あとがき §長い話を書いたぞ、という話
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
あとがき
ここでちょっと趣向を変えて、「こんな長いもんどうやって書くの?」という、自分でも書いてみるまでわからなかった事を覚書として書いておきます。長すぎてけっこう反省してはいるけど、ちょっと自慢もしたい、そういう複雑な心境がこういう歪んだ趣向で現れているのです。
本作を書いた人は、これまでも創作はしてきたんですが、原稿用紙百枚程度、長くて四万字ぐらいです。
これぐらいだと、文学賞的には中編ですよね。
本作は全編で七十五万字を超えています。
文学賞的な長編は普通、四百字詰めの原稿用紙三百枚ぐらいです。文字数換算と原稿用紙換算はけっこう基準が違うのですが、原稿用紙のものは本になったときの余白というのが文字数として削れてしまうので充填率七割から八割ぐらいとして、ざっと十万字ぐらいというのが標準的な長編という感じになりそうです。
つまりは本屋さんで売ってる単巻完結、ちょい薄めかなというぐらいの本が十万字ぐらいということになるのでしょうか。(※脚注)
本作、充填率はそんなに高くないはずなので七割で計算すると、薄めの本で全十巻ぐらいになる計算です。
……いま始めてこんな計算したんですけど、こう書いてみると改めて恐ろしい量だな……。
どう考えても、決して手軽ではない……。
えー、宣伝戦略目標を『気軽に楽しめる』に切り替えていくことにします。
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それはさておき、長いといえば時間もだいぶかかりました。
この話を書くのにどれぐらい掛かったかなんですが、期間だけ先に申し上げますと、約四年半ぐらいですね。
実は本作には『準備原稿』というのが存在しておりまして、これを始めたのが二〇二〇年の八月頃です。コロナの最初に患者を乗せた船が来たのがだいたい二〇二〇年の一月ぐらいなんですけど、その年の夏頃です。外出できなくて、というのはあんまり関係なくて、次はなにを書こうかなとなったのがその頃だったからです。
書いた人の前作『彼女は三度、月を去る』がその頃のタイムスタンプなので、タイミング的には偶然です。
準備原稿が全十四章、およそ五十万字。
二〇二二年の八月まで、二年かけてやっていました。
(いま数え直しました。数えるまでは平均三万字足らずの十四章で三十万字から三十五万字というつもりでいたんですが、この時点で五十万超えてたのか……)
準備原稿完成後、本番原稿のための情報整理をしばらく行なって、本番の投稿開始が二〇二三年の三月一日。本編の完結が二〇二五年の三月一〇日となりますので、この期間も丸二年ほどです。
本番原稿では全十八章・七十五万字ほどになりますので、準備原稿のおよそ一・五倍になった感じですね。
いやー、書いている人は自分だからよく頑張ったねぇって手放しに褒めたいですが、あんまり長いと読む人も大変だからそこは反省しなさいよ?
※本当は十万字の長編が単行本になっていて薄いなんて事ないんですけど、長い話を読み慣れた人は長さの感覚がおかしい事がよくある。この感覚麻痺のせいで、ぶ厚い本も意外と見かける。




