6月28日(火)TOX襲撃、四日後: 深山優花子
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第三章 降下してくる危機が近づいてくる日々
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6月28日(火)
TOX襲撃、四日後
深山優花子
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この集落にTOXが落下した日、一時期窓が音信不通になってしまい、結構な大事になった。
その日、結局は窓の端末が故障していたらしい。
窓はTOXのうちの一体と独力で戦い、倒していた。
三体のTOXのうち残りの二体は珍しいことに山の中に降りていて、集落への襲撃はなかった。イルカの叡一くんに場所を教えてもらって、後から駆けつけた私達の即応部隊とその後に隣県から来た参集部隊が山狩りをしてケリを付けた。
窓は戦闘後、しばらくしてから私用の端末で私に連絡をとってきた。
私は連絡を受けて、可能だけ素早く防衛隊の車で神指邸の近くまで乗り付けて(神指邸の私道が狭いせいで、隊の輸送車では目前に乗り付けることができなかった)、乱闘現場まで駆け込んだのだった。TOXの状態が不明だから私は後にしろと専任の隊員には制止されたけど、そんな場合じゃない。
勢い込んで駆けつけてみたら、床下に大きな穴が空いて千切れたTOXが転がっている凄惨な乱闘現場のようにも見えたけど、TOXのそばには窓だけでなく、佐々也と天宮さんと護治郎が集まって談笑している気の抜けるような状況だった。
愚直に規則を守ってしまう窓らしくない。
正式な安全確保がされる前に、一般人をTOXに近づけたら駄目なんだけど。
基地署と連絡が取れない中、人家に入り込んだTOXと無許可で戦闘した窓は、その後、しこたま怒られた。
見たところ窓は楚々とした美少女という風貌な上、あまり我の強い性格でもないので、窓のその独断専行は基地署の皆には驚きを持って迎えられていた。
実際、普段の窓は決められた枠組みを自分から外れることを非常に嫌うところがある。
それは、獣化後の強い膂力に対する自戒であると同時に獣化した自分の姿を嫌うあまり過剰に規範的な行動をとっている部分がある様子で、能力の反作用のようなものではないかと私は見ている。
窓自身に聞いて確かめたことはない。
意識せずにそうしているなら、彼女自身の自己嫌悪を指摘されるのは残酷なことだ。窓にとって一番身近な人間である私が指摘するとしたらなおさら残酷だ。窓が自分自身を規範的に律することで誰かの迷惑になっているわけでもないのに。
子供の頃の記憶を探ると、本来の窓はどちらかといえば直情径行気味の人間だ。
だから、窓の単独行動がまったく理解できないわけではないけど、自ら求めて課している制約を外すだけのなにかの理由があったのではないか、ということが心配だ。
本人が言うぐらいのうっかりならその方がいいのだけど。
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しかも、どうやら窓はあれをきっかけにして護治郎に惚れたらしい。
あれ以来、口を開くと護治郎の話を聞かされる感じだ。同じクラスだからわざわざ窓に教えてもらわなくても、大抵のことは私も見て知っているんだけど。
当の護治郎といえば、ここ二年ぐらいでかなり背は伸びたものの、なんか暗いし勉強やスポーツが優秀というわけでもないし、特にパッとしないやつだと思うんだけど、窓といい佐々也といい、どこかにモテる要素があるようだ。




