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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十八章 夏の夜空に飛ぶイルカ
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8月7日(日) 12:00 池袋抗生教本部・佐々也

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十八章 夏の夜空に飛ぶイルカ

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8月7日(日)

     12:00

   抗生教池袋本部

       佐々也

━━━━━━━━━━


 私が眠っている間になにがあったのか、とにかく気になるので昨日は色々と情報収集をしているうちに終わってしまった。

 結論から言うと、私の方にTOXが来るというのは変わらないらしいけど、思い悩んでいた色々なことは一段落した。それから私は抗生教の巫女になった、ということになりそうだ。


 まず最初に私が寝ていた間になにがあったか、大まかに言うと、私がすっかり忘れていた(こんな大切なことを忘れた私もどうかしてた)TOXの襲撃が来るので、眠ったままの私を東京に連れて行くためにやちよちゃんが色々と取り計らったところ、叡一くんがイルカの本体の姿である宇宙船になって私を東京に届けることになった、ということらしい。

 幹侍郎ちゃんに言われた『イルカに乗った』というのがなんなのかまったくわからんと思っていたのだけど、それはこの話だったわけだ。

 しかしまあ、宇宙船が空を飛んでいたなんて聞くだけでも大事件だ。

 イルカの宇宙船が夜空を飛んだってのは、話を聞いただけでも結構なスペクタクルなわけで非常に心躍る話だと思う。

 まさか寝過ごしてイルカが空を飛ぶ姿を見逃したなんて、一生の不覚だ。

 私は渦中のど真ん中に居ながら……、渦中のど真ん中に居たどころかイルカの宇宙船には乗ってたし、イルカの宇宙船が運んでた主な乗客は私のはずで、渦が私を中心に起きてたと言っても過言ではないぐらいの状態なんだけど、眠ってたばっかりにそれをまるごと見逃してしまったわけだ。

 悔恨の極みである。

 もちろん世間的にも滅茶苦茶な大事件になったらしくて、ぞっちゃんも生中継したらしい。違ったかな? 生配信の隣で生録画しながら生配信に乱入するのを生録画に残したんだっけ?

 まぁとにかく、ぞっちゃんも大宮のどこかのビルの屋上から夜空を通り過ぎるイルカを映すような番組をやって、これまで以上に更に広い範囲、なんなら外国までぞっちゃんの姿付きの映像が出回ることになった。

 そしてその番組では叡一くんの名前は言わないのに、何故か私の名前を出して、イルカに乗りたいって言いそうだ、とかぞっちゃんに噂されてしまっていた。

 ご明察だよ! 私だって乗りたかった!

 なんなら実際に乗ったのに、まだ乗りたいと思うもんね!

 でも、眠っててなんにも憶えてないの!

 と、番組で言ったりしたら私でも狙ってウケを取れるんだろうけど、この辺のことは丸ごと秘密にしないといけない事なので、残念ながら誰にも言えない。渦中の真ん中に居たはずなのに蚊帳の外なわけだ。

 これが私のような凡人の悲しさである。

 イルカ事件の話はまだあって、聞くところによるとあの叡一くんの宇宙船サイズのものが無許可で空を飛ぶのは違法なのだそうだ。言われてみればそうだろうという気はする。それで、叡一くんはお尋ね者になったらしい。

 手近に居たので本人に聞いてみたところ、叡一くん本人はお尋ね者の件は別にあんまり気にしてないんだとか。元々、規則違反とかにはあんまり頓着しないタイプなんだそうな。

 ……前もそんなこと言ってたよな、そういえば。

 本人が気にしてなくても私なんかは気になるわけで、もう少し話を追うと、叡一くんは確かにお尋ね者になったけど、とはいえそこは抗生教の要請によってという形になったそうで、怒られることはあるにしても彼個人の犯罪という扱いにはならないのだそうだ。

 たしかにやちよちゃんのお願いだったわけだから、抗生教の要請であるという辺りは純粋に事実だ。

 これから先、噂のお尋ね者となった叡一くんはしばらくは東京に住むのだそうだ。

 ガイアさんと意思疎通ができるかもしれないやちよちゃんが居るから叡一くんの個人的な目的である高階者の追跡には都合も良いし、飛ぶための推進剤もタネ切れだからということでやむを得ない面もあり、東京に居続けになることについては叡一くん本人は納得らしい。

 叡一くん用の部屋、というのも私が居た部屋の近くに設けられたそうだ。

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