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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第四章 大きくて小さい子・大きいけど小さい部屋
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……7月1日(金) 16:25

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第四章 大きくて小さい子・大きいけど小さい部屋


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

「まったく、あんたはほんとに適当なんだから」

 お母さんかよ!

 なんなんだよ優花子は!! 何歳だお前!!!

 って、いまは口喧嘩をしてる場合じゃないから言わないけど。


「深山、佐々也が言う通り、実際に幹侍郎(みきざぶろう)に会ったら信じるとか信じないって話じゃなくなるってのは本当だと思う。だから深山が変わるわけじゃないよ」

 ゴジからの援護。

 まぁでも、実際に会ってしまったら信じるも信じないもないっていうのはその通り。少なくとも私はそうだった。とはいえ、私は指切り落としてるのを見てハルカちゃんのことをさっさと信じちゃったけどユカちゃんはそうでもなかったから、ユカちゃんの方が攻略難度は高いのかもしれない。

「ちょっとなに言ってるかわからない」

「幹侍郎に会ったらわかるよ。その時のことのお願いなんだ。頼むよ」

「私が会いたいって希望したわけじゃないんだけど……」

「それは僕も……」

 ユカちゃんの言葉にゴジが鼻白む様子を見せた。

 誰の希望かと言えば、今日ユカちゃんにということに関しては窓ちゃんの希望ということになる。ゴジに関しては色々と悩むところがあって、今日ユカちゃんに話したいのかと言えばそこは複雑なところだろう。

 でも、それをユカちゃんに言っても、ユカちゃんの心証が悪くなるだけだわな。

「……いや、確かに深山が好んで来てくれたわけじゃないのはわかるよ。でも、幹侍郎をこのままにしておけないし、信用できる人を増やすしかないんだ。だから、まげて頼む」

 言わずに堪えました。

 これは窓ちゃんのゴジに対する好感度+3、ユカちゃんの好感度変動なし、私からゴジへの信頼度+1。

「あ……、あのね、優花子。その……私が頼んだの。こんなに大きな秘密を私が優花子に秘密にし続けるのは難しいと思ったし、秘密にしたままだと私の気持ち的にも良くないと思って……」

「……うん」

 どことなく険悪になったゴジとユカちゃんの間に窓ちゃんが割って入る。

 二人の言葉にユカちゃんは面食らったのか言葉に詰まっている。

 男女三人、会話に参加してない私から視ると、絵面だけならなんか修羅場っぽい。

 これは彼女に現場を押さえられた浮気男と、それを庇う浮気相手の構図かな?

 美少女二人と気の弱そうなのっぽの男子生徒。これだとユカちゃんが彼女役になるのかぁ。生徒会で忙しくしていた優等生の彼女が彼氏を構わずにいたら、二人の秘密の交際を知らなかった気の弱そうなクラスメイトに横入りされちゃった感じかな。

 私は黙って見ていたつもりだけど、言葉を探していたらしいユカちゃんと目が合った。

「ちょっと佐々也。あんたなにニヤニヤしてんのよ」

「あ、あれ? ニヤニヤしてた?」

「してたじゃなくて、いまもしてるわよ」

「ごめんごめん。なんか男女の修羅場みたいで面白くなっちゃってさ。ほら、実物ってあんまり見る機会ないからね」

「なにそれ! なんであんたじゃなくてあたしなのよ!」

 ユカちゃんが言ってしまってから「あっ、やべ」みたいな空気を出している。

 これはあれだ、私とゴジが付き合ってるように見えて、窓ちゃんがどうもゴジを好きらしいという例の話だわな。

 まぁ、薄々感づいてはいるけど、ややこしくなるからここは知らんぷりをしよう。

 それにしても、ゴジも窓ちゃんもユカちゃんが出してる微妙な空気に気づいてなさそうなところがなんだかな、という感じではある。

「え? だって私は別に怒ってないから、窓ちゃんと言い合いする必要ないし」

「あたしだって怒ってないけど……」

「じゃあさ、ゴジの弟に会ってあげてよ。ちょっと驚くところもあると思うけど、いじめたり怒ったりしなけりゃ平気だよ。いきなりいじめたりしないでしょ?」

「よっぽど失礼なことをされたりするんでなきゃ、いじめたりはしないけど……」

「じゃ、行こうよ。地下なんだ。玄関から靴取ってこよう」

「は?」

「まぁまぁ、いいからいいから」

「……わかったわ。佐々也はまったく、いっつもわけわかんないんだから」

 私に言われたから渋々みたいな事を言ってくる、こういうところ、ユカちゃんは本当にお母さんっぽい。

 それにしても濡れ衣だなぁ。

 ユカちゃんは相変わらず、私をなんだと思っているのか……。

 一連の話ではユカちゃんから見てわけわかんないのは私じゃないはずだぞ。ハルカちゃんも幹侍郎ちゃんも私の影響で普通と違うわけじゃないんだから。

 いやまぁ、ユカちゃんなりの納得として「佐々也の言う事なら仕方ない」という不合理の受け皿になってるんだろうことは理解できるんだけど、なんで私なら仕方ないのかというそこ(・・)が心外だ。何度も繰り返してるけど、ユカちゃんは私をなんだと思っているのか……。

 釈然としない気持ちになりながら私がユカちゃんを説得している間、ちらっと様子をうかがったところ、窓ちゃんはゴジに対する気持ちがバレたと思ったのか困った表情。ゴジはなにを思ってるのかなんだか情けなさそうな顔をしていた。

 ハルカちゃんは無。ハルカちゃんはこういうの見てなにを思ってるんだろうか。

 一方でここらへんの成り行きから推測するに、ユカちゃんも窓ちゃんからはゴジを好きだって話を聞かされているわけではなさそうだ。でも察してるっぽい。言うなれば、窓ちゃんの恋愛感情に関して、ユカちゃんは私と同じぐらいの立場だ。

 あとでそれとなく聞いてみるかなぁ。

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