あとがき §本作のそもそもの狙い
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
あとがき
最初に白状しますが、書いた人はガチガチに作り込んだ壮大なSFが好きなんです。これは本作と並んで置いてある他の二作を見てもらうとわかると思います。これに関してはもう個人の嗜好としてそういうのが好きなので、そういうのを書きたいわけです。
とはいえ、そういうものって慣れてないと読み難いんですよね。
科学考証が難しいとかそういう話でなく、『宇宙朝廷の少納言が船長をしている宇宙探査船で宇宙探検』みたいな話をしようとしても、宇宙朝廷がどんなもので、少納言がどれぐらい偉いのかみたいなことはわからないわけじゃないですか。こういう時、朝廷じゃなくて軍にして、現代の軍隊組織に似たものであることにして、比喩で理解してもらうようにしたりという工夫をしたりすることは良くあります。別にSFだけじゃなくて、ファンタジーとかでも異世界の人が日本語の慣用句を使ってたりとかあるわけです。
そこで「ガチガチに作り込んだ壮大なSF」をしながら「理解しやすい工夫をたくさん使って読みやすくする」ということの両立を試みることにしました。
と、いうことで、本作の舞台は私達が住んでるこの地球の未来の姿なんですが、ほとんど現代の日本と変わらないような場所として読むことができるように工夫しています。(※既読の人はここでニヤニヤしてください)
主人公はぼんやりしたところのあるちょっと浮き世離れした高校生の女の子です。
設定上この子は現代人ではありませんが、読みやすくするための工夫として現代人と変わらない視線を持っています。そのため、この子の視線を通すことで『宇宙朝廷の少納言』が『いきなり』出てこないように工夫しています。
「SFだとすると、謎の敵とかとかロボットとかの名前とか覚えないといけないやつでしょ?」という感じで手が伸びにくい人はご安心ください。本作では生徒が少ない山奥の学校に転校生が来るところから始まりますし、その次のシーンは隣の家に主人公が厚揚げの煮物を届けに行くところです。
逆に「えーっ。壮大なSFなのに敵もロボットも出てこないの?」という人もご安心ください。どっちも出てきます!(※既読の人はここでニヤニヤしてください)
根本の根本がこんな感じの発想なので、色々と盛り込んでも現代人の主人公が感想を言ってくれるからいろんな説明もしやすいみたいな発想に繋がってしまっており、その上で「ガチガチに作り込んだ壮大なSF」が好きなせいで全体設定があんな感じになりました。
面白くなっていると自負してはいますが、おかげ様で長くなりすぎたかもしれません。
手軽で読みやすいものを志すなら、短い方が絶対手軽だぞ。ハハハ。




