8月3日(水) 14:00 折瀬・大回り:やちよ
諸々が千々に降下してくる夏々の日々
第十七章 無能者にも役割はある。
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8月3日(水)
14:00
折瀬・大回り
やちよ
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今日もカイと会える。
午前中のうちにメッセで約束をした。
午後二時に合わせて、昨日と同じ公園に向かう。
護治郎の家を出て、昨日と同じ黒い道。
今日は服も変えてもらった。
出かけようと思ったところで白虎……じゃなかった、窓が服を持って駆け込んできて着替えさせてくれた。青っぽいところに模様がいっぱいついたスカートっぽい半ズボンと、丈が短くてズボンにたくし込めない袖はあるのに肩が無い濃いオレンジの上着。
護治郎が窓に頼んでくれて、窓が選んで持ってきてくれた服だ。
この服なら汚してもいいと言われたので心強い。
一人だと着方がわからないところだったけど、着るところまで手伝ってもらえた。良いやつだ。
それはそえとして、窓はまずい。
あれは強い。
白虎なんて呼び方じゃ生温いぐらいだ。
猛獣だ。サーベルタイガーとか呼ぶべきかもしれない。
とりあえず本人から注意されたのに従って、絶対に白虎とは呼ばないようにしよう。逆らうべきじゃない。
私の能力である程度は考えが読めるところもあるけど、窓とは絶対に対決できない。
それでももし仮に窓を相手に戦かわなければいけないとしたら、騙し討ちで初撃での一発死にを狙う以外の勝ち方が存在しない。でなければ相手が強靭すぎて、瀕死まで追い込んでいようとも必ず負けるだろう。
とはいえ顔見知りなんだから、さすがにそこまではして勝ちたくはない。
それに比べたら護治郎の方は刃物でも出せば私一人でなんとかなるはずだ。
だから佐々也ちゃんを強引に東京へ連れ帰るとしたら夜。
窓が帰った後の時間でないといけない。
TOXは明後日の昼頃だから、決行は今日か明日か。
早い方が安心だけど、今日の夜に帰ってしまうと明日はカイに会えなくなっちゃう。だから決行は明日の夜にしようと思う。
移動は……、叡一に聞いてみよう。
カイは護治郎の友達だけど、叡一はそれほどでもないみたいだから、利益があれば協力してくれると思う。カイと遊んだ後、今日も願いして叡一に会わせてもらおう。
「あいてっ」
窓に借りた可愛いサンダルは踵が少し高くなっていて歩きにくい。心がけてゆっくり歩くしかないのかもしれない。
第十七章 了
次回更新は、2月1日の予定です。