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2 モブ令嬢のワガママ(違う)

「殿下!!!公爵令嬢様との婚約をご解消願いたい!!!!」


 中庭の王子に向かい叫ぶダニエル。


「なななななな」

 ルシンダは慄いた。不敬である。ていうか何。この人こんな人だっけ!?


「何事だ!」

 王子殿下が男爵令嬢と寄り添い二人三脚かっつーべったりぐあいでこちらへ来た。護衛がめっちゃ睨んでいる。ルシンダはなんでこうなったと絶望していた。


「殿下、卒爾ながらお伺いいたします。公爵令嬢様を愛していらっしゃいますか?」

「何を言う!我が真実の愛はただ一人このエミリー(男爵令嬢)に捧げられるものである!」


 ババーン!


 王子あほやったーー!しってたけど。


「なるほど、了解いたしました。では即刻婚約を解消して頂きたい!!」


 バババーン!!!!


 ルシンダは彼と己の頭と体がお別れする幻覚を見た。


「何を言う!!不敬であるぞ!

 私とてこの婚約には不満しかないが、王家と公爵家との繋がりを深める為の王命によるもの。それを解消せよとは王家に叛意のあるものか!?」


 一族郎党の頭と体もお別れした。


「これは異なことを。学園にて身分は気にするものではない、自由に意見し交流すべしとは、殿下自ら再三仰られていたことではないですか。それゆえ、臣下の身ながらお願い申し上げた次第です」


 言ってた言ってた。男爵令嬢へばりつかせる言い訳にめっちゃ言ってた〜


「う、うむ…だがしかし婚約を解消せよとはどういうことだ?貴様、よもや公爵令嬢に懸想しておるのか?ふふふ、よかったではないか、お前のような端女にも拾う神がいるのだな」

 ニタリと公爵令嬢をねめつけながら王子は言った。

 

 きも〜〜〜!!!うっわきもこいつゴミかよきめえ〜〜と思いつつルシンダはちょっと不安になった。えっそうなん?


「いいえ違います」

 違うんかーい!


「で、ではなぜ…」

「ルシンダが僕の婚約者だからです」

 ????

「ルシンダが、殿下方の婚約に不満を持っていた。ならば婚約者たる僕は彼女の不満を解消すべく努力すべきでしょう。違いますか?」


 えっ……私のため……??


 トュンク……はしなかった。みんなこっち見てる。やめーや。


「それはつまり……ルシンダ嬢への愛ゆえにということか…?

 ふっ…すばらしい(ファサ)君も真実の愛に生きる者だったのか…」

「いいえ違います」

 違うんかーい!!


「僕と彼女は政略的な婚約で結ばれました。なればこそ、縁を繋ぐべくお互い努力すべきでしょう。それが一番平穏で幸せに過ごせる方法だからです。だから僕は彼女の望みを叶える助けをしたいのです」


 な、なるほど〜…?謎のなるほど感がいつのまにやら集まっていたギャラリー含めて一帯に蔓延った。大体みんなそんなような婚約しているのである。

 ルシンダもなるほど〜?と思った。しかし…


「婚約者のワガママを叶えるのは男の務めですからね!」

 胸を張るダニエル。


 ………………は!!!????


 ルシンダは今度こそ目を剥いた。


 ワガママ???? 


 いや誰がそんなんしてくれ言った!?人のせいにしないでくれる!!?


 ってかなにどや顔で男の務めって!うっざ!!!は!!!???


「だ、だからと言って王家の婚約に口を挟むとは…」


 ルシンダの憤りも知らず二人の会話は続く。


「それは勿論、他人事ですので口を挟む権利はありません」


 ダニエルが言う。他人事とかいう問題ではない気がする。


「ただ、ルシンダが殿下の婚約に不満を抱く理由というのが、殿下が公爵令嬢を愛していないというものでしたから、ご本人に伺いました。

 ルシンダの勘違いかもしれませんからね。

 しかしやはり殿下は公爵令嬢を愛していないとのことでしたので、これは解消して頂くべきかと愚考した次第です」


「で、ですけどもっ…」


 なんとここでモブBことルシンダの友人キャサリンが口を挟んだ。


「政略による婚姻など、愛がないものが殆どではありませんか…!?お金のためや家門のため…望まぬ結婚をしているものは多うございます!まして公爵家と王家をつなぐための婚姻ですもの。愛がない程度、解消の理由になど…!!」

 

 キャサリンは実家のために卒業後は五十すぎのじいさんの後妻になることが決まっているのだ。


「それは、婚姻の理由は人それぞれであり、愛があればいいもの、なくてもいいもの、それぞれでしょう。

 ただ、殿下は婚姻に愛を必要とする方とお見受けします。その為、愛していない公爵令嬢との婚約に不満で、冷たくあたられているのでしょう」


 その通りだとばかりフンスと頷く王子様。


「ご当人が望まないのであれば、お二方の婚約理由は王家と公爵家との縁を強化する為のみということですが、しかしこれほど不仲であればその目的も達せられないのではないですか?

 といいますか、殿下が一方的に公爵令嬢を蔑ろにしていることは広く知られており、それを王家側がおいさめしていないということ、これすなわち王家が公爵家を蔑ろにしているということを、我らに日々見せつけていることに他なりません。

 果たしてこれで両家の絆が深まるかと言えば否でしょう公爵家がブチギレて国内が荒れるのが関の山では?

 更には隣国との関係も懸念されます。公爵令嬢の母君は隣国の王弟殿下の御息女です。べたべたに溺愛されているというのは有名な話です。勿論孫たるご令嬢もです。

 そんな彼女をこれみよがしに冷遇し蔑むことが果たして我が国の利になりましょうか。いえならない。

 何もいいことがない婚約ならば、今のうちに解消してしまうのが一番です。

 僕とてこの婚約が解消すべきでないものならば、ルシンダがワガママを言ったとて彼女の不満を慰める、他の方法を考えました。しかしこの婚約に益はない!

 とすれば、すみやかに婚約解消して頂くことが、殿下、公爵令嬢、ひいてはこの国と僕とルシンダの為に一番いい、全員利がある。これは婚約解消すべきでしょう!さあどうぞしてください!」


 うわーーーーーてなった。みんなうわーーーーーーてなったのだった。あとまたワガママて言った!!誰がや!!


 しかし言われてみりゃそりゃそうかという気にもなった。いらん婚約無理して続ける必要ないよなあ…


「な、なにをっ……!簡単に言うな!解消すれば公爵令嬢とて傷物になるのだぞ!」

「なりません。殿下の責であることは周知されております」

「な、なにを…!!悪いのはそいつだ!優秀さを鼻にかけ私を見下しておる!我が心を繋ぎ止められなかったそいつが悪いのだ!」


 そうなのだ。それがあるから公爵令嬢がプークスされているのだ。


 と言うか王子も随分ストレートに劣等感暴露したな。

 みんなわかっていたのだ。だからだ。あの完璧令嬢アホにコケにされとるでとプークスされていたのだ。


 しかしダニエルはキョトンとして、

「何故です。浮気はする方が悪いでしょう。それに、なぜ公爵令嬢様のみが殿下の心を繋ぎ止めねばならぬのです。殿下とて公爵令嬢様の心を繋ぎ止めるべきではないですか。

 才が足らねば、令嬢の満足するまで努力すべきではないですか。

 つまり………ふっ………」

 ダニエルが笑う。


「殿下は、婚約者のワガママを叶えることも、できなかったということですね……!!」


 めっちゃ下に見てきたーーー!!!


 くっ…と後ずさる王子。

 いやあの殿下見下してもないしワガママって…という顔の公爵令嬢。


「さっきから何をっ…なぜ私が女のワガママなど叶えねばならんのだ!」


「かくあるべしと母が申しておりました。夫は妻の望みを叶えるものだと。

 母の言うことですから間違いありません」


 母が言ってたか〜〜〜。


 周囲が微妙な空気になった。

 母か〜〜〜。

 ルシンダは半目になった。

 さっきからこいつと結婚して大丈夫か度が爆上がりである。


「ご母堂が……。では仕方がないな。母の言うことには従うべきだ」


 こいつもか〜〜〜〜〜〜。


「しかし浮気などとっ…!!これは真実の愛である!!

 貴様こそ、婚約者を愛していないというのであれば、そのようなワガママばかりの女、婚約解消すべきではないか!?」


 飛び火したーーーー!!!

 ルシンダは慌てた。

 ていうかなんだワガママばかりって!!濡れ衣だ!!!!


「いいえ。先に申し上げました通り、婚約の成立条件は人それぞれです。

 我らの場合、お互いに理解し合い平穏に過ごしていくことがそれにあたります。双方それで了解しておりますので問題ありません」


 双方了解?ああそういや顔合わせの時に、これから互いに理解を深めるられれば云々言ってたな…せやね、変な人でなくてよかったわくらいに思ってた…変な人だった…。


「くっ……!だが本当にそうか!?ルシンダ嬢は本当は愛を必要としているのではないか!?

 ワガママ娘とはいえ、自ら愛を望むなど羞恥ゆえ言い出せず貴様に同意し、だからこそ我らの婚約に愛を求めたのではないか!?」

「む…そうなのかねルシンダ?」

こっちふんなーーーーーー!!!!


 

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