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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第三章 降下してくる危機が近づいてくる日々
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6月22日(水):TOX襲撃、二日前 :神指護治郎

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第三章 降下してくる危機が近づいてくる日々

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6月22日(水)

TOX襲撃、二日前

    神指護治郎

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 口論の結果押し切られて、結局、佐々也と天宮がうちに住むことになった。

 僕一人で住むには広すぎる家だから場所には困らない。とはいっても、僕と佐々也でも年頃の男女ではあるので、住む場所を分けた。一階には僕、二階には佐々也が住むことになった。天宮も人格は少女らしいので、佐々也と同じく二階に住んでもらう。

 食事のための厨房と食堂は一階にしか無いので、そこに繋がる奥の階段と家に入って二階に上がる玄関ホールにはもちろん入っても良いことにしている。

 佐々也が自分で料理をして食べるのかどうかは疑問だけど、さすがに厨房の冷蔵庫ぐらいは使う気がする。

 本人からの異議もなかったので、ひとまず天宮の食事は気にしないでいいだろう。というか天宮と食事の話をするとなると、そもそも食事とは何かという定義からになるのだろうという気はしている。実際に聞いてみれば、面白い話かもしれないとは思うが。

 とにかく最優先は幹侍郎(みきざぶろう)のことだ。

 不便にさせてしまっているけど、幹侍郎はまだ小さい子供だからなんとかしてあげたい。

 幹侍郎のことが世の中に広く知れ渡ってしまうことは困る。広く知られてしまえば、きっとそのまま生きてはいけないだろうと思う。

 危険だと言われたり、実験台になったり……。

 一番良い待遇でも東京に捨てられることになるだろう。

 そんなことになってしまったら、子供の幹侍郎では生きていくことはできないだろう。

 ただ、今のままでも幹侍郎のために良くはない。

 八方塞がりだ。

 どうすればいいのか……。


 そこに見えた光明が、人間ではないのに人間と見分けのつかない体を持っている天宮だ。

 天宮が幹侍郎の助けになるのかどうかはまだ不明だが、もし直接の助けにならなくても、少なくとも状況が動きやすくはなった。今の八方塞がりから事態は動くことになるだろう。

 事態が動いても良くなるとは限らない。

 しくじれば幹侍郎は生かされないかもしれない……。

 幹侍郎はほんの子供なのに……。

 どうすればいいのか……。

 天宮を信用できるかどうか、助けを求めることができるのか、まずはしばらく様子を見るしか無いのだろう。本当ならすがりついてでも幹侍郎の力になってくれとお願いしたいし、天宮の本質が善良であると信じたい。

 とはいえ、数時間喋っただけの付き合いでその判断をしてしまうほど楽天的ではないし、イチかバチかの賭けを今しなくてはいけないほど状況も切羽詰まっていない。



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6月23日(木)

TOX襲撃、一日前

      篠田魁

   イルカの叡一

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「今日は学校に行くよ」

 朝ごはんを食べながら、向かいの席に座っている叡一(えいいち)君にそういって声をかけた。

 朝ごはんはご飯とお味噌汁とハムエッグ。

 叡一くんも同じ物を同じように食べている。

「うん。昨日そう言ってたね。リモプレをする携端が一台しかないからって」

「そうなんだ。だから、しばらくは毎日学校だ」

「なんだか悪いね。一台ならあるんだから、君は家に居てもいいのに」

「大丈夫。俺は学校に行くのは好きなんだよ。教室を独占できるし、下の子達と遊ぶのもけっこう好きだからさ」

「ありがとう。魁はいいヤツなんだね」

「普通だよ。こんなことで褒められたら照れるって」

 そう答えたら、目の前の少年、叡一くんはふふっと笑った。

 健康そうに日焼けしていて、身の軽そうな少年に見えるが、彼は実はイルカだ。

 イルカが地上に留学しに来るというのは普通に制度になっていて、ニュースなんかではときどき聞く話だ。

 叡一くんは段階を踏んで事前に受け入れ先を募る普通の留学とはちょっと違って、一昨日、転校生の天宮さんが来た日、なにかの事故があって急遽転入が決まったらしい。うちの両親はふたりとも役場で職員をしていて、同じ年頃の息子がいるからといって世話を頼まれて引き受けた形だという。

 転校生が来た直後にまた新しい転校生、それもイルカだなんて、みんな驚くと思う。

 俺も驚いた。


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