6月26日(日) 〜 6月30日(木)
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第四章 大きくて小さい子・大きいけど小さい部屋
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6月26日(日)
17:00
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そう言えば、TOXの襲撃で神指邸の勝手口が破壊されたのだけど、どうするのかと思っていたらゴジが自分で直してしまった。大工仕事をしたのではなくて、家の出入り口にゴジ自身が能力で出した金属製の自動ドアを取り付けた。
防衛隊から現場を保存してくれというお願いもあったのだけど、現地の調査をしている数日はともかく、その後は生活の場でもあるということで断ってしまっていた。防衛隊の現地調査も物々しい概念の割になにかすごく特別なことをしていた様子はなく、下の町の防衛隊の人が見て回ったり写真を撮ったりしていたぐらい。現場の保存をしてくれたら補助金があるとか宿を手配するとかそんな話も防衛隊から持ちかけられたらしいのだけど、ゴジは飲まなかった。
対外的には両親が残してくれた家に愛着があるとかなんとか理由をつけていたし、防衛隊の交渉係の人にもその理由で納得はしてもらえていた。
けど、本当は違う。
護治郎が家を出たくないのは、一昨日のTOX襲撃直後、私と窓ちゃんとハルカちゃんに見せてくれたとある大きい『秘密』のためだ。
しかしそれにしても、ゴジがこんなに大きい自動ドアを、あんなに簡単に作れるようになっていたとは思いもしなかった。昔は子供用の自転車を作るのにも一週間ぐらいかかってたのに、このドアは三十分ぐらいしかかかっていない。
「いつの間にこんなに早く作れるようになってたの?」
「まぁ、慣れたんだろうね。たくさん能力使ったからさ……」
能力って慣れると上手くなるとかそういうものなのか? という気はしたんだけど、あれを見た直後だったから思わず納得してしまった。あれを生み出すなんてことをしたら慣れたりもするだろう。
改めて尋ねてみようかと思ったけど、ゴジ自身は偶然そういう能力があるというだけで専門家というわけではないので、きっと本人にもわからないのだろうと思う。
これまでもゴジの機械を見たことは何度もあるけど、ゴジが上手く説明できたことはなかった。説明できないのは機械の仕組みも能力の仕組みも、どっちも。
とはいえ、使う方は意図通りにできるんだから、これがもっとよく分からない。
ただ、能力というのは他の人の場合でもそういう魔法みたいなものなので、わからないけど使えるというところで納得するしかない。
ゴジが慣れるほど能力を使ったのがあれなんだけど、それを作り出すきっかけになったのは、ほぼ間違いなくご両親の事故だ。だからあんまり詳しく聞き出すのも憚られてしまう。いつか、機会があった時に、まだ覚えていたら、慣れるなんてことがあるのかって話を問い詰めて聞いてみるのもいいかもしれないけど、そんなにいつまでも覚えてるぐらいならその前に他の能力者に聞いちゃうような気はする。
今さっきゴジが出したのは、ごく薄い緑っぽいベージュに塗られた、のっぺらぼうの防火扉みたいな自動ドア。無骨な作りで、神指邸の瀟洒な佇まいにはまったく不似合いなんだけど、勝手口だからまぁいいのだろう。自動ドアなのに観音開きで微妙に使い勝手が悪いのも、ゴジの出した機械っぽい。
とはいえ、ここはゴジの能力でなければこんなに早くドアをつけたりはできなかったんだから、そこは素直にすごいと思う。
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6月27日(月)
〜 6月30日(木)
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TOXが来た翌週、これという何事もなく過ぎていった。
ハルカちゃんはリモプレを通じて早速クラスメイトたちと仲良くなり、休み時間におしゃべりをする時に携端を貸してしまい、私は会話からはじき出されるみたいなことも起きるようになった。私は休み時間にリモプレで会話をすると精神ポイントが消耗することもあるというタイプなので、お喋りに加われなくても構わないという面もある。もちろん私にだって下の街にも普段の交友関係というのはあるんだけど、私は「マイペース」だと思われていて、気まぐれでお喋りに参加したり休んだりしても放おっておいてくれる。理解のある良い友人たちだ。
ハルカちゃんのお喋りの相手は、私の交友関係に限られたものでもなく、広くクラス中のいろんな人達と話している。稀にはクラス外の人達ともよく喋っている。
まぁ単なる珍しい転校生なだけでなく、見るからに美少女だし、話好きで愛嬌もある。そりゃあ人気者になりますよね。




