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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十七章 無能者にも役割はある。
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……8月3日(水) 8:00 リビング自室:護治郎

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十七章 無能者にも役割はある。


――――――――――― ――――――――――― ―――――――――――

 朝ご飯を調達するためにやちよちゃんと一緒にコンビニに行くことにした。

 宗教団体のえらい人というのに対してどのような接し方をするのが適切なのかわからない。

 まぁ、普通に接しておくしかないのだろう。

 とりあえず当面の宿として、佐々也の部屋に居てもらうのでいいかと聞いたら構わないという。着替えがあるかを聞いたら、長居するつもりはないとのこと。

 体格はそう違いも無いし困ったら佐々也の服を着てもらえばいいだろう。

 予定としてはいつまで居るのか聞いたら、明後日だとか。

 TOXの前に帰らないといけないらしい。

 東京の教団に立場があるのだからそんなものなんだろう。

 確かに明後日に帰るとなると、それまで佐々也は寝続けになるし、会わずに帰らないといけないことになる。困るというのも納得できた。

 普通に興味が出たので帰りの交通手段を聞こうと思ったら、橋に差し掛かって、それをきっかけにやちよちゃんが魁の話をし始めた。

 また魁は相変わらずモテ散らかしている。

 顔も良い、性格も良い、勉強もできる、スポーツもできる、話しやすいと、モテる要素しかないんだけど、巫女さんてのがこんな感じでいいんだろうか。

 まぁでも、年齢を考えるとこんな感じなのが正常なのかもしれない。

 思い返すとこのタイプの傾向としては佐々也は異常側だったと思うけど、佐々也が普通側に入らないのは佐々也としては正常だ。

 それからはコンビニで買物。

 買い物の時にお菓子を欲しがっていたので買ってあげた。

 こういうところは年齢より幼い感じがして、子供のような可愛さがある。

 コンビニから後は家に帰って朝ご飯を食べ終わるまで、ずっと魁と昨日はなにを話したかとか、魁の好きなものを聞かれたりとかずっとそういう感じの話をされ続けていた。

「魁とは今日も会う約束をしてるんだ。ねえ、もう連絡してみてもいいかな?」

「別にいいと思うけど、メッセの使い方はわかる? 昨日佐々也に教わった? なら平気だ。じゃあ次に充電が平気かどうかちょっと見せて? まだ平気だけどそろそろだね。今日の分は予備バッテリーを貸してあげるからそれを使えばいいよ」

 やちよちゃんに充電方法なんかを教えて居るうちに一〇時になった。

 「一〇時になったからもう連絡してもいいよね?」と真面目な顔で聞かれたけど、お店じゃないんだから起きてそうな時間ならいつでも大丈夫なはずだと伝える。やちよちゃんは嬉々として魁に通話をしはじめた。

 さっきまでに聞かされた話によると、今日も一緒に遊ぶらしい。

 遊ぶということまでは決めていたけど、何時から何処でという約束はまだしていないので、それを決めるらしい。

 楽しそうでけっこうな事だ。

 巫女さんってこんな感じで良いんだっけ? という疑問がまた思い浮かぶけど、そういえば僕は巫女さんのことなんてなにも知らない。仕事中にちゃんとしてたら普段のことはうるさく言われない優良な職場なのかもしれないし。

 お昼ご飯はどうするのか聞いたら様子を見に地下に行こう。

 通話が終わったらしい。

「護治郎! 下の町っていうところに連れて行ってもらえることになったんだけど、昨日とおんなじ服しかない!」

「佐々也の服を借りたらいいと思うよ。佐々也が起きたら僕からも言っておく」

 わかった、といって駆け出そうとするやちよちゃんを捕まえて、お昼の予定を聞く。別にご飯は無くても良いけど、魁との約束は午後二時だと答えがあった。じゃあ午後一時にご飯にするから厨房に集合と伝える。

 わかった! と言って、やちよちゃんは駆けて行く。

 賑やかな妹が居たらこんな感じなのかもしれない、と思う。

 魁もきっと、やちよちゃんと会うのは楽しいだろう。


   *   *   *


 トーストぐらいの事しかするつもりはないけどそろそろ約束したお昼ご飯かという時間に地下から上がってきた、ちょうどその頃に窓ちゃんから、今日は研修が早く終わったという連絡があった。

 僕は世間話のつもりで、やちよちゃんが魁と迂川郷に遊びに行くらしいよ、という話を伝えた。

「服が無いって言うから佐々也のを着ていいよって言ったら、大急ぎで部屋に行ってたんだ。可愛いよね。妹が居たらあんな感じなのかも」

「……やちよちゃん、もう出掛けちゃった?」

「ううん。二時待ち合わせだって」

「じゃあやちよちゃんに、着替えを持って行くから待ってるように伝えてもらえる?」

「いいけど、間に合う?」

 防衛隊の基地署から家まで、なんだかんだ一時間ぐらい掛かるはずだ。いつもならそうだ。二人乗りとはいえ、まあまあのスピードだったと思うし。

「……大丈夫。じゃあ、急ぐから」

 そう言うと窓ちゃんはすぐに通話を切った。

 『窓ちゃんに服を着せられる』という、ちょっと要点のよく解らない話を何度か佐々也から聞かされた事がある。

 やちよちゃんにもそれをするつもり、ということなんだろう。

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