりと想定外の出来事があった。


 その時は魔女殿の爆裂魔法の影響かなと安易に考えていたが、想定外の出来事がこうまで続くと他の原因を疑いたくなる。なんにしても魔獣との戦闘が厳しいものになることは間違いなく、それに応じた探索計画が必要だろう。


 そういった意味で、深部を探索する前の浅部や中部での探索は、偵察の他、必要な補給物資の量を図るために実に合理的だ。



「隊列はルートを先頭に、少し離れてコウ、マリーと私だな。最も機敏で近接戦闘力が高いルートを偵察、兼、囮にして、我らが援護する形でとりあえずはやってみようと思う。異論はないか?」

「持つ武器を弓から槍に変えさせてもらっていいですか? ずっと引き絞っていちゃあ、腕も弓も持ちませンので。無論、いつでも使えるよう弓は背負います」

「我も剣の他に槍を賜りたく、コウと足並みを揃えた方がよいと思いますし、出来るだけ魔獣とは間合いを取りたく思います」


 

 魔女殿が提案した隊列は妥当だし、上官殿やマルローネ殿の武器換装はまっとうな提案だと思う。出来れば俺も遠距離攻撃ができる武器が欲しいんだけど、弓を背負うと動くときに邪魔だし……そうだな、手頃な石を2、3個袋に入れて腰に下げておくことにするか。


 

「そういえば、食料や水などの補給物資は誰が背負うんでしょう? 流石に最低限必要な自分の分は持ちますが、囮役の自分は分断された時のことを考えますと、多くの物資を持つのは止した方がいいと思いますし、動きが鈍りますので荷物持ちには不向きです」

「可能な限り私が背負うよ。魔法を放つだけだからお主らのように俊敏な動きはいらんからな。なに、足腰の強さには自信がある。任せるがよい」



 え、えー、流石にそれは……いいんだろうか?


 視線でマルローネ殿に疑問を呈すると、いつもの菩薩顔だった。いや、それは大丈夫なのか駄目なのか、どっちだ!?



「なんだ、疑うのか? 魔法の制御には意思の強さが必要でな、剛き肉体には剛き精神が宿るという格言の元、魔女は素手による戦闘訓練を行っているのだ。武器なしであればマリーにも後れを取らんぞ」



 そういうと、袖をまくり上げて力こぶを作って見せる。


 確かに普通の女性よか鍛えている事が見て取れる、綺麗で均整の取れた二の腕をしている……と思っていたら、机に置いてあった飾り目的のリンゴに手を伸ばし、めしゃあ、とか音を立てて握りつぶした。


 え、ナニそれ……こわッ!



「ぬっふっふ、これでも魔女の中では武闘派で通っておるのだ、近年まで続いていた魔女闘技杯、そのディフェンディングチャンピオンの名は伊達ではないぞ!」

「……少なくとも、我は絶対に素手ではクラウディア様に挑みたくはない。魔女オクタヴィア様を気絶するまで殴り続けて歴史ある闘技杯に幕を降ろさせた。それで付いた渾名が血染めのクラウディアだ」

「おいおいマリー、それは秘密にしろと言っておいただろう?」

「はっ、失礼しました」



 穏やかに笑う魔女殿とは反対に、マルローネ殿の顔面は蒼白だ。ついでに上官殿の顔色も真っ青だ。


 この調子だと、他にも色々な逸話が出てきそうな気がする。これは絶対に魔女殿を怒らせてはいけないな。近接でも遠隔でも隙がないとか、魔女ってやつはどれだけ人間兵器なんだか……。


 まぁ、あれだ……護衛がちょっと楽になったと前向きに考えよう(現実逃避)。


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