……6月24日(金)20:57 TOX襲撃、三分前 :真宮窓
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第三章 降下してくる危機が近づいてくる日々
――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――
嫌々ながらもその場で変身する。
変身そのものは十秒ほど。
変身後は身体が一回り大きくなり、外見的には人間型の三毛猫が直立している感じになる。
防具は着ている。体型や手や指は人間だ。
見かけが猫であってもサイズが大きいとなにも可愛くない。とても怖い。
ただ大きいだけでも怖いのに、戦闘の時は気が立っているから見た感じ更に怖い。この姿では普通にしているだけで怖がられてしまうと思う。
なにもしないで嫌われるのはとても辛い。
いつもは戦闘に突入するタイミングが分かっているし、周辺には防衛隊の仲間しかいないから、嫌な姿だとはいえ変身するタイミングを気にしたことがあまりなかった。あまり気にしたことがなかったせいで、こういう場合に見て回るのもなんとなく人の姿だと思っていたから、集落の中はバイクで見て回ろうと思っていた。
でも違った。
戦闘準備の状態で索敵、遭遇戦、というのはこういうことになるんだ。
知らなかった……。
変身はしたものの、やっぱり化生の姿を衆目に晒すことには抵抗がある。
防災無線でTOX到来がアナウンスされているので人通りは無いはずだけど、バイクは目立つので置いていくことにする。目立つ表通りを行くのではなく、武装をした状態で人目につかないように捜索をすることにしようと思う。
避難途中の人とか、気掛かりがあってどうしても移動するしかない人なんかにはそれでも出会ってしまう可能性があるけど、その時は身を隠したらいい。
絶対に誰にも会いたくないけど、迎撃に出ないわけには行かない。
考えすぎても仕方ない。
それに、外にいるとTOXの襲撃をされてしまうのだから、大抵の人は家から出たりしないはずだ。
実際にTOXが攻撃したら民家では防御の役には立たないのだけど、TOXから姿を隠す役には立つし、TOXは人家に入り込んでまで人を狙って攻撃するようなことはしないから、戦わない人は姿を隠していることが一番だ。
つまり、索敵中に人に会う見込みはほぼ無いと言ってよい。
とはいえTOXの確認のために防犯カメラやドローンなどでの監視はされているので、外にまったく人目が無いというわけではない。目立たないようにするのに越したことはない。
━━━━━━━━━━
6月24日(金)
21:02
TOX襲撃直後
真宮窓
━━━━━━━━━━
TOXの索敵をするにあたって特別な道具は特に無い。
TOXから発生する音や放射線は通常程度。地上への降下の時にかなり高温にはなっているものの、遮蔽物が多いから地上に居る防衛隊が探すなら赤外線でも目で見て探すのもあまり変わらないし、防衛隊の有志隊員では特別な道具を適切に使うための訓練も足りない。赤外線装備を使うと、視界が全体的に暗くなるうえに経験が足りなければ普通の熱源でも撹乱要因になるから、使わないほうがマシだということになっている。
捜索にあたって、初動対応網の隊員は、音や火災などの兆候で落下地点が明確であれば最初はそこへ行く決まりになっている。落下地点が明確でない場合には地道に徒歩や車で地上を駆け回ってTOXを探す。
基本的にはTOX遭遇時に被害が大きくなると懸念される場所、大抵の場合は人口が多い所に最初に向かって、そこを起点にして捜索を行うのが基本動作になる。
そして、普通の場合には、闇雲な捜索をしなければいけない時間はあまり長くない。
TOXは人口の多い所、つまり町中に落下してくる場合がほとんどなので、通報などで目撃報告が集まってくる。初期に目撃がない場合や、TOXとの遭遇戦で目撃者が報告できなかった場合などには、監視カメラや飛行ドローン陸上ドローンなどによる偵察も行われる。それらに対する管掌は地域によって異なるが、この集落では駐在の遠山さんがしてくれることになっている。
「遠山さん。川辺通りにはTOXはいないようです。情報ありますか」