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第2話「通学路のひと時」



「ふーんふーふーん♪」

「お、ご機嫌だね」

「うん!今日は図工の日なの。

 お花の絵を描きに行くんだー♪」

「あー、あったねそういう授業。

 森のところに行けるからあたしも楽しみだったな」

「わたしもあそこ好き!

 うさぎさんがいる時もあるし」

「あはは、すぐそこが山だもんね

 あたしの時は鹿さんが入り込んでた時とかあったよ」

「ほんと!?

 わたしも鹿さん見たい!」

「ちゃんとお絵描き頑張ったら、今日来てくれるかもね?」

「うん、すっごいの描く!

 持って帰ったらおねえちゃんにも見せてあげるね」

「ふふ、楽しみにしとく」


住宅地や駅前からはやや離れてはいるものの、時間帯のためかそれなりに人通りのある通学路を、2人は仲睦まじく話しながら進んでいく。

やがて前方に大きな門が見えてくると、千紗は門の前に佇む人影に気づき大きく手を振った。


「おーい、香澄ちゃーん!」

「あっ、千紗ちゃーん!」


大きなその声に振り向き、千紗と同じ年頃の少女がこちらに手を振り返す。

短くまとめたポニーテールを揺らしながらこちらに駆け寄る少女に、千紗は改めて元気に声をかけた。


「おはよっ香澄ちゃん!」

「おはよう千紗ちゃん!

 裡子おねえさんもおはようございます!」

「おはよう香澄ちゃん。

 今日も元気に挨拶できてえらいね」

「えへへ」

「おねえちゃん、わたしはわたしは?」

「はいはい、千紗も元気でえらいよ」

「んふー♪」


褒められて照れくさそうに笑う香澄に、満足げな千紗。

2人の微笑ましい様子に裡子も自然と笑みをこぼす。


「香澄ちゃん、今日何描くか決めた?

 わたしはお花にする!」

「わたしは鳥がいいな。

 ほら、小川のとこにいつもいる子たち」

「あー、そっちもいいなあ。

 迷っちゃう」

「あ、それなら…」

「はいはい、2人とも後は歩きながらにしよ。

 あんまりのんびりしてると遅刻しちゃうよ」

「「はーいっ!」」


元気に返事をすると大門をくぐり、子供たちはじゃれ合いながら坂を登り始める。


「ふぅ、朝から元気だねえほんと」

「ね〜、若いっていいよねぇ」

「うひぇ!?」


突然耳元で聞こえた声に、裡子は驚きの声をあげて振り返る。

いつの間に来ていたのか、すぐ後ろには沙結流が立っていた。


「はーびっくりした…

 ちょっとゆる、耳元でそれやめてっていつも言ってるでしょ?」

「んふふ、裡子ちゃんはいい反応してくれて楽しいからねぇ」

「心臓に悪いっての、全く…

 ほら、馬鹿なこと言ってないであたしらも行くよ」

「わわ、さすが短距離の人は早いなぁ。

 待ってよ〜」


坂の中腹あたりまで進んでいる子供達に追いつくべく駆け出す裡子に、

あくまでのんびりとした調子で沙結流が続く。


「ゆるに合わせてたら遅刻しちゃうでしょ。

 ほら早く早く!」

「は〜い。

 お〜いおチビちゃんたち〜」

「あ、ゆるおねえちゃんだ!

 おはよー!」

「おはようございます!」

「ほい、おはよ〜。

 そんなに急ぐと危ないし、お姉さんたちとゆっくりいこ〜」

「まだ言ってるし…

 もうゆるお姉ちゃんは置いて先行っちゃおっか」

「「はーい!」」

「ええ〜!?

 ちょ、ちょっと待ってよ〜!」


そのまま駆け足で先を行く裡子の言葉に、沙結流も慌てて走り出す。

そうして明るい声を響かせながら、4人は坂の上、それぞれの校舎へと向かうのだった。


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