表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十八章 夏の夜空に飛ぶイルカ
466/489

……8月7日(日) 12:00 池袋抗生教本部・佐々也

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十八章 夏の夜空に飛ぶイルカ


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

 で、ハルカちゃんの方も社会性が節約されていたので、特に再確認したりせずに進めてああなった、と……。

 ゴジが意外と後悔したりしていないことまで含めてなんとなく釈然としないものを感じるけど、ゴジが良いなら私が異論を挟む事でもないように思う。

 この話を聞いた時に私がまっさきに思ったのは、やっぱりゴジはいくつかの決定をしたということだった。

 同じ決断を私が代理で行って、同じ結果になったりしたら、ゴジが納得できたかどうか疑問だ。なにしろ私だって釈然としてないんだから。

 ただ、ゴジが納得できなくて私が怒られるとかいうことが心配なのではなくて、性格的にゴジはそういう不満を私にぶつけずに飲み込んでしまうだろうし、程度にもよるけど悪くするとまた心を病んでしまっていたかもしれないという懸念の方だ。

 なにかの理由でゴジのそういう鬱屈を回避することができたようなので、私が眠る方になっていて本当に良かったなぁ、と感じている。

 そもそもそれだけじゃなくて『幹侍郎ちゃんがハルカちゃんと同じ姿になっても仕方ないから復活させてほしいかどうか』という判断を迫られたとしても、私には決断できなかったと思う。あの日の地下の幹侍郎ちゃんの生き返りの相談の時のように、いつまでも情報が足りないと感じて理解を進めることができなかっただろうと思うし、そのせいで時間が足りなかったと思う。そしてその場合、幹侍郎ちゃんが蘇ることはできていなかったわけだ。

 図らずもゴジが言っていたように、事故的に間違いもありながら事が進んで、結果としては運よく満足の行くものになった。

 つまりゴジにとって幹侍郎ちゃんの外見はそんなに大切じゃなくて、幹侍郎ちゃんの心が蘇ったことで、簡単に折り合いがついたわけだ。

 これは私も同じだ。

 今の幹侍郎ちゃんの姿に慣れていないから、ビックリはするんだけど。

 幹侍郎ちゃんの姿といえば他にも細かい話は色々あって、いまの身長は一四五センチらしい。最初に聞いていた元の身体のサイズの一〇分の一だとすると一七〇センチほどになる筈だったので、かなり小さくなってしまった。で、この、背が低いのは素材が足りなかったからなのだとか。まぁ、これは年相応の背丈だと思えば結果としては良かったかもしれない。

 それから金髪なのは茶色のつもりで色を明るくしすぎただけだとか。

 そんなこんな、色々なことがあって、事前に漠然と思っていたのとはまったく違う姿にはなったけど、実際に幹侍郎ちゃんが生き返ったというのを私自身も納得している。

 「幹侍郎ちゃんなのになんでその姿……」という釈然としない気持ちは未だあるんだけど、一番の問題であるゴジは乗り越えてるんだから、私は文句を言ったりするつもりは無い。

 なにより幹侍郎ちゃんはあの姿もけっこうあれで嫌でもないらしいので、そこは本当に良かったと思う。


   *   *   *


 最後にもう一度、私の話。

 私は抗生教の巫女という役目になりはしたけど、それは形式上の話で、教団側からは別段これという制限は受けないそうだ。

 それは行動範囲にも制限がないということでもある。

 そんなわけで、車で数時間のところに住んでいるので、私はTOXが来るときだけ東京に居れば良いということになった。とはいえ遅刻なんかは厳禁だから、少なくとも前日には来て前後一日宿泊するぐらいのつもりで居て欲しいと。

 そんなんでいいのかと思わなくもないけど、やちよちゃん的にはそれで良いらしい。やちよちゃんというか、それが地球の意思なんだろう。

 それはやちよちゃんが決めることなのか? と、疑問に思わなくもないけど、事情を知っている人が私達とやちよちゃんしか居ないんだから、他に決める人も居ない。となると、やちよちゃんに決めてもらうしかない。

 教団から期待されている私の役目が友達係だけだとしたら「たまに会いに来てください」と言ってお菓子を持って帰らされてる流れのような気もするから、周りとしても私が家に帰ることには別に異議はないらしい。

 私としてはTOXが来るときは本部内に置いて欲しいわけで、私がTOXの標的になることについて周囲への説明を省いてその辺りを実現する折衷案で、そういう事になったわけだ。

 私としては理想的な話だ。

 こうして私はTOX襲撃のときだけ選んで東京に来る通いの巫女という、かなり不思議な人になった。

 やちよちゃんの言によれば「それが地球の意思」なのだそうだから、不思議なのは仕方ないか。


 自宅と東京の間、私が移動するだけなら電動スクーターがあるからなんとでもなる。

 速度制限があるから高速道路は使えないけど、下道経由でも倍の時間まではかからない。

 それに、お願いすれば抗生教の人が送り迎えもしてくれるとか。

 なんというか、なにもかもが特別扱いばっかりになってしまって申し訳ないような気持ちになってしまうところもあるから、ちょっと気軽には送り迎えまでは頼みづらいけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ