あとがき §長い話になるとはまだ思ってなかった頃
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
あとがき
先程も申し上げましたが、中編を書いたことはあります。
なので中編の書き方はわかります。
とはいえ、自分が過去に書いた時は、「頭の中で妄想を膨らませて」→「頭の中である程度の辻褄を合わせて」→「実際に書いているうちに忘れないようにちょこちょこっとメモをして」→「前から順に書く」→「前から順に見直して、前後を入れ替えたり表現の調整をしたりという、推敲作業をする」という、ノープランでギリ行けるかも、ぐらいのやつです。
妄想のところは常時行っているので特にそのための時間は設けていませんが、文章化に着手してからは長くてひとサイクル二ヶ月ぐらいですかね。
妄想の時間を含めたらもっと長いわけでして、正直なところ手が遅いと思いますし、「〇〇を書こう」というキャラクター主導の書き方もできない不器用なやり方なんですけど、書きたいものを書けてはいるので個人的には別に困ってなかったんですね。
あと、二ヶ月ぐらいなら作品を出さずに黙々と書き続けても我慢できるという面もあります。(区切りをつけずに作品世界のことを考え続けると、心の健康が損なわれていくのです。正気を保つのが難しいと言う方が正確かもしれない……)
本作はですね「頭の中で妄想を膨らませて」の期間が割とあったのです。
どんな話にしようかな、ということを最初に考えて「高校生の男の子が冒険をして旅行する話にしよう。中編ぐらいのやつ」と、もやもやっと思いつきました。
あと個人的に北関東の平坦さにめちゃめちゃウケている時期だったので、まったくランダムなアイディアとして「北関東を縦断する話が良い」というのと、「高校生の男の子が出てくるから恋愛模様もある友達グループの話にしよう、そんなの書いたこと無いから挑戦だな」みたいな感じで妄想を膨らませていったんです。
こんぐらいの妄想をしばらく頭の中に置いておくと「友達グループはどういう人かな」とか「どこに住んでることにしようかな」などなど妄想が捗ります。
別にずーっと考えてるわけでもないので、年単位でなんとなく妄想がじんわり進みます。
「男の子が主人公の冒険ものだし、ヒロインは空から落ちてきた女の子にしよう。他に珍しい特徴もあった方が……。よし粉末にしよう。叩いたら粉が飛ぶ感じのヒロイン。これは新しい」
「北関東を縦断して東京に行く話にしよう」
「東京は滅びてることにするか」
「東京が滅びてる世界ってどんなだ」
「現代人の感覚でその世界はありなんか?」
「東京が滅びているのは確定として、東京が復興できない状態で安定した社会にしよう」
「それで安定した社会で現代人の感性になるのか?」
「よし、ここはこういうトリックだ」
みたいな、単発で浮かんできた妄想をお互いに繋げてもろもろの事を連想して決めているうちにいろんなアイディアが釣られて出てきたりします。
既読の方は振り返ってみてもらうと、上で列挙している妄想の内容は、完成品の世界設定とだいたい矛盾していないことが分かると思います。
未読の方にはネタバレっぽい部分があってすいませんね。
そうです、東京は滅びてます。
列挙した中にはさらっと酷いのが混ざっていた感じもありますが、こうやってぼんやり妄想混じりで考えてた期間が数年ですね。この期間はこれだけしているわけではなくて、別の話を書いたりもしています。
こうしているうちに、全体的なぼんやりとした世界設定ができました。
ただこれがもう、本当にぼんやりしています。「えーと、この地球は宇宙のこういうところにあって……」ぐらいの内容なので。
そしてこれぐらいになってくると、けっこうお気に入りの妄想になっています。
ほいじゃあ次はこの妄想から実際に創作をしようかな、となるわけです。そうです「高校生の男の子が冒険をして旅行する話にしよう。中編ぐらいのやつ」みたいな感じで。
実際にお話を作るとなると、具体的な人物像とかが必要になってきます。
じゃあ友達関係にどんな人が居るかも決めておかないとなとなり、「主人公の少年」「相棒の少年」「友達のアホな少年」「異性の幼馴染」「戦闘少女」「輸送係の少年」「粉末系ヒロイン」「空を飛ぶ人外の少女」「特に役目はないけど友達の女子」となりました。「幼馴染が隠しているあの子」が居ることもこの時点で決まりました。
この時点では登場人物にまだ名前は無く、役割だけです。
また恋愛模様なんかもあるという構想なので、誰が誰を好きになり、どういう感じでふられるみたいなことを決めました。
(※この時点での構想なので、人物も恋愛模様なんかも完成版とは異なります。ネタバレ度合いで言うと六割ぐらいでしょうか。既読の方はどれが誰の事なのか、パッと見でも六割ぐらいは分かるんじゃないでしょうか。よく考えたら、どれが誰か全員わかるかもしれません)
そして恐ろしいことに、この時点ではまだ「北関東を縦断して東京に旅行に行く中編」のつもりで居ました。