表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第十六章 生きているのか死んでるか。そもそもそういう問題だ。
401/489

8月2日(火) 17:30 やちよ:折瀬・大回り

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第十六章 生きているのか死んでるか。そもそもそういう問題だ。

━━━━━━━━━━

8月2日(火)

     17:30

       やちよ

    折瀬・大回り

━━━━━━━━━━


 佐々也ちゃんたちは巨大ロボットの子供が動かないということでさも深刻そうにしていたけど、わたしとしてはあんまり興味が持てない。あれだけの大きさのものが動くならそれは確かにすごいんだろうけど、動かないのであればいちおう見たからもう満足だ。

 かなり重い空気だったからあの場に居るのもなんだか疲れるし、誰にも声はかけにくかったのでそのまま抜け出してきた。広い地下空間はなかなか見ものだったけど、似たような場所は東京にもあるし。

 あの部屋には空気穴なんかは無いようだった。酸欠にならないかという気もしたけど、たぶんその辺は上手くやっているのだろう。どういう仕組みかはわからないけど、室内に空気の流れはあった。


 連れてこられた家が大きくて感心したけど、住人に黙って家の中を見て回るのは流石に無作法だということは分かるのでさっさと外に出る。外ならば、まぁ怒られるということもそんなにないだろう。

 この近辺の見上げると山がある風景は、どことなく東京の景色に似ていて安心する。

 でも、坂道が急で、平らな場所がなくて、山の反対側にもすぐ近くに山があるのはやちよの目には珍しい。

 この近くには小さな川があることが分かる。

 分かるというより、地球のことなので、そこに川があることは元から知っていたと言ってもいいぐらいだ。

 知っては居ることだけど、山肌を絶え間なく滑り落ち続ける小川っていうのはこの目で見たことがないから、実際に行って見てみたいと思う。神指邸の近くにあった階段を降りて、小さな下り坂を通ると目の前に一軒家のあるアスファルトの道に出る。

 さっきまでユカコの車で走っていた道と同じ感じの道路。

 このアスファルトで舗装された道路を使うと、上り下りなしに川沿いに到着するようだ。

 アスファルト舗装の道にはなんとなく緊張させられる。

 東京にはこの道はないけど、大宮にはこの黒い、車が走る道がたくさんある。

 大宮みたいにいつでも車が走ってるなら避けやすいけど、ここみたいに車が少ないと油断してしまって急に車に出会った時に避けられるものか不安になる。結局、常に気をつけていないといけない。端の方を歩いたら避けやすいのかなと思う。

 一番端っこに白い線が書いてあって、なにかの区切りになっているようだ。

 この白い線はちょうど足が乗るぐらいの幅があるし、ずっと続いている。しゃがんで触ってみると、アスファルトより滑らかだけどツルツルと言うよりザラザラだ。しゃがんだまま頭を上げて白い線をたどると、ずっとずっと続いていることが分かる。道路の真ん中にはもう少し太い白い線がある。同じものかと思ったので、近寄っていって触ると、やっぱり同じ感触だった。

 ただ、道路の真ん中の先は途切れ途切れで、その上をなぞって歩くとすぐに端っこにたどり着いてしまった。道路の端の線はずっと繋がっているから、そっちの方が魅力的に見える。この線を辿って、どこまで途切れずに行けるか試してみよう。


 まっすぐまっすぐ続いている線は切れずにずっと道に沿って続いていた。

 周りから(せみ)の声が聞こえてくる。

 まだ日がある。でも、そろそろ夕方と呼んで良い時間だ。

 少し進むと道路の反対側には家が増えてきて、黒い舗装の狭い道が家の隙間に割って入るように続き、白い線も狭い道路に合わせて曲がって行っていた。山側のこっち岸を歩いていたおかげで線が途切れなくて良かった。

 プップッというラッパの小さな音を二度立てて、黄色の車が私を追い抜いて行った。

 ちょっとゆっくり走っていたらしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ