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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第四章 大きくて小さい子・大きいけど小さい部屋
88/489

7月1日(金) 18:00〜19:00

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第四章 大きくて小さい子・大きいけど小さい部屋


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

「それで、幹侍郎ちゃんとハルカちゃんの話は、秘密にしてもらえる?」

「! ……っ!!」

 ユカちゃんはまたなにかを言おうと口をパクパクしてるけど、やっぱり言葉が出てこない。

 ちょっと待ったら私が手を置いていた肩からも力が抜けた。

 なにかを諦めて気が抜けたのだろう。要は受け入れる気になったんじゃないかな。

「……防衛隊の携端を、外部の人間が不正に操作したらけっこう重い犯罪になるのは知ってる?」

「なんか、聞いたことぐらいはあるかも」

 本当は同じ話でハルカちゃんにも注意をしたけど、私の知識はユカちゃんほどには詳しくはないはずなので、話をわかりやすくにするためにここではとぼけておく。

「違法行為なんだよ。それに、急に電源が切れたり通信不能になるったら記録が残るから、追跡したら分かっちゃうよ?」

「それは、ハルカちゃんによると、今日はハイキングコースの方に行ったっていう欺瞞情報を流してるらしいよ……。あと、窓ちゃんから聞いたけど、防衛隊の規則ではプライバシーの兼ね合いもあるから位置情報の追跡は事情がない限りしないことになってるらしいって。それと、ハルカちゃんは宇宙から来て税関通ってないから存在自体が違法だとか、自分の存在は法に定めがないから合法はなくても違法ではないかも、みたいなことも言ってた」

「……はぁ」

 ユカちゃんの疑問に答えるというよりも、その話は知っているということを表現するためにまくし立てながら、私が言うだけのことを言ったら、けっこう長い沈黙を経てユカちゃんが溜息をついた。

「わかった、降参。秘密にする。ただ、本当に違法行為だから、私は極力不関与を貫くからね。私に余波が及びそうになるなら、その時は秘密にもしない」

「うん、それでいいんだ。仕方ない。ゴジは幹侍郎ちゃんのことを長く秘密にしたいとは思ってない。できれば秘密にもしないでなんとかしたいけど、幹侍郎ちゃんが自分と引き離されたりするのが嫌なんだって。だから、そこの目処がつくまで秘密が守れるなら良いそうだよ」

「本当は秘密にしたくない?」

 ユカちゃんが不思議そうに聞き返してくる。急に幹侍郎ちゃんを見せられて受け入れることに苦労している時に、先々(さきざき)のことまで含めてゴジが独りで長々と考えてきたことが全部わかるわけではないのは仕方ない。

「ユカちゃん。あの部屋、どれぐらいの広さかわかる?」

「さあ? 寸法まではわからないけど」

「実はね、幹侍郎ちゃんって身長二〇メートル弱だから、人間の十倍ぐらいの大きさなの。あの部屋の幅と奥行がおよそ五〇メートルと一〇〇メートル。人間サイズだと五メートルと十メートルで五〇平米で、間取りにすると2DKぐらいの広さしかないんだよ。マンション住まいなら上等の部類かもしれないけど、窓も無いし閉じ込めたきりだと思うとさすがに可哀想。それで、なんとかしたいんだってさ」

「……ああ、そういうことね」

 なんとかとは言っても、ただ単に幹侍郎ちゃんを外に連れ出したら見つからないでいることはできないだろう。たとえ折瀬が田舎でも、あの大きさでは人目につかないでいることはできない。閉じ込めていては可哀想だから外に連れ出してあげたい、外に連れ出したら誰かに見つかる、見つかったら引き離されることになる、だから連れ出せない。ゴジにとっての幹侍郎ちゃんの事は、いまはそういう苦しい均衡状態におかれている。

 幹侍郎ちゃんをなんとかしたいというゴジの気持ちは、ユカちゃんにとって納得の行く理由だったらしい。そこに納得ができたら、生まれたときから同じ集落に住んでる幼馴染なんだから、流石にほだされてくれるみたいだ。

 あと、地下の部屋に行く道は私達が通った通路だけなので、ただ幹侍郎ちゃんをあそこから出そうと思っても通れる道が無い、みたいなところはある。いざとなれば、ゴジがまたなんか機械を出してなんとかする事もできるだろうから、そんなに障害ではないんだけど。



━━━━━━━━━━

7月1日(金)

     19:00

━━━━━━━━━━


 これぐらいまで話したとき、ハルカちゃんが私の名前を呼びながら階段を上がってきた。

 どうやらゴジとふたりとも地下から出てきたらしい。

 部屋に入ってくるハルカちゃんを見るユカちゃんの目が非常に厳しい。

 まぁ、あの反応を見る限りそうだろうなぁ。

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