1 モブ令嬢のわるものムーブとわからん婚約者
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「ふむ!それはなぜだね!?」
えっ、と振り返るとそこに己の婚約者がいた。
ここはこの国の貴族子女(及びその係累や裕福な平民)の通う王立学園で、ルシンダは平凡な子爵家の娘として在籍している。
現在学園には第一王子殿下と婚約者の公爵令嬢も在校しており、この二人の不仲が生徒たちの娯楽の種だった。
不仲というか、王子が一方的に公爵令嬢に冷たく当たり、平民上がりの男爵令嬢を侍らせている状況で、あの美しく完璧な公爵令嬢が袖にされているということに天の果実が地に落ちたような一種暗い喜びをもって生徒たちはさざめいていた。性格が悪い。
現在も王子と男爵令嬢は中庭でちちくりあっており、その横の通路を通りかかった公爵令嬢は辛そうにそっと目を伏せた。
それを、さらに通りかかったルシンダとその友人二人は目撃したわけだ。
三人は目配せをしあい、以心伝心今や!!と3人揃って扇で口元をかくしくすくす笑い、
「まあお気の毒ですこと」
「仕方ないですわ殿下は真実の愛を見つけられましたもの」
「婚約者として相応しくないですわ。はやく解消してさしあげればいいのに」
割りセリフも完璧に、すれ違い様見事言ってのけたのである!
さらに俯きがちになる公爵令嬢に、日頃からあんな美人なのに男一人つかまえらんないのねー!ざまあwwwと邪悪丸出しできゃっきゃしていた三人は、言うたったー言うたったぞー!!とやり遂げた感ぱんぱんであった。
まああの色ボケきもいわよねー!クソビッチが女王とかなったら笑うんだけどwとかも日頃言っているのだが。
略奪女も嫌いだが、何もかも上の女に聞こえるように嫌味たれられる機会などそうないのだ。
どうせやりかえしてこんやろの舐めきった嫌がらせである。有り体にいって三人組は性格が悪かった。
そしてうちらマジで悪役令嬢もんのクソモブみたいじゃん〜wwと、謎に意気揚々と膨らんだ鼻の穴を優雅にかくして立ち去ろうとした三人——というか、ルシンダに対し、声がかけられた。
「ふむ、それはなぜだね!?」
ルシンダの婚約者、ダニエルがそこにいた。
「な、なぜとは…」
ルシンダはキョドった。
ダニエルとルシンダは家の事業の都合による政略結婚である。
数年前に婚約を結んで以来、可もなく不可もない良く言えば穏やかな関係を結んでいた。
なので恋情というのは持ち合わせてはいないが、人に嫌味を垂れてプゲラしている醜い姿を見られるのもバツがわるい。
自分の行いが醜いとわかる程度には良識がある。良い顔しときたいのだ。
「な、なぜと申しますと…?」
「君はこちらの公爵令嬢様を殿下の婚約者として相応しくないと言った。何故か?
家格、才覚、政情その他もろもろ彼女以上に相応しい女性はいないのではないか?何が相応しくないというのかね?」
キリッと問うてくるダニエルにルシンダは内心白目を剥いた。
何も相応しくないことないです〜!!!
理由なんてないのだ。完璧女が貶められててざまあってだけなので。
しかし吐いたツバは飲めない。理由がいる。
「そ、それは…殿下に愛されていないからですわ!」
ババーン!!!
「つまり君は公爵令嬢が殿下に愛されていない、ゆえに婚約者に相応しくない、なのに婚約解消されないと、それが不満なのかね?」
もうそれでいいですとコクコク頷くルシンダ。帰りたい。
ふーむと首を捻ったダニエルは、成り行き上その場に足止め喰らっていた公爵令嬢に向かい尋ねた。
「あなたは殿下に愛されていないのですか!?」
ババーン!!
何聞いてんだこいつ!!!!
その場の全員が青ざめた。公爵令嬢は泣きそうになった。
「そ、その…私ごとき殿下の御心を察するものではありませんが…おそらくそのように思います…」
もうほとんど首が下を向いている。大丈夫かこの人とルシンダは自分の所業を棚に上げ心配になった。
「では、愛されないがゆえに殿下の婚約者に相応しくないと思われますか?」
もうやめたれや!公爵令嬢は蚊の鳴くような声でそうかもしれません…と言った。
「そうなのですね。わかりました」
ダニエルは頷くと、
「殿下!!!公爵令嬢様との婚約をご解消願いたい!!!!」
中庭のいまだちちくりあう二人に叫んだのだった!