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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十八章 夏の夜空に飛ぶイルカ
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……8月7日(日) 12:00 池袋抗生教本部・佐々也

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十八章 夏の夜空に飛ぶイルカ


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 どうしてもストリーマーが必要になるのだったら、私としてもぞっちゃんを紹介する用意がある。これも番組に関わって分かったんだけど、ぞっちゃんには知識もあるし能力的にも問題ない、というか能力的には出演者以外の面を含めてもかなり有能であるように思う。

 まぁ、紹介されたぞっちゃんがなんと言うかは知らんけど。

 それから私が寝ている間に来たTOXの件。

 結局TOXは東京に来た。

 つまり、幹侍郎ちゃんの方じゃなくて、私の方に来たことになる。

 こうなるとやっぱり私がTOXを引き寄せている様子だ。

 TOXは私が眠ってる間に来た。

 そして眠っている間に概ね撃退されたそうだ。

 今回は『警告』の一段上、『襲撃』としては最低レベルの規模で、普通の街に来たら死人が出るやつだったらしいけど、東京では無難に対処できる範囲だった、とやちよちゃんに教えてもらった。東京としては大宮からの応援砲撃とかまでは必要でない規模だったとか。

 撃退に当たっては特にそれらしい被害が出たりもしていないそうで、TOX襲来を誘導してしまっているかもしれない身の上としても心が傷まなくて良い。

 仮に心を傷めたとしても、特段の能力もない私がなにかをできるわけではないのだけど……。

 とはいえ、これで幹侍郎ちゃんやゴジの地下室よりも、私の方が原因である疑いが強いという客観的な証拠ができてしまった形ではある。

 証拠もなにもやちよちゃんが私だって言ってるし、やちよちゃん、ひいてはガイアさんの言葉を疑う理由も無いんだけど、未定の状態から確定の方に証拠の分だけ事態が動いたという感じはする。動いたとしても、私の認識だけの話ではあるんだけど、私の認識は私の認識を全般的にカバーしてるから私にとっては重大事だ。

 私の認識は私以外にはあまり価値のない話だからとりあえず置いておいて、TOXが襲撃する先の指標はイルカが見ているコンプレキシティとかやちよちゃんが教えてくれた『線』の話とかがあるものの、他の人に説明してなにかの参考にしてもらえるほどのまとまった内容は無い。二人がそれを見ているという客観的な証拠もない。

 TOXはこれまで五千年の人類の課題ではあるわけで、なにかすぐにでも有意義な解決策が打てるというわけではないんだろうけど、私の立場はもしかしたらなにかを見つけ出せるのかもしれない。

 イルカもやちよちゃんも近くに居るわけで、観測事実の収集を最もしやすい人間が私になるのかもしれない。本人たちが調べてくれたらもっと良いんだけど、どっちもそれが主要な関心じゃないから無理だし。

 もし仮に情報を集めてコンプレキシティなり線なりがTOXを誘導しているという理論を私が作ることができたとして、それを他人に見せて納得させられるのかと言うと非常に怪しい。

 コンプレキシティや線を可視化させる方法なんてさしあたり無いだろうし、情報を集めたとしても、私が考え事に使うだけ。

 さらに言えば情報を集めたとしても、私に世界的な大発見をして有効に使うだけの能力があるとも思えないから、単なる怪しい情報を集めているだけの人になってしまうのがオチだという気もするけど、こういう誰も信じてくれないことの記録を詳細に残しておくのは、私の新しい身分である『巫女』らしい仕事のような気がするかもしれない。

 まぁ、ホラー小説だと死ぬ役目ではあるけど……。

 このTOXの誘導に関する一連の話に関しては私にとって厳しい部分しか無さそうだけど実は良い面もあって、とりあえずこれまでのように「TOXが来るかもしれない」という可能性に対する恐怖を感じる必要が無くなった。

 可能性でなくて確実に来る。

 そのつもりで居たら良いわけだから。

 そういう意味では、私としてこの件に立ち向かう場合に限れば、解決に向けての進歩かもしれない。

 しかも良いことに、TOXの襲撃からは東京で守ってもらえるわけで、私個人でうろたえているより確かな対策がある。TOXが来ると知った時になにをすれば良いのか、明確な指針ができたというわけだ。


 ところで、私を東京に連れてきて、東京をTOXの標的にしたとも言えるのはやちよちゃんだ。私としては保護してくれることに感謝しかないし、TOXに襲撃される感情的な責任を自分のみの状態から分散してくれているのも正直なところありがたい。

 感情的には私のズルなんだけど、私がTOXに狙われやすいのだって私の責任っていうわけじゃないので、ここは私はそのズルを大目に見ようと思う。

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