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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第三章 降下してくる危機が近づいてくる日々
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……6月24日(金)21:20 真宮窓

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第三章 降下してくる危機が近づいてくる日々


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

 私のお願いを護治郎くんが後押ししてくれて、状況が整理されてゆく。

 こんな姿で怖いだろうに、優しい。

 あとは基地署と連絡をとって、応援に来てもらう手はずが必要なんだけど。

 やっとのことで携端の表示を確認してみても通話中の表示がない。やっぱり基地署と通信がつながっていない様子だ。電源を入れ直して、改めて通話の操作をしても変わらない。

「真宮、端末がどうかしたのか?」

 護治郎くんが私の様子を気にかけてくれた。

 視線を向けると、三人で廊下を半分ぐらいこちらに近寄って来ている。

「電波がおかしいみたいで、通信ができないの。基地署と連絡を取りたいんだけど」

 私の言葉に、護治郎くんが動揺した様子を見せる。

 なにか気に入らなかっただろうか?

「連絡して、たくさん人が来る感じになるのか?」

「うん。TOXの後始末とか、あとは被害の補償とか……」

 説明しても、護治郎くんの動揺した感じは変わらない。 

 嫌われたくない。

「あの……。なにか良くなかった?」

「防衛隊に知られたくない秘密がいくつかあるんだ……」

「秘密? なにか危険なこと? 私は聞かないほうが良い?」

「いや。……真宮には話すよ。ただ、……落ち着いて聞いてほしいんだ」

 護治郎くんは悩んでいるようだ。

 でも、真剣そうな表情だ。

 聞いても平気だと思う。

「わかった、落ち着く。でも、ひとつだけこっちからお願いしていい?」

 気がつくと護治郎くんの顔を見上げる姿勢になっていた。いつのまにか私自身が廊下の中程まで歩み寄って、いまではすぐ目の前だ。変身した私はいつもより少し大きくなっているはずだけど、それでも彼の方がまだ背が高いので見上げる姿勢になってしまう。

「なに?」

「さっきは私のこと窓って呼んだよね?」

「え? そうだっけ?」

「うん。私を止めてくれた時」

「あんまり良く憶えてないや。必死だったから」

「そうだね。一生懸命だった。でも、名前で呼ばれたのは本当だよ。私はそれを聞いて我に返ったから……。だから本当」

「そっか。ごめんね、なんか、呼び捨てにしたりして。昔そうだったから、とっさに出てきたのかも。……これから気をつけるよ」

「ううん。これからも苗字じゃなくて名前で読んでほしい」

「え……。そうなの?」

「うん」

 護治郎くんは少し言いにくそうにしている。

 私は図々しいお願いをしてしまったような気がして、ほんの少しだけの間の時間に後悔しはじめている。誰かにどう呼んで欲しいかなんて、いままでお願いしたことはない。

「……窓ちゃん。これでいい?」

 なんでこんな事を言ったのか自分でもよく分からない。

 でも、こうして名前で呼ばれてみると、すごく嬉しい。

 ほんとは、佐々也ちゃんにしてるみたいに呼び捨てが良かった。

 なんでかよく分からないけど、それを言い出す勇気は持てない。

「ありがとう。こんな怖い姿だから、そう呼んでもらえると安心。その、嫌われてないって……」

「大丈夫。怖くないよ。見かけはどうでも、中身はま……、その、窓ちゃんだからさ」

 嬉しい。

 人間の姿なら泣いていたかもしれない。

 なにひとつ解決してないけど、護治郎くんの言葉で明るい気持ちになることができた。


  *   *   *


 その後、防衛隊との通信を回復させる前にいくつかの信じられない話を聞いたけど、信じることに決めた。

 ひとつには天宮さんの貫通痕という証拠を見せられたからでもあるけど、本当は護治郎くんが言う事なら信じたいと思ったからだ。

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