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第1話「いつもの朝」

ピピピ…ピピピ…


「ん、あー…ほいっと」


目覚まし時計に起こされた裡子は、アラームを止めて体を起こした。

時刻は午前5時半。

普段ときっかり同じ起床時間である。


「あふ…さーて、準備しますか」


そうあくび混じりに呟くと足音を抑えつつ階段を下り、洗面所で朝の準備を手早く済ませる。

着替えまで済ませると台所に向かい、エプロンを着けて手際よく2人分の食事の準備を進めていく。

卵焼きと焼き魚のいい香りが漂い始めた頃、2階からパタパタと足音が響いてくる。

その軽い音に見合わない速度で居間にたどり着くと同時に、居間の扉が勢いよく開かれた。


「おねえちゃんご飯作っちゃった!?」

「千紗〜?まずはおはようでしょ?」

「おはよう!」

「うん、おはよう。

 今朝は卵焼きとサラダとお味噌汁だよ」

「わ、やったぁ!…はっ!

 うう、ちがくてぇ」


飛び込むように居間に入ってきた妹、近守千紗(ちかもり ちさ)はその言葉を聞いて

パッと顔を輝かせるも、何かを思い出したかのように肩を落とす。


「おねえちゃんの卵焼きは大好きだけど…

 わたしも一緒に作りたかったのに〜!」

「はいはい、後で聞いたげるから、早く顔洗っといで。

 卵焼き冷めちゃうよ?」

「んもー!!」


ぷりぷりと怒りながらも素直に洗面所に向かう妹の姿に笑みを漏らしつつ、

裡子は朝食をテーブルに並べていくのだった。


「もー、いつも先に作っちゃうんだもん。

 わたしもお手伝いしたいのに」


朝食が終わり、学校の準備まで済ませてなおまだ不満げな千紗に裡子は苦笑いする。


「晩御飯とか手伝ってくれるだけで十分だよ。

 千紗にはいっぱい寝てもっと元気に可愛く育ってもらわないとなんだから」

「ちゃんとおっきくなってるもん!

 おねえちゃんだって朝早くて眠いでしょ?

 わたしがお手伝いしておねえちゃんに楽させてあげるの!」

「ふふ、ありがと。

 それなら早起きできるようにならないとね?」

「ん!明日こそ早起きする!」


むん、と気合いを入れるように拳を握る千紗。

その姿を微笑ましく思いつつも火の元を確認すると、姉妹揃って玄関横の和室に向かう。


「お父さん、お母さん、行ってきます。」

「いってきます。」


いつものように仏壇に手を合わせて挨拶をする。

写真の中の両親もまた、いつものように笑顔で見送っているようだった。


「よし、それじゃ今日も元気に行こっかね」

「うん!」


戸締りを済ませて手を繋ぎ、通学路を進んでいく2人に近所の住人から声がかかる。


「あら、おはよう。

 今日も仲良しさんねえ」

「おはよーございますっ」

「おはようございます、田中さん。

 もちろんです。

 姉妹ですからね♪」

「お、裡子ちゃんたちかい。

 気ぃつけていっといでなー」

「はーいっ!」

「鈴木のおじさんも腰気をつけてね?

 また動かなくなっても知らないよー」


次々にかけられる声に元気に応える2人を見送る大人たち。

そのうち1人が安心したように息を吐きつつ言う。


「本当に、元気になって良かったなあ」

「ええ…本当に。

 色々とありましたからな」

「さ、私たちもお仕事頑張りましょ。

 子供たちの元気に負けてられませんからね」


しみじみと呟きながら2人の背中をが見えなくなるまで見守り、

大人たちは自分たちの日常に戻っていくのだった。


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