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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十八章 夏の夜空に飛ぶイルカ
441/489

8月4日(木) 15:00 対話シミュレ―タ:護治郎

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8月4日(木)

     15:00

  対話シミュレ―タ

       護治郎

━━━━━━━━━━


「来たね」

 と、携端のメッセージアプリの中から天宮が言う。

 音声だ。

 僕が来たのは広い幹侍郎の部屋の一角。

 動かない幹侍郎が横たわる場所からは少し離れた所。

 目前では天宮が椅子に座って微動だにもせず、佐々也がすぐ横で寝ている。

 天宮は体を動かすのも惜しいということで、携端のチャットアプリで僕にコミュ二ケーションを取って来ている。

「来たよ」

 僕も口に出して回答する。

「ここからは少し儀式めいたことをしてもらうよ。迂遠(うえん)に感じると思うけど、シミュレータで再現されていることと、現実の体験を切り離すために必要な手続きだと思ってほしい」

「ああ。なにをするのか分からないけど、これからやることが意味がわからなくても必要だというところは理解した」

「うん、じゃあ、手続きの説明をするね。まず、君の携端の接続先設定で、私のホスト『Haruka@KiraPa』を受け入れて」

「KiraPa?」

「私が生まれたゲームの略称。私としても普段はまったく使わないから、設定が最初のままなんだ。名前とこれが、私の中の最も古い部分かもしれないね」

「わかった。つまり今回の件とはあまり関係ないところなわけだな。それで、接続先設定ってことは、出先でその場限りの無線設定するみたいなこと?」

「そう、それ。とはいえ私のホストは私にしか繋がってないから、無線設定みたいに回線接続先になるわけじゃないけどね。私と直接話せるようになるだけ」

「まぁそうだよね。でもそれならスピーカーでも良くない?」

「スピーカーは大きめの電力消費するから、無線の方が私にとって楽なんだ。うん、直接通信できるようになったね。次は護治郎くんがこの部屋に持ち込んだ通信機材の電源を切って」

「そんな事したら、通信できなくなるよ!?」

「だから、それをして欲しいの。それをしても私と連絡を取り続けられるようにして欲しいから、私のホストに接続してもらったわけ」

「そういう事なら……」

 何故なのかと言うのがわからないながらも、必要なことだと言っているし、説明する内容に一応の筋が通っているので言われた通りにする。筋が繋がった先がどこにあるのかが僕には分からないけど、最初に言っていた『必要』はこの先に繋がっているだろうという納得をしやすい。

 無線通信の機材はこの場所から少し離れた、幹侍郎のためのゲーム機なんかが色々と置いてある一角に置いてある。

 近づくと無線機材のそばにはいつだかに天宮が置いて行った腕がまだ置いてあり、苦笑いが口の端に浮かんでしまう。天宮にはだいぶ世話になっている。

 通信機材を確認してみると電源スイッチのようなものがない。やむを得ず有線通信の接続ケーブルを抜いた。これならば外部との通信ができなくなるので、要求を満たしているはずだ。

「それだとホストが消えないから、念の為に電源も切って」

 しかし天宮から注文が付いた。

「電源のスイッチが付いてないんだよ」

「電源のケーブルを抜いて」

「ああ、それで行けるのか。うん。抜いた」

 地下にはコンセントがないのでゲーム機と共用にして燃料電池アダプターから電源を取っていたのだけど、要はそれとの接続を切ればよい。

「切ったよー!」

 天宮の本体とは少し距離があいたので、そこまで聞こえるように大きな声で伝える。

「護治郎くんの携端のマイクで音を拾ってるから、大声を出さなくても伝わるよ」

「……確かに、言われてみればそうか」

「そしたら今度はまた接続先設定を見て」

「うん。……天宮のホストの他に『HostName』って名前のホストがあるな。デフォルト名だろうけど、どの機材だろ?」

「それがエミュレータのシミュレータ。えーと、メッセンジャーのアプリを終了して?」

「は? そうしたら天宮の声が……。まあいいか。はい、閉じたよ。でも、聞こえないか……」

「ううん。聞こえてるよ。今はアプリとは別経路で割り込んでる。出会った初日にもやったやつだけど、憶えてない?」

「……憶えてる。すごく怖かったやつだ……。やっぱり無法なのは最初から変わってないわけか……」

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