7月1日(金) 15:30
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第四章 大きくて小さい子・大きいけど小さい部屋
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7月1日(金)
15:30
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そんなこんなで金曜の放課後。
ホームルームの後、みんなとお別れの挨拶をしたり、お決まりのやり取り。ぞっちゃんも「さーちゃ〜〜ん! また月曜日に会おうね〜♥」という挨拶をしてリモプレから落ちていった。今日はぞっちゃんは中の良い子達と隣の市にある麓の街までお買い物に行くそうだ。たまの方は、毎週金曜には水泳部で折瀬郷の本校舎。
窓ちゃんとも「また後で」という挨拶をして、私もリモプレから落ちる。
また後で。
あれから毎日、窓ちゃんは会いに来てくれている。「防衛隊の出動があったら来れなくなっちゃうんだけど」とは言っているけど、窓ちゃんの出動があるのはTOXの予報範囲に日本が入る場合、つまり多くても月一ぐらいだ。それでも世界的な平均より十倍ぐらい多いはずだけど。なにしろ日本には東京があるので、やたらTOXが来る。
ところで、今日は窓ちゃんがユカちゃんを連れて遊びに来るそうだ。
遊びにというか、窓ちゃんとしてはハルカちゃんの秘密とゴジの秘密をいつまでもユカちゃんに黙っているのは心苦しいのだそうな。それで、ゴジとハルカちゃんにも確認してユカちゃんにも仲間に入ってもらうというつもりらしい。
そもそも、窓ちゃんとユカちゃん。二人はとても仲がいい。
仲がいいと言うかほとんど姉妹というか、家族ぐるみで親戚づきあいをしていると言うか、実際に親戚だ。話によると窓ちゃんの真宮家は戦国時代の有名な武士で、ユカちゃんの深山家はその家来だったとかなんとか。非常に古い家系なので地元でも名士だし、郷土史の資料なんかにもそういう扱いで掲載されている。
戦国時代って言われても、昔々あまりにも昔の話だ。言い換えると地球がもとの場所にあった頃、文化的には電気を使った機械なんかもまだ無い頃の話である。窓ちゃんの家が由緒ある家系だとはいえ、どこまで本当なのかよく分からない。
地球が元の場所にあった頃、つまり少なくとも五千年以上昔。
五千年とぱっと言われてもちょっとイメージが湧かないので、その五千年を尺度として五千年前からさらにもう五千年前、つまり一万年前がどういう時代だったかといえば、日本では新石器時代ぐらい、もう文字なんて無くて、記録なんて残ってない頃になる。世界全体で見れば原始的な文字で記録が残っている地域とか青銅器時代の場所もあったかもしれないとかそんな感じだ。
青銅器時代と現代の折り返し点より少し前、その頃からの親戚って言われてもちょっと額面通りには信じられない。同じ頃に由来する地名とか伝統行事とかもあるんだけど、そういうものの扱いだって伝説というあやふやな感じのことになる。それと同じぐらい古いものなんだから、家系だけが確固たる事実っていうことはなくて、伝説と同じぐらいあやふやだというのが本当のところだろう。
とは思うものの、あえて否定してみたところで得があるわけでもないし、昔過ぎてちょっと信じられないという以上の根拠があるわけでもないから、郷土史的にもそれは事実ということになっているし私もそれで納得している。
その一方で、窓ちゃんの家系の真宮家は代々戦闘向きの能力者が居て、防衛隊に参加しているというのはここ数世代については完全に事実だ。まぁ、能力者っていうのはTOXとの戦いで人類に発現した能力なので、伝説にある戦国時代の真宮家に武芸で活躍した能力者が居たとかではないらしいんだけど。
さらにはユカちゃんの家系の深山家は時々能力者が出るのだとか。ユカちゃん自身も確かに能力者だ。で、言い伝えとか伝統とかそういうなにかで、能力者の真宮家と同じ年頃の能力者が居る場合には、特に親しく育てるとかなんとかそういう因習……って呼ぶと人聞きが悪いか、えーと、習わしがあるので、
さらにはユカちゃんの家系の深山家は時々能力者が出るのだとか。ユカちゃん自身も確かに能力者だ。で、言い伝えとか伝統とかそういうなにかで、真宮家と同じ年頃の能力者が深山家に居る場合には特に親しく育てるとかなんとかそういう因習……って呼ぶと人聞きが悪いか、えーと、習わしがあるので、二人は水と魚のように親密に育てられたんですと。




