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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十八章 夏の夜空に飛ぶイルカ
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……8月19日(金) 12:00 折瀬分校舎・登校日

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十八章 夏の夜空に飛ぶイルカ


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

 なんで私? と思ったら、例のあの指の形をしている。

 ああっ、私も有名人だった!

 しかも子供受けしそうなやつ……。

 もうだいぶ経ったような気がしてたから、すっかり忘れていた。

「ゾミーちゃんと佐々也ちゃんだ!」

「あんたら別に私なんて珍しくな……」

「あっ、みんな見てくれてるの? じゃあアレやっちゃうぞ。ぞみーちゃんとさーちゃんはー?」

「「「可愛いー!」」」

 えっ? 巻き込まれた!?

 愕然としてぞっちゃんの方を見ると、ぞっちゃんは嬉しそうにしている。

「ありがと〜! みんなも可愛いよっ」

 ぞっちゃんが答えると中学生たちにわっとウケる。

 そうこうしているうちに小学生たちも来た。

「じゃー、小学生の子たちが来たからもう一回やるねー」

 おい、本気か……。

「みんな〜、ぞみーちゃんとさーちゃんは〜?」

「「「「「可愛いー!」」」」」

「ありがと〜。あれっ? さーちゃんは?」

 ちょっと距離を取るために二歩ぐらい下がったのだけど、目敏(めざと)いぞっちゃんに見つかって、話を振られてしまう。

「えっ? 私はいいよ……」

「ダメダメ。番組とおんなじことやるのがみんな嬉しいんだから」

「私はこんなのやってないけど……」

「ほらっ、さーちゃんもやるの。もう一回、みんな〜、さーちゃんは〜?」

「「「「「可愛いー!」」」」」

「あ……ありがとう。みんな番組見てくれたんだ?」

 見た、という返事が口々に返ってくる。

「じゃあ、ゾミーちゃんのチャンネルは登録した?」

 した、という返事が返ってくる。

 ええとええと、ぞっちゃんの真似。こういうとき、どう言うのか……。

「ありがとー。嬉しい、じゃあっみんなに……」

 お菓子買ってくれるの? というちゃちゃが入る。

 ほんとに見てくれてたんだな。

「違うよ。バーベキューやろ、みんなで。親水公園のバーベキューセットで」

 と、私の代わりにぞっちゃんが答えた。

 え? 番組やるの? 僕も映れる?

 下の子たちがざわつく。なんだか急に賑やかな事になった。

 まぁ、時には下の子たちと遊ぶのもいいんだろう。

 それに、やちよちゃんとミキちゃんも新しい学校のみんなと馴染むいい機会になるかもしれないし。

 ぞっちゃんは下の子たちを相手にストリーマーのゾミーちゃんになってしまったから、私はミキちゃんとやちよちゃんの方に行って、みんなでバーベキューをやろうという話をする。ゴジもたまも窓ちゃんもユカちゃんも、みんなでやろう。

「時にはこういうのも良いと思うけど、こんなにたくさん呼んで材料とか用意はあるの? 小さい子の火の周りの面倒は?」

「だからユカちゃんも助けてよー。ぞっちゃんが楽しくなっちゃったらしくて、下の子たちをみんな誘ってるんだよ」

「まぁ、いいけどね……。中学生ふたりの歓迎会だと思えば、必要な気もするし」

「やちよちゃん、バーベキューの買い物に行きたくない?」

「行きたい! けど、魁は行く?」

「えっ? 俺? ……手伝いが必要なら行くよ、もちろん」

「必要だから手伝って。ミキちゃんとゴジと窓ちゃんも一緒に行ってあげて? あと、ゴジはお金建て替えといて。あとでぞっちゃんと私で払うから」

「建て替えね、わかったよ。でも、ミキも買い物でいいの?」

「僕は佐々也ちゃんと一緒に居たい」

 えっ? 私はぞっちゃんと一緒に子どもたちの引率があるから、買い物には行かないよ?

「じゃあミキは佐々也に預けようかな。佐々也、家に帰っちゃったから二日ぶりだもんな」

「うん。佐々也ちゃんに聞きたいこといっぱいあるんだ」

「いっぱい? 嘘でしょ? 一昨日だよ、この前会ったの」

「わからないことは佐々也ちゃんに聞くのが、一番わかりやすく教えてくれるんだもん」

 そういえば、私はつい先日、家に戻った。

 窓ちゃんとゴジが付き合ってるらしいということが折瀬でもなんとなく噂になったのと、ハルカちゃんだけじゃなくてミキちゃんも一緒に姉妹でゴジの家に住んでいることが(おおやけ)になったので、年頃の男女が二人きりで住んでるという雰囲気でもなくなったからだ。

 お互いにそっくりな美少女二人が住み着き、村の名士の娘で類稀(たぐいまれ)な戦士が通い、それから東京の巫女が集落に来る時の定宿ということになったゴジの家は、本来の住人以外は美少女ばっかりが寄り付くそれはそれは異様な存在ということにはなってしまった。

 傍目にはハーレムまんがの主人公みたいな境遇だけど、本人がゴジではなぁ……。マンガ的な面白味には欠ける仕上がりになりそうだ。

 私の自宅からも時間にして五分、距離にして数十メートルの移動だから、ミキちゃんと会えなくなるとかそういう話でもないんだけど、これぐらいの年齢の子供から見るとそれなりに寂しいみたいだ。


「私は?」

 何故かいままですっと席を外していたハルカちゃんが戻ってきて、私に質問してきた。

「ハルカちゃんはぞっちゃんと一緒に余興係だよ」

 そういってぞっちゃんの方に引っ張っていく。

 その途中でこっそり耳打ち。

「ミキちゃんも、ものは食べられるんだったよね?」

「食べられるし、味も分かるよ。栄養は不要だからあとで捨てることにはなるけど」

「ほんとに同じ身体なんだね。性格はまったく違うのに」

「言ったでしょ? いろんな問題を解決するのに、新しい身体をデザインするだけの余裕がなかったって。だからあの子は私と同じ身体、違う頭脳。ミキちゃんの知性はダイモーンとは違う知性だから、あの子はダイモーンでもない。あの子はあの子。いまのところただ一人の種族だよ」

第十八章 了


諸々が千々に降下してくる夏々の日々

     ー  完  ー


※この後、本編でないあとがき的なものを更新します。

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